適性検査における「妥当性」も確認してみよう
人材採用の場面において「適性検査」はほぼすべてといっていいほどの企業が行っている重要なプロセスです。リクルートの『就職白書2017』によると、採用活動プロセスにおいて「適性検査・筆記試験」を実施している企業は94.9%で、特に従業員規模が300~999人の企業において増加傾向にあります。
出典元『就職みらい研究所』就職白書2017-採用活動・就職活動編-
学生の立場でみると、受けたことのある適性検査の形式として「WEB(86.9%)」「紙(74.1%)」「テストセンター(71.4%)」であり、便利だと思う適性検査の種類においてはWEB適性検査の比率が増加し、テストセンターは減少しています。
適性検査には「性格」や「能力」などの対象となる検査項目の種類だけでなく、同じ「性格」を計測する適性検査にもさまざまな種類があり、目的に応じたもの、自社にとって使い勝手が良いものなど、様々な視点で選ぶ必要があります。
今回は、適性検査の選び方の参考になる適性検査の『妥当性』について説明します。
適性検査における「妥当性」とは?
元々の「妥当性」とは、その検査が測定しようとしているものをどれくらい的確に測定できているかです。
現在の時刻を知りたいとき、一般的な行動として時計を見ます。「時計なら、時刻を知りたいという目的に適しているので妥当性がある」ということになります。しかし、同じ時間を計る道具でも、ストップウォッチの場合は時刻は分からないので妥当性がない、ということになります。
妥当性はさまざまな現象に見られますが、大きく分けて、「内容的妥当性」「基準関連妥当性」「構成概念妥当性」の3つの妥当性が関連しあうことで、結果や指針などの妥当性が決まります。
- 内容的妥当性
- 基準関連妥当性
- 構成概念妥当性
適性検査における妥当性の意味や定義とは
適性検査における「妥当性」とは、検査内容が利用目的や場面にどの程度相応しいかをはかる意味です。
ただし「妥当性」は数値として一般化することができません。理由としては、たとえば検査で予測したいものが人事評価である場合、検査結果と人事決定は直接的には関連性がないため、その検査がどれだけ目的にかなっているかを、係数として算出できないためです。
検査で予測したいものが定着率であっても同じ考え方です。定着しやすい人材と活躍しやすい人材の傾向には非常に関係がありますが、極端な例で「何もしなくてもよいポジション」に採用する場合には、定着はするが活躍はしない人材は存在しえます。目的が「定着」なのか「人事評価」なのか、適性検査を使う目的によって妥当性は異なってしまいます。
適性検査の妥当性についての考え方とは
適性検査は「性格や能力を的確に測定する」ことが目的ではなく、検査結果を「人材採用」や「人事評価」に有効に活用することが大きな目的です。
適性検査の妥当性を知るためには「退職者が早期で離職しなかったか」「人材を評価した後に実際に期待していたような活躍をしたか」などという指標で相関性を見ることが必要です。
自社で適性検査をうまく活用できていない場合は、検査結果が目的に適しているのか(妥当性があるのか)を、まずは見直してみましょう。
適性検査関連を扱っている専門の企業にサポートを依頼するのも一つの手です。よく用いられる「採用」であっても、組織の規模や業種・職種によって、それぞれの企業が持つ課題はさまざまです。どういった課題であれば解決できるのかを、まずは見極めることが重要になってきます。
適性検査の妥当性の計測方法について
各社独自の課題に対する妥当性は、事前に計測ができないため、適性検査を提供する各社は、別の指標での妥当性を検証しています。例えば性格適性検査においては「性格を的確に測定できるか」という視点で、妥当性を検証しています。性格に関しては、昔から心理学での研究が盛んであるため、様々な計測手法が確立されています。
性格とはそもそも「モノについて感じたり、考えたり、行動する時のモチベーションになる、ある一定の傾向や特徴」と定義されており、仕事だけでなくプライベートなどでも大きな影響を与える抽象的な概念です。
適性検査をサービスとして提供する企業では、適性検査の妥当性をはかるとき、適性検査で測定した個人の性格と、採用・評価の結果を比較します。即適した個人の性格が、採用・評価の場面で一切関係のない要素であった場合などは、その検査は、採用や評価の場面で妥当性がないと判断できる、などの事象から「妥当性」を計測していきます。
人事ではなく、恋愛などに特化した性格適性検査であれば「休日の過ごし方」や「仕事への考え方」「金銭感覚」など、仕事で重要視されるものとは別の性格や価値観が重要となってくるでしょう。
本格的に妥当性を検証するには、各社で適性検査と職務行動との関係を分析することが求められます。人事評価データの収集と、目的によっては評価基準データ(基準変数)を算出。これに適性検査の尺度(予測変数)を照らし合わせ、統計的に関係性を確認します。
統計手法の代表的なものに、「平均」と「標準偏差」などがありますが、いずれの統計手法を採用しても、不採用者のデータを含んでいないことや、基準となる人事評価や満足度の正しい測定が困難なことなどから、妥当性検証の結果には誤差が含まれることに留意しておく必要があります。
「妥当性」の根拠を適正に見極めよう!
適性検査を選択する際の一つの指標には「妥当性」があります。多くの適性検査提供会社では「性格・能力を測定すること」を「妥当性」として考える場合が多くありますが、本来であれば「人材採用の見極めに使える」「人事評価との相関関係がある」を大切な視点として考えるべきです。
人材採用の見極めでも、採用する目的は企業によって様々です。長く定着する人材を見極められるのか、高い業績を上げる人材を採用したいのか、効率的に働く人材を採用したいのかなどを明確にした上で、求める人物像を見極められる項目を分析してくれるのかといった視点で適性検査の妥当性を判断する必要があります。
専門のサービス会社に協力をお願いする場合は、最初の段階で、何に対して「妥当性」があると考えているのか、またその根拠などについて確認するようにしましょう。適性検査の導入によって本当に自社の課題を解決できるのかを明確にしながら、自社に適した適性検査を選びましょう。