離職率は、人事も応募者も、誰もが気になる指標
離職率については「シチゴサン現象」と呼ばれる、就職して3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職するデータがあり、多くの人が就職して3年以内に辞めています。
中小企業庁の調査によると中途採用であっても、3割の人材が離職している結果もあるほど多くの人が3年程度ととても短い期間で退職をしている事実があります。
就活生(学生)は、入社後3年の離職率が3割を超えることがブラック企業になる目安としてとらえている調査結果もあります。
出典元『株式会社DISCO』就活生・採用担当者に聞いた「就活ブラック企業」
離職率は、人事担当者・求職者の双方の誰もが気になる指標となっており、転職を決めるかどうかの意思決定の上でも重要な点となります。
一般的な考え方としては、「離職率が高い=すぐに辞める人が多く、会社の制度に不備があるなどの問題がある企業=悪」「離職率が低い=長く活躍できる、会社の制度に不備がなく問題が少ない企業=善」ととらえがちです。
しかし、そもそも離職率は低ければ低い方が良いのでしょうか?離職率が低いことによって引き起こされる問題や、離職率が高いことによって起こる良い影響はないのでしょうか?
この記事では一般的な認識である、離職率が高い場合のデメリットだけでなく、離職率が高いことで得られるメリット(離職率が低いことで起こるデメリット)があるのかを分析してみましょう。
そして、そもそもの離職率が高いこと・低いことによるメリット・デメリットを一旦整理してみましょう。
離職率が高いことで起こるメリットとデメリットとは
離職率が高いことで引き起こるメリットやデメリットについてを解説します。まずは一般的な、離職率が高いことによるデメリットについて確認しましょう。
離職率が高い場合のデメリット
- 就業環境において残業が多いなどで働きづらい可能性
- 給与などで年収が低いや将来的に上がりづらいケースの可能性
- 職場の雰囲気が悪く、働きづらいケースの可能性
求職者目線にはなりますが、貴社の離職率が高い場合、このように何かしらの問題があるように思われがちです。一般的な内容であるため、思い浮かべやすいと思います。
具体的には、就業環境面、年収や給与などの条件面、人間関係などのコミュニケーション面に問題がある可能性があります。実際に離職率が高い場合は、何かしらの理由があるため、人事担当者は求職者に対して、その理由をしっかりと説明する必要があるでしょう。
離職率が高い場合のメリット
- 実力主義な会社が多く、若手でも活躍すれば評価されやすい
- 「離職率が高い=他の会社へ転職できるスキルがある社員が多い」と考える事ができ、スキルなどを得やすい
- 業界や会社が成長しているケースが多い=ヘッドハンティングや転職の打診を受けやすい
離職率が高い場合のメリットについても整理してみましょう。
離職率が高い場合は、職場内で入社する人や退職する人が多いと言うことになります。そのため、会社にしがみついている人が相対的に少ないことから、若手でも昇進しやすいといったメリットが考えられます。
特に実力のある若手社員の前で、「ぶらさがり社員」すなわち最低限の仕事は行うが最大限の仕事はしないような人材がいると、モチベーションや士気の低下を招きます。その人材が若手社員よりも給与が高い、すなわち年功序列での評価などの場合はなおさらです。
離職率が高いことは「他の会社へ転職ができている」事の裏返しでもあります。そのため、離職率が高い会社の場合には、「スキルなどを得やすい」というケースも考えられます。業界や会社が成長しているため、ヘッドハンティングや転職の打診を受けやすい可能性もあるでしょう。
今は大手企業となっている企業であっても、ベンチャー企業だった時代には、離職率が高かった事もあります。ベンチャー企業時代でなく、大手企業になってから入社をすると採用の難易度が高く、なかなか入社できないだけでなく、上層部が厚いため、出世もしにくいと考えられます。一方でベンチャー企業の時点で入社をすれば、その後、会社が大きくなることで出世もしやすくなり、年収なども上がりやすいと言えます。
このような観点から、離職率が高いことがそのまま悪い訳ではなく、実はメリットもあると言えるのです。
離職率が低いことで起こるメリットとデメリットとは
離職率が低い場合に考えられるメリット・デメリットについて紹介します。まずは一般的な、離職率が低い場合のメリットについて確認しましょう。
離職率が低い場合のメリット
- 辞める人が少ないため、長く働くことができる
- 就業環境面や給与面などが良好で整っている可能性が高い
- 社風や人間関係も問題のない可能性が高い
求職者にとって、働きやすい環境が整備されていると考えられます。
離職率が低い場合のデメリット
- 辞める人が少ないことから、昇進時のポジションに空きが少なく、なかなか上に上がりづらい
- 転職志向が低い社員が周囲に多く、転職をする能力が身につきづらい
- 社内・業務が硬直化するため、他の企業で経験を活かしづらい
昇進しづらい、外部で活躍する人材になりにくい、新しい知識を得ることにどん欲な社員が少ないなど、自己実現や自己成長をする人材にとってのデメリットが多くあります。
自身の市場価値を上げ、多くの知識を得て会社に貢献しよう!と思っても、昇進時のポジションに空きがないことから、実際の行動には移さないなどの影響も考えられます。
周囲の社員も、自身の市場価値を上げようと考えにくく、苦労してまで多くの知識を得る必要がない、そもそも自社の業務に特化して転職に使える一般的なスキルではない、などのデメリットがあります。
必ずしも離職率が低い方が良いとは限らない
一般的には離職率は低いほうが良いと言われており、実際に離職率が低いことは社員が辞めないことですので、教育や採用コストなど、多くの面においてメリットがあります。
しかし、離職率が低いことが全てにおいて良いとは限らず、中にはデメリットもあります。そういったデメリットにも目を向け、離職率が高い場合のメリットにも触れることによって、離職率が高くても応募者の方にしっかりと納得感を持って根拠を伝えるようにしましょう。
離職率そのものは業務内容や市場の動向により左右されるため、自社の業務内容や業績、展望を考慮して基準を決めるべきです。そうすれば、仮に離職率が高くとも、根拠を説明することで、自社ブランディングの一つとしてうまく活用できる可能性もあります。