労働移動支援助成金の再就職支援コースとは?職業訓練を有効活用しよう!

労働移動支援助成金の「再就職支援コース」とは

人材不足を理由にした倒産も増え、離職を余儀なくされる労働者が多くいます。政府としても、自己都合でない意図せず離職した人材の対応に力を入れています。しかし政府だけで行える施策は少なく、企業側の協力があってこそ、離職を余儀なくされた人材の労働支援が行なえます。

離職を余儀なくされる労働者に関する助成金として「労働移動支援助成金」制度があります。企業が申請し、企業が助成金を受給できる制度で、政府の進める施策の企業への対応を促進する制度とも考えられます。

労働移動支援助成金には「再就職支援コース」「早期雇入れコース」「中途採用拡大コース」の3種類があります。「再就職支援コース」は離職する人材が再就職しやすいように教育・研修を行ったり、求職活動を行う休暇を与える企業を支援する制度となっています。

今回は「再就職支援コース」がどんな条件で受給できるのか、いくら支給されるのか、申請する上での注意点はなにかについて説明します。

再就職支援コースとはどんな内容なのか?

労働移動支援助成金の再就職支援コースは、事業の縮小などによって、自社の従業員に離職してもらわないといけなくなった際に、次の就職先を決める支援を行った際に受給できる助成金です。

再就職支援コースを細分化すると、「再就職支援」「休暇付与支援」「職業訓練実施支援」の3種類の助成金に分かれます。

再就職支援とは、次の仕事探しの支援として、人材職業紹介事業会社に委託した場合、委託にかかった費用の一部が助成される制度です。一定の条件を満たせば特例区分として支給額の増額があります。また、職業訓練やグループワークを実施することでも加算されます。

休暇付与支援とは、次の仕事探しの支援として、就職活動のために休暇を与えた際に助成金が支払われます。再就職が実現されなかった場合には支給されません。

職業訓練実施支援とは、再就職のための訓練を、教育訓練施設等に委託して実施した場合に、委託にかかった費用の一部が助成される制度です。休暇付与支援同様、再就職が実現されなかった