性格と価値観の違いとは?適性検査を最大限活用するための知識について

「性格」「価値観」とは一体なにもの?

現在、多くの企業で適性検査が使用されています。中でも「パーソナリティ検査」「性格検査」などと呼ばれる検査は、「人柄」「性格」「価値観」などの抽象的な概念を測定することを前提として作られています。

適性検査を使うことで、自分に向いている職業を見極める材料にしたり、組織の風土に自分は向いているのかどうかの判断がしやすくなる、などのメリットがあります。

「あの上司とは価値観が合うので、仕事がスムーズに行くなぁ。」
「この会社には、似たような価値観を持つ人が多い。」

ビジネスのシーンで、「価値観」という言葉が、このように使用されている場面を見たことがある、もしくは感じたことはあるのではないでしょうか?

人柄や価値観などは、背格好や表情などとは違い、実際に目で見て測定することができない抽象的な概念です。ビジネス以外の場面でも、人生の様々な場面において、非常に広い意味合いで「人柄」や「価値観」という言葉が使われています。抽象的な概念でありながら、一般的にも広く使われるため、実は定義が曖昧になりがちだと感じています。

本記事では、価値観を科学的に研究している心理学などの分野から、学術的な理論や研究結果を引用しながら、分かりやすく、価値観の定義のより深い理解を目指します。

この記事を読み終わった後に、ぼんやりとした定義がよりクリアーになり、価値観を自覚するメリットについてより深い理解を得られて頂けたら幸いです。

実は、性格と価値観は別の概念である

性格と価値観は同じ意味・同義語として、しばしば使われています。しかし学術的には、性格と価値観は微妙に違うように定義されています。

性格の定義は「モノについて感じたり、考えたり、行動する時のある一定の傾向や特徴」です。性格は、価値観や意見などの他の心理的要素と比べて、長期的に見ると変わりにくく、また生物学的な基盤もある可能性が示唆されています。

例えば、幼い赤ちゃんの行動を描写するときに「この子は人懐っこい」とか、「この子は人見知りだ」などど描写することはあると思います。しかし「この子は平和主義的だ(価値観)」などと描写することはあまりないでしょう。

つまり性格とは、前者のような表現の仕方ができることから、ある個人の根っこの部分を構成する気質のようなものだとわかります。

一方で、価値観(後述)などのやや複雑なものの考え方などは、ある程度成長してから徐々に形成される、より高度な次元の要素であることがわかります。もちろん、性格と価値観の間には相関関係があり、ある一定の性格を持つ子供は、のちにある一定の価値観を形成しやすい可能性は十分にあります。

より多くの人々の性格を大まかに分類する際に非常に役に立つのが「ビッグファイブ理論」による分け方です。心理学では、ある人の性格を構成する要素は以下の5つに分けるやり方が主流です。

  1. 開放性 ー 知的好奇心などの程度
  2. 勤勉性 ー 自己統制力やまじめさの程度
  3. 外向性 ー 社交性や活動性の程度
  4. 調和性 ー 利他性や協調性の程度
  5. 神経症傾向 ー ストレスに対する程度

ビッグファイブ理論による分け方の性格データは、世界中でかなり分析されています。その普遍性と凡庸性の高さから、職業選択のマッチングや夫婦間の幸福度など、様々な場面で応用されています。

では価値観とはなんなのか?

学術的なアプローチによると、ある程度一定である性格に比べて、価値観は育った環境において徐々に形成されて行くものである、と捉えられています。

価値観の定義とは「人生の様々な場面での自分の行動や意思決定などに影響を与える、自分自身の中で優先順位のつけることができる抽象的な概念」と言えます。

例えば、今自分が重要にしている価値観、信念、生き方などについて考えてみてください。よく使われる価値観の例で言うと、
「利他主義 = 他人のために自分を役割を位置付ける」
「競争主義 = 競争が世界を豊かにすると言う考え」
などがあると思います。

他にも一言で表せる価値観はたくさんありますが、それらは全て、現時点での自分が達成したいゴールや行動にかなりの影響を与えているはずです。自分の中にある様々な価値観において、ある程度優先順位をつけることができると思います。そして価値観は人生における様々なイベントによって影響されるので、価値観は人生のステージによって変動しうると言うのが通説です。

この前提のもと、心理学や社会学の分野では世界規模の価値観調査研究が行われています。おそらく一番大規模な研究では「ワールド・バリュー調査」などがあります。

ワールド・バリュー調査では、国によって重視している価値観が違ったり、また時代によって、同じ国でも価値観が変動して行く様子が報告されています。時代やその時々の文脈によって変わりゆく問題を達成するために、異なる価値観が存在しています。この価値観の違いは、より小さい組織であったり、会社や友人とのグループといったより小規模な集団においても存在します。

