定着率の向上が生むメリットは大きい
大卒の入社3年以内の離職率は長らく30%前半で推移しています。バブルが崩壊した平成3年~平成5年、リーマンショックが起きた直後である平成21年が30%以下ですが、経済危機がない年だと30%を超えています。
厚生労働省の若年層雇用実態調査によると、若年労働者の定着のために実施している対策がある企業が70.5%と、多くの企業が人材定着のための取り組みを実施しています。
定着率を向上させることで得られるメリットとしては、以下のものが挙げられます。
- 採用・教育コストの削減
- 労働生産性の向上
- 社員のモラル・モチベーションの向上
- 顧客満足度の向上
- 風評被害の防止
今回は、定着率を向上させるために、どのような施策が必要なのかについて説明します。
既存社員と新規人材を分けて考えよう!
定着率の向上といっても、既存の社員の定着率向上のためにやるべきことと新規人材の定着率向上のための施策は違います。
ミスマッチの解消
既存人材の定着率向上において一番重要なことはミスマッチの解消です。
社員の定着率向上に取り組んでいる多くの企業人事や経営者は基本給やボーナスなどの賃金の上昇や雇用の安定などの要素を重視しているのに対して、労働者側の退職理由においては人間関係や業務内容への不満が大きな理由となっています。
多くの労働者は波風を立たせないように本当の退職理由を隠し、「身内の都合」などといったように理由を矮小化して伝えるため、企業側は改善すべき箇所がわからずに効果的な対応を取るのが難しい現状があります。
既存人材が求めているのは待遇の向上より働きやすい環境の整備であり、それを解決するための対応を考えるのが重要です。
福利厚生など、労働環境の改善
既存人材の定着率向上にあたって重要なのが「そもそも離職意向を出させない」という視点です。週休二日や長期休暇などの休暇制度の徹底や育児休暇などの福利厚生の充実は比較的取り組みやすい上、効果的な対策です。
社員のモチベーションを上げることは、社員一人ひとりにとっての仕事の重要性を高めるだけでなく、モチベーションの高い社員が多い環境を作り出すことで、職場の人間環境にもいい影響を与えます。仕事に対するモチベーションの向上においては、社員の自己重要感を上げることが重要になります。
具体的には、能力と個性に見合った仕事の割り当てとその仕事に対する適切な評価が中心になります。離職意向が出てしまった社員に対する対応は非常に難しいことが多いです。というのも、離職意向を正式に伝えた時点で気持ちが固まっている場合がほとんどであり、短期的な職場環境や人間関係の改善は困難だからです。
仕事に対する不満を聞き出し、適切に希望の仕事に近いものを割り振ることで意向を取り下げる場合もあります。
企業とのマッチング相性を考える
新規人材の定着率向上のためには企業とのマッチングが重要です。言い換えれば、職場の雰囲気などの企業風土と人材の性格や個性、好みなどのその人らしさとの相性が合うのかが定着を左右することが知られています。一年目の離職率が一般的に高くなりがちなことからも、新規人材は自分が疎外感や「そぐわない」と感じた時に離職を考えるようになります。
リクルートキャリアの研究では組織風土と性格特性が合っていない人材の離職意向が高まりやすい傾向が指摘されており、定着しやすい人材を求めるのであれば、自社の組織風土に合った人材を採用すべきです。
参考URL:若年層の離職意向に影響を与える要因の探索的研究
マッチング相性を高めるためには、求める人物像などの採用要件の定義を明確にし発信しましょう。マッチングや相性の判断は企業が一方的に行うものではなく、双方向的なものです。できるだけ具体的かつ明確な人物像を発信することで求職者自身の自己判断の正確性も増すことになります。
採用する側としても、採用要件を明確にし、それを総合的に判断するための適切なプロセスを用意することで、マッチングの精度向上が期待できます。
ミツカリでは、企業と新規人材のマッチングを判定するサービスを提供しています。社員の方に適性検査を受検してもらうことで、企業風土や既存人材の性格や価値観を分析し、新規人材との相性を見極めることで、採用でのミスマッチを防ぐことができます。どの価値観がミスマッチしているのか、具体的な内容も確認できるため、求職者と企業双方の相互理解を支援するツールとしてもご活用頂けます。
まずは既存従業員のミスマッチの解消に努めましょう
既存人材の定着においては従業員が求めているものと人事や経営者が実施している施策のミスマッチを解消するのが重要になります。自社の従業員が何を求めているのか、要望を気軽に出せるような場を作ること、またその要望に対して適切かつ迅速に対応することで定着率の向上が見込めるでしょう。
定着しやすい新規人材の採用では、自社の組織風土や社風と合っている人材を採用することが重要で、そのための人材要件定義の明確化やその選考工程への反映が必要です。