リテンション施策の企業事例とは?他社事例から成功要因を探る

自社にとって必要な人材をいかに定着させるか

リテンションとは、自社の人材や顧客との関係を「維持・保持」するという意味で、HRの分野においては「人材確保」を意味する、人材マネジメント用語です。幹部候補や将来を有望視されている若手社員など、自社にとって必要な人材の確保や、優秀な人材の社外流出を防ぐための人事・経営戦略としても重視されています。

優秀な人材を自社に保留できることは、企業の将来を左右する重要な要因にもなります。リテンションに関連する施策やリテンションマネジメントを重視する傾向は、近年どの企業でも見られるようになりました。今回は、リテンションの有効な施策を他社はどのように実施しているのか、具体的な事例をご紹介します。

リテンション施策の成功企業事例について

高い離職率に悩み、リテンション施策を行った企業は数多くあります。その中でも、成功事例として取り上げられている企業について紹介します。

  1. サイボウズ株式会社
  2. カネテツデリカフーズ株式会社
  3. 株式会社テイルウィンドシステム
  4. 株式会社ビースタイル
  5. 株式会社鳥貴族
  6. Google LLC
  7. 株式会社レオパレス21
  8. 社員約100名規模のIT系ベンチャー企業

1.サイボウズ株式会社の企業事例

サイボウズ株式会社は、グールプウェアなどのチームワーク向上を支援するソフトウェア開発会社です。現在政府が推進している「副業解禁」等においても、いち早く導入したなどから、自社の人材活用にも積極的な企業です。

リテンション施策の内容

社内コミュニケーションの活性化に向けて『社内部活動』を推奨しました。

日常的にコミュニケーションが取りにくい、組織の横のつながりを形成することを目的に、部活動を積極的に行うことで、部署間の連携をスムーズにし、業務のスピードアップを目指した施策です。

複数の部署の5人以上の部員で構成すること、年数回の活動報告書の提出をすることが部設立の条件で、条件をクリアできれば誰もが補助を受けることができる環境を設定しました。

防ごうとした離職理由

社内間の人間関係

具体的な施策の効果

『社内部活動』の促進制度が、離職率28%から4%への引き下げに貢献しています。

2.カネテツデリカフーズ株式会社の企業事例

カネテツデリカフーズ株式会社は、かまぼこやちくわなどの魚肉練り製品の食品メーカーです。創業は1926年、法人設立は1948年と伝統のある食品メーカーです。

リテンション施策の内容

現場の先輩(若手)社員が、すべての新入社員をマンツーマンで教育する『マンツーマン制度』を導入しました。

元々「仕事は見て覚える」という社内風土から、新人へのスキルやノウハウの共有・コミュニケーション不足が発生していました。入社後半年で会社に馴染めば、その後の会社生活がスムーズにいきやすいことに着目した施策です。

月単位の目標を先輩社員と一緒に立案し、結果も一緒に振り返るプロセスとなっています。教育にじっくり時間をかえるため、新入社員としても記憶に残りやすく、今何をやるべきかが明確になります。また、先輩社員としても「教えること(マネジメント)の難しさ」や「自分の知識が足りないところは他の社員が補ってくれる」などの管理職研修や社内コミュニケーションの活性化にも貢献しています。

防ごうとした離職理由

昔かたぎの職場風土(人材育成の不足)

具体的な施策の効果

新入社員の3年以内の離職率50%超の状況を、わずか数%まで激減。

3.株式会社テイルウィンドシステムの企業事例

株式会社テイルウィンドシステムは、独立系SIer企業として、システムコンサルティングやソフトウェア設計・開発などを行っている企業です。

リテンション施策の内容

新入社員一人ひとりに指導役の先輩社員が1年間ついて指導する『ブラザー・シスター制度』を導入しました。業務の進め方や社内行事への取り組み方をサポートしたり、何か問題があった場合などの相談相手になったりする役割があります。

社員によって指導内容に差が出ないよう、困った時の対処法をQ&Aにまとめたマニュアルも作成していますのマニュアルを活用して、先輩社員の負担を軽減しながら、効果的な新入社員教育を実施することが可能になったとのことです。

兄・姉の先輩社員は、なんでも相談にのってくれるため一人で悩みを抱えこんでしまう状態を防げます。また先輩社員もマネジメント能力だけでなく、新人業務の振り返りなどもできます。

防ごうとした離職理由

後輩が上司、先輩に相談しやすい環境がない(人間関係の構築)

具体的な施策の効果

一人で悩みを抱えて困っている社員の減少。離職率はほぼ0%に。

4.株式会社ビースタイルの企業事例

株式会社ビースタイルは、主婦・派遣・パート・社会人インターンなどを手がける人材会社です。特に結婚や出産などで退職した「経験豊富だが、働く場がない女性」などにスポットを当てています。

リテンション施策の内容

経営層に意見を伝える「全社日報」やマネージャーとのマンツーマン面談、『69ファミリーシフト』といった選択式時短勤務制度(午前・午後6時-9時には家にいるようにする)を導入しました。社内コミュニケーション不足の解消を目的としたものです。

社内コミュニケーションを円滑にすることにより、社員のモチベーションやワークライフバランスに関する施策が積極的に活用され、さらに活性化につながる好循環が生まれました。