価値観の集合体が、カルチャー(文化)となる

価値観とは、個人個人の行動や意思決定を促す、抽象的な概念です。

価値観は個人のもつ抽象的な概念ですが、人はパソコンなどの道具を他人と共有するのができるのと同様に、他人と価値観を共有することができます。

価値観を他人と共有している状態が、カルチャー(文化)と定義されます。「カルチャーは価値観の集合体である」とする考え方は、進化心理学や文化心理学で非常によく使われている理論的枠組みです。

これらの分野によると「人間は価値観を集団で共有することで、集団としての生活をより効率よくさせる」と言われています。これは、会社などの組織にも当てはまります。

日常的な例をあげてみると、私たちは実に多くの価値観を共有しながら生活していることがわかります。例えば「コンビニのレジで並んでいる時は割り込んではいけない」「エレベーターの右側は、歩く人専用だ」などという考え方は、その都度、いちいち宣言したり文字化しなくても、暗黙の了解として多くの人が共有しています。

多くの人々が共有することで、(完全に一致することはないけれど)いざこざを最小化し、集団生活をよりスムーズに進行させることができます。

このように我々には、抽象的な考え方を共有して、集団生活を効率よく回すことができる認知能力があります。

組織文化とは?組織によって異なる価値観の共有

前述した通り、価値観には人と人とを繋げて集団としての生活を効率化すると言う機能があります。この価値観の機能は、より小さい範囲での組織についても応用できます。「企業」と言う母体がその典型と言えます。

例えば、企業には以下のような様々な価値観が存在します。
「チームワークを尊重すべき(集団主義)」
「新しいことにはとことん挑戦すべき(挑戦志向)」
「上下関係は守るべき(権威主義)」
「先輩・後輩関係なくフラットなコミュニケーションを尊重する(自由主義)」

重要なのは、それぞれの価値観に絶対的な良し悪しはなく、あくまで組織によって優先順位が違うと言うことです。そして、その優先順位は組織の達成したいビジョンやゴールを最大化するための手段であると言うことです。それぞれの組織が目指すゴールや、その組織を構成する個人個人が持つ価値観が違えば、当然違ったカルチャーが存在します。

普段私たちは、この抽象的な概念を逐一確認しながらコミュニケーションをすることはあまりないと思います。会社の同僚と会話をする毎に「今の発言は集団主義的な発想からくる発言だよね?」などと確認する作業は、普通ならしないと思います。むしろ、チームが大事にしている価値観を「暗黙のうちに」共有することで、信頼感が生まれ、スムーズな行動やコミュニケーションが実現すると言えます。

価値観を共有することのメリットについては、ゲーム理論の実験を使った最近の心理学の研究が新しい切り口で実証に取り組んでいます。

ハーバード大学の著名な認知心理学者スティーブン・ピンカー教授と、その教え子による実験によると、あるペア同士が共通の考えやルールをお互いに認識している状態が、一番協力行動を最大化する、と言う報告があります。

彼らの言う共通の考えとは、次のような条件が満たされた状態です。

  1. AさんとBさんが「C」と言う価値観を共有して
  2. Aさんがそのことについて自覚があり
  3. BさんもAさんが自覚していることに自覚している

彼らの研究によると、どれか一つ条件が欠けている状態よりも、3つ全ての条件が揃っている状態が、人は一番協力的になると言います。

共有している状態によって生まれる信頼感は、グーグルの研究報告による「心理的安全性」に繋がります。グーグルの研究によると、「何を発言しても良い」安全な雰囲気が、生産性を高めると言います。

しかしその安全性は、メンバー「全員」が自覚している状態なしでは崩れやすくなってしまいます。メンバーが同じ価値観を共有していることを自覚することで、効率の良いコミュニケーションに発展します。

価値観は抽象的な概念ですが、人と人とを繋げる接着剤のような役割を果たします。そして、どのような質の接着剤なのかは、それぞれの組織によって異なります。

抽象的な価値観を共有することで、生まれる信頼と安心

価値観は様々な適性検査などで測られているものの、漠然とした抽象的な概念であるため、定義するのが難しくなりがちです。価値観は、個人の行動に大きな影響を与える抽象的な概念ではありますが、具体的に説明ができれば、集団内のメンバーと共有することができます。

日々のコミュニケーションの中で、価値観を毎回可視化して確認することは難しいため、「暗黙のうちに」共有することで集団行動をより効率よくすることができます。

自分の属する組織の中に、共通する価値観があるとすれば、それをメンバー同士で共有し、そのことについて自覚することで、より高い信頼感と安心感が生まれることが期待できます。

出典

日本人の考え方 世界の人の考え方: 世界価値観調査から見えるもの 池田謙一(2016)

Thomas, K. A., DeScioli, P., Haque, O. S., & Pinker, S. (2014). The psychology of coordination and common knowledge. Journal of personality and social psychology, 107(4), 657-676.

Hogan, R., Hogan, J., & Roberts, B. W. (1996). Personality measurement and employment decisions: Questions and answers. American psychologist, 51(5), 469.

Berry, J. W. (2002). Cross-cultural psychology: Research and applications. Cambridge University Press.

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