組織と個人の相性を診断するためには
適性検査においては、採用される側・求職者の情報だけでなく、組織の情報を確認し、組織相性を確認することは非常に重要です。
若年層の就業サポート事業を展開している「UZUZ」の第二新卒・既卒の20代をターゲットとした調査でみると。重要な離職理由として「仕事が自分に合わなかった」が16.7%、労働時間が長かったが13.8%、「社風が合わなかった」が13.4%という順に多い回答となっています。
出典元『株式会社UZUZ』【調査リリース】第二新卒・既卒の20代に聞いた就職活動に関する調査/退職が多い職種は「営業」、業種は「IT」「建設」という結果に。
再就職する会社に求めるものとして「ライフワークバランス」と「良好な人間関係」が15.2%、休日の多さが13.2%と報告されています。
出典元『株式会社UZUZ』【調査リリース】第二新卒・既卒の20代に聞いた就職活動に関する調査/退職が多い職種は「営業」、業種は「IT」「建設」という結果に。
「仕事が自分に合わなかった」は、自社業務でどのようなスキルが求められるのかの分析や能力適性・職務適性検査などから判断が可能であることがいえます。「ライフワークバランス」は、就業時間や有給消化率などから、「給料」は、金額と人事評価制度などを説明することで納得してもらえるかがカギになってきます。
「社風が合わなかった」や「良好な人間関係」が何を指し示すかを判断するためには、適性検査で求職者個人の情報だけでなく、自社組織の情報も可視化し、合致度を図ることで判断ができます。今回は「組織適性検査」についてご説明します。
組織適性検査で変わる人材採用とは
採用選考を中心に使われる適性検査は数多く、能力検査やパーソナリティー検査、性格検査、学力検査、コンピテンシー診断、職種適性検査、ストレス耐性診断など、さまざまなものがあります。概ね、採用や評価をされる「個人」をはかるものですが、今回のテーマである「組織適性検査」はこれに対し、組織を対象としている適性検査であることが大きな特徴です。
部署やチームなど、組織の現状、詳細を分析するために最適なツールの一つとして、さまざまな業種・職種で活用されています。
組織適性検査を実施する目的とは
人材採用の現場は「売り手市場」で、その中で企業の多くは「長く活躍する人材を採用する」ことを大きな目的の一つにしています。それと同時に、働きやすい環境整備も随分進みましたが、入社後3年以内の離職率は新卒採用・中途採用ともに30%と依然として、「約3割」の壁を減らすことが難しい状況です。UZUZの調査でも、「上司や同僚との人間関係が円滑にできなかった」や「社風に馴染めなかった」などが、退職の大きな理由が挙げられています。
課題を解決するために、社員の価値観やパーソナリティーから社風や組織風土を分析し、求職者の価値観と比較した結果を文章や数値データとして可視化する「組織適性検査」が求められているのです。
一般的な活用としては、部署・役職別の傾向や優秀な社員を分析し、それをベースに、採用基準の策定や配置・配属、異動、育成に活用していきます。
「組織適性検査」を実施することで、以下のようなことを明確化することができます。
- チームの現状分析(成績の良い社員、ふるわない社員の違いなどの分析)
- 役職や部署毎の社員の傾向
- 新入社員の教育方針を策定するための傾向
組織適性検査の結果をどのように活用すべきか
組織適性検査が、採用や組織構築の場で活用される理由は多くありますが、何よりも、組織や企業によって求められる人材や活躍する人材層が異なり、そこを丁寧に分析する必要がある、という点が大きいポイントです。経営者やチームメンバーの性格やスキルはさまざまであり、こういった多彩な人材が相互に協力しなければ、利益などの成果を出すことは困難です。
組織に合致した人を判断する際に、多くの組織で活躍している人材に共通する点をはかる方法が一般的です。たとえば「チームメンバーと円滑にコミュニケーションできる」などの能力は、個人が有する性格・価値観など、もともとその人が持っている素質に由来するところが大きいものです。この時に「組織適性検査」を活用し、変化しにくい個人の性質・気質などを採用段階で見極めておきます。
部署内で複数のチームがある場合は、メンバー全員の個性を見つつ、意見が活発化するような相性の良いメンバーを選ぶことが何よりも求められます。組織診断などでチームごとの傾向を分析することが有効です。もちろん、チームの価値観や考えを統一させるという観点からみても、適性検査などのツールを用いたほうが正確で手間もかかりません。
なお、組織適性検査は、以下のような形式で行うのが一般的です。
- 活躍する人材の傾向や良好な人間関係の構築、社風に適した人材を人材要件定義に落とし込む(母集団形成)
- 活躍する人材の傾向から、最適な配属を実現する(配属やチームビルディングに活用)
- 部署や役職者に求められる傾向を分析する(人事評価制度)
組織適性検査を活用する上での注意点について
組織適性検査は、あくまで組織の現状を分析するのみのものなので、分析結果をどう活用するかなど、どう発展的な形式にアップデートしていくかなどは人事担当者に委ねられています。分析結果をさらに有効に活用するために、外部の専門コンサルティングサービス会社などを活用するというのも、一つの手です。
弊社が展開している『ミツカリ』は、個人向けの適性検査に組織適性検査を組み合わせ、人工知能によって個人対個人の相性や個人対組織、組織対組織の相性を判定し、社風や人間関係との相性を診断するサービスです。
『ミツカリ』は、専門的な社会心理学のメソッドを使用して構築しており、「業務上、重大なミスマッチを引き起こす可能性がある価値観」のみに対象を絞り、高度に分析しています。従来の性格適性検査などでは「仕事に関する価値観」は対象とされていないのが一般的です。適性検査をカルチャーフィットで応用するならば、性格だけではなくキャリアについての価値観も考慮する方が適当で、その意味でも、弊社の適性検査はカルチャーフィットの度合いを図るのに有用です。
【参考】
従来の性格適性検査の際に、多くの企業で用いられているのが『ビッグ・ファイブ理論』です。この理論によると、性格の違いを最も的確に正しく捉えることのできる軸は、次の5分類に分けられるとされています。
- 開放性 ー 知的好奇心などの程度
- 誠実性 ー 自己統制力やまじめさの程度
- 外向性 ー 社交性や活動性の程度
- 協調性 ー 利他性や協調性の程度
- 神経症傾向 ー ストレスに対する程度・耐性
「ビッグ・ファイブ」は普遍性の高さから、採用や職業適性検査などの多くの場面で活用されています。
たとえば「プライベード重視か仕事重視か」や「スピード感を重視するかゆっくり確実な結果を重視するか」など、仕事におけるさまざまなケースの個人の考え方は、「ビッグ・ファイブ」に基づいた心理尺度では測れない側面ですが、企業のコアバリューに選ばれやすい価値観です。こういったものは、組織適性検査と併せて判断していくことが求められます。
組織適性検査で、自社組織のことを理解しよう!
組織適性検査とは、部署やチームなど、会社内に複数存在する組織の現状を分析するための適性検査です。組織適性検査と言っても「学力(知能)」「性格や価値観」などの分析対象が異なるため、組織のどんなことを明らかにしたいのか、自社の抱える課題から明確にする必要があります。
早期離職の原因で、かつ求職者が注目する「社風」や「人間関係」などを見極めるためにも、自社組織の傾向を適正に分析することが、まずは有効な手段の一つと言えるでしょう。