防ごうとした離職理由

従業員間のコミュニケーション不足

具体的な施策の効果

コミュニケーション方法を見直すことで、離職率を20%から8%へ改善させる。

5.株式会社鳥貴族の企業事例

株式会社鳥貴族は、大阪や東京などの都市圏を中心に展開する焼鳥屋(居酒屋)チェーンです。国の調査からも、外食産業の離職率は他の産業と比べても高いため、リテンション施策は重要度の高い課題となっています。

リテンション施策の内容

人材育成を配属店舗に任せきりにするのではなく、人財部もフォローに関わるようにしました。入社後1ヶ月以内をめどに、面接官が配属店舗に訪問して、新入社員をチェックする取り組みです。

経営層などとの縦のカベをなくしたいという思いから、社長室や役員室を撤去し、本社にいる社員全員が、一つの大きな部屋の中で仕事をするスタイルに変革しました。若手社員から役員まで、お互いの業務への理解が進んだことによって、社内コミュニケーションがスムーズになりました。

外食産業でよく問題となる長時間労働を是正するために、無断残業を禁止する取り組みも実施しています。

防ごうとした離職理由

業界を通しての高い離職率。将来性や労働環境、安定性などの問題。

具体的な施策の効果

外食産業のよくある就業形態を「おかしい」と考え、より細かいルールや制度に見直すことで、離職率の低下を実現。

6.Google LLCの企業事例

Google LLCは、検索エンジンやオンライン広告などを展開するインターネット関連サービス企業です。優秀な人材を採用するための手法や、活用するための手法などについても、最先端の手法を取り入れ(開発し)、多くの事例があります。

リテンション施策の内容

社内ITリソースの各社員の利用状況を独自のアルゴリズムで解析することで、「離職の可能性がある社員」をピックアップする仕組みを創出しました。

離職の可能性がある社員にアプローチをかけることで、個人の希望や意見を聞く土壌を作りました。

防ごうとした離職理由

やりたい仕事(業務)があるかなど、仕事に対する不満。転職に至るほど問題が大きくなる前に、事前に対策を行う。

具体的な施策の効果

詳細な数字は不明ですが、取り組みとして先進的なIT系企業らしいとして、話題になりました。

7.株式会社レオパレス21の企業事例

株式会社レオパレス21は、アパートの建築開発や賃貸、介護施設やホテル事業などを行っている不動産会社です。不動産業の3年以内の離職率は約38%と、飲食業などと比べると低いものの、離職率の高い業界のイメージがついてまわっています。

リテンション施策の内容

社員アンケートの結果「教育」に対するニーズが非常に高かったため、「管理職研修」や「営業力強化研修」、「組織マネジメントの徹底」など、部門や役職ごとによって様々な研修を実施しました。

元々研修などの「社員のスキルアップをサポート」する風土がなかったため、最初は現場からの抵抗がありました。しかし社員が成果を出し始めることで、支店長や社員のマインドも変化し、「マネジメント能力向上の重要性」や「現場をマネジメントすること」について共通認識が生み出されました。

不動産業界の定説である「歩合は高いがハード」というイメージをなくすことを目標に、評価軸の見直しも実行しました。「労働時間=評価ではない」ことを現場に徹底させ、「限られた時間で成果を出す」評価制度を徹底しています。

防ごうとした離職理由

誰もが活躍できる(育つ)人材になり、会社から必要とされていることを実感してもらう。長時間労働の是正。

具体的な施策の効果

一人当たり月6時間の時間短縮。有休取得率も33%から70%へと劇的に改善しました。また、わずか3年で離職率を業界水準以下に改善させる。

8.社名不明(社員約100名規模のIT系ベンチャー企業)の企業事例

匿名企業での事例になります。

リテンション施策の内容

現場のエンジニアや離職者に「会社を辞めたい理由」をヒアリング・分析して、最も多く挙げられたのは「不公平感」でした。最先端の技術を扱う現場で働きたいという志向やマネジメントを取得したいという志向を持ちながらも、配属で適材適所を実現できておらず、希望が叶わなかったことが不満を募らせて、離職につながっていました。

様々な現場を経験する、社員がやりたいことを把握するために「ジョブローテーション制度」や「定期的な面談制度」、「キャリアアップのための教育機会の拡充」を行いました。

自社の社員が抱える不満の解決策を施策に落とし込み、実行しています。

防ごうとした離職理由

最先端の技術を学びたいなど、キャリアアップの機会がなかったこと。現場への派遣が多いことから、組織として求心力がなかったこと。

具体的な施策の効果

四半期段階で前年同時期と比較して、2割程度の改善が実現。

他社の事例を参考に、独自の「リテンション施策」を考察することが重要

成功したリテンション施策には、必ず目的があります。自社特有の離職理由を解決するため、業界特有の離職理由を解決するためなど様々ですが、離職理由となる問題を解決することが、優秀な人材の流出を防止できるリテンション施策となります。

自社特有の離職理由を知るためには、まずは自社の社員と向き合いながら、どんな悩みを抱えているのか気軽に話すことが大切です。そのためには、社内コミュニケーションの活性化や社員との信頼関係を築くことが必須です。すぐには難しい場合は、他社や他業界の離職理由となる原因が自社でも発生していないか、調査してみると良いでしょう。

自社が取り組むべき優先順位の高い課題を見つけ、課題を解決できるリテンション施策を実施していきましょう。

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