RJP理論とは?ネガティブな情報も伝えることで入社後のミスマッチを防ごう!

最も多い離職理由は『労働条件・休日・休暇の条件』によるミスマッチ?

超売り手市場となっている日本の採用市場。超売り手市場で採用費用や採用難易度は増加傾向にあります。就職率や有効求人倍率が高まっていく中、大卒者の3年未満の離職率は、30%前後の横ばいの状況が続いています。

新規学卒者就職率と3年以内離職率
出典元『厚生労働省』新規学卒者就職率と3年以内離職率

労働市場の中で、優秀だと思われる人材を採用したのに長らく早期離職が防げていないことを示唆しています。新規人材の確保が難しくなる中で、既存人材の流出防止の重要性もより増しています。

労働政策研究・研修機構(JILPT)の資料によると、日本の3年以内の離職理由で最も多いのは、「労働条件・休日・休暇の条件が良くなかった」というもの。「人間関係が良くなかった」という理由による退職だけでなく、労働条件に絡むものも上位に上がっています。
男女計初職離職理由
出典元『独立行政法人 労働政策研究研修機構』第6章 早期離職とその後の就業状況

労働条件は、選考段階や入社の意思確認の時点で、予め正しく伝えておけば、認識の相違は生まれにくいはずです。原因として考えられるのは、採用側に自社のネガティブな部分を隠さないと人が集められない=母集団形成が出来ない、という状況や前提があるのではないでしょうか。

一方、アメリカではネガティブなことは隠さずに説明する採用手法が、40年以上前から研究・実証されています。本記事では、アメリカ発の採用手法である「RJP理論」についてご説明します。

日本でも注目されつつあるRJP採用〜アメリカ発のRJP理論に学ぶ〜

RJP理論のRJPとは「Realistic Job Preview」の略で、直訳すると「現実的な仕事情報の事前開示」という意味です。

RJP理論は、1970年代にアメリカの産業心理学者ジョン・ワナウス氏によって提唱された理論です。RJP理論では「あらゆる情報を求職者に歪めることなく伝えていく採用のあり方」が説かれています。

当時のアメリカでは、伝統的な採用手法であった「求職者が良いイメージを抱く情報を中心に発信することで、多くの求職者を集め、優秀な人を選ぶ手法」のアンチテーゼとして提唱されました。会社の良いところだけをアピールするのではなく、ネガティブな部分も含めて伝えることが必要だということです。

RJPで得られる効果とは

RJP理論を採用手法に導入することで得られる、代表的な効果を4つご紹介します。

  1. ワクチン効果
  2. スクリーニング効果
  3. コミットメント効果
  4. 役割明確化効果

1.ワクチン効果

ワクチン効果とは、予防接種のように事前に免疫を作っておく効果です。

入社前に会社のネガティブなことを含めて情報を開示しておくことが、入社後の現実とのギャップを最小限に止める効果があります。

例えば「繁忙期の残業時間は45時間/月程度になる、繁忙期は毎年1月~3月である」というネガティブな情報を入社前に伝えておけば、内定者は残業に対する覚悟を持って入社します。一方で残業の情報を伝えておかなければ「こんなに残業があるとは思わなかった…」とネガティブな気持ちになってしまう可能性があります。

マイコミの調査では、入社1ヶ月後の新入社員の6割が、入社前の理想と現実にギャップを感じているとの報告もあります。

リアリティーショックを感じた割合
出展元『マイコミ社会人レポート』 リアリティ・ショックに関するアンケート調査結果を発表

2.スクリーニング効果

スクリーニング効果とは、十分な情報を得ることで自分に適している企業かどうかを判断し、自己選択力が高まる効果のことを言います。

営業職の採用を行う場合、小規模な会社であれば「営業活動」だけでなく会社を維持するための「雑務」も行う必要があるかもしれません。営業活動に専念したい人材からするとネガティブな情報ですが、会社運営や経営に興味がある、社内コミュニティを大事にしたい人材からするとポジティブな情報になります。これらの情報を包み隠さず公開することで、会社運営のための「雑務」に抵抗のない人材を集められる可能性が高まります。

求める人物像と近い人材の母集団を形成したい場合には、スクリーニング効果の影響は大きくなります。求める人物像と遠い人材のエントリーが多ければ、採用担当者のエントリーシートを読み込む時間や採用選考にかける時間も膨大になります。求める人物像と近い人材からのエントリーに絞り込むことで、採用活動にかける時間を短縮できる可能性もあります。

スクリーニング効果で母集団が減ることで、優秀な人材も減ってしまうのではないかとの懸念もあると思います。神戸大学大学院准教授である服部 泰宏氏は著書「採用学」にて大規模候補者群仮説は正しくないと説明しています。とにかく多くの応募者を集めるのではなく、求職者にもスクリーニングしてもらうことで、より高い精度のマッチングが期待できると説明しています。

参考URL『Google ブックス』採用学 – 服部泰宏

3.コミットメント効果

コミットメント効果とは、ネガティブな情報も含めて開示することで、企業の誠実さが伝わり、企業への愛着心や帰属意識を高める効果のことを言います。

ネガティブな情報を知った上で入社を決めることが、仕事をやりきる「一貫性の法則」にも影響を与えます。誰かから言われたからやるのではなく、ネガティブな面も含めて自分で決めた意思を貫き通す心理です。

4.役割明確化効果

役割明確化効果とは、企業が人材に任せたい仕事を明確に伝えることで、入社後の働くイメージができ、仕事への意欲向上に繋がる効果を言います。

入社前の理想と入社後の現実がもたらす「リアリティーショック」にも「仕事ショック」と言われるものがあります。仕事ショックを防ぐ意味でも、役割期待効果は大きなメリットを持っています。

RJP理論が企業にもたらす効果とは?

日本ではRJP採用手法が知られるようになって間もないため、明確な効果や実例はまだ少数です。入社後3年以内の離職率が30-40%と言われている中で、離職率を10%前後に抑えることに成功したリクルートワークス研究所の実例や、発祥国のアメリカでは「入社後の定着率の高さ」といった効果が確認されています。

企業はRJP採用を取り入れることで「早期退職の回避と定着率の向上」と、ネガティブな情報も開示する企業として「求職者からの高い信頼が得られる」などの効果が期待できます。

日本企業でRJP理論を活用する場合、早期離職理由について適切な情報を開示することが大切です。導入部で触れた離職理由1位である「労働条件・休日・休暇の条件が良くなかった」であれば、始業時刻や終業時刻などは当然のことながら、残業時間や賞与額、年間休日日数なども昨年度実績などを用いることで、正確な情報を公開できます。

3位の「仕事が自分にあわない」は、入社後にどのような業務を担当してもらうのかを正確に開示することが大切です。業務内容を「法人営業」とするのではなく、どのような規模や業態の法人にどんなサービスを売るのか、何人で営業するのか、営業活動時に提案資料や見積書など何を作成するのかなどを具体的に落とし込んでいくことが大切です。採用担当者が受け入れ部署の業務を全て把握するのは難しいため、現場担当者と連携して情報を落とし込んでいくことが大切です。採用選考時には、各業務内容に求められるスキルや能力項目は何か、どの程度のレベルが必要なのか、スキルがなくても入社後の教育研修で育成できる部分は何か(妥協点を探す)ところまで落とし込むことが大切です。

2位「人間関係が良くなかった」は、自社従業員はどのような思いを持って働いているのか、自社従業員とコミュニケーションが取りやすい人材はどのような性格や価値観を持っているのかを把握することが大切です。弊社サービス「ミツカリ」では、従業員の方に適性検査を受験して頂くことで、どのような思いを持った人材が働いている組織なのかを分析します。組織特徴が可視化されることで、求人票などに自社の組織特徴を明文化して記載することも可能なります。

また求職者の適性検査結果と組織特徴を人工知能が比較することで、自社組織との相性が1%~100%で表示されるだけでなく、相性の悪い部分については採用面接時に聞くべき質問を提示します。離職率を半減した企業も多くありますため、「人間関係が良くなかった」理由による早期離職を改善したい場合はお気軽にサービス資料をお問い合わせください。

会社や部署に合う人材を診断、採用前にミスマッチが見えるミツカリ

RJP理論活用の注意点について

現実とのギャップを最小限に抑えるためには、ポジティブ・ネガティブなことを両面をバランス良く説明することが重要です。ポジティブな情報だけでも不十分ですし、ネガティブな情報だけでも不十分です。「自社をよく見せよう」とするのではなく、「ありのままの自社を伝えよう」という心持ちが大切です。

採用担当者といえど、現場の業務内容や人間関係を全て正確に把握することはできません。採用担当者が思い描いている「自社のイメージや認識」を伝えるのではなく、受け入れ部署の現場担当者による「自社の実態」を詳細にヒアリングするなど、連携を強化しながら正しい情報を求職者に伝えることが大切です。

RJP理論の活用で採用力を高める!

ポジティブな情報だけでなくネガティブな情報も伝えることで、より効果的な採用ができるようになるのがRJP理論です。日本での歴史はまだ長くないですが、アメリカでは40年以上も研究・実証されてきた理論で広く浸透しています。

RJP理論は単に母集団を大きくする方法ではないですが、厳選された求職者が集まるため、優秀な人材からの応募や定着率の高さが期待できます。ポジティブな情報だけを伝えて母集団を大きくすれば、その分優秀な人材も集まる仮説「大規模候補者群仮説」は採用学の服部泰宏准教授は正しくないと言われています。

全ての情報を開示することは情報量の多さから難しい面もあり、取捨選択して伝える工夫が必要になります。取捨選択する際には、自社の求める人物像である採用要件定義から、求める人物がどのような情報に興味を持つのか・必要としているのかを整理していくことで、適切な情報提供ができるようになります。

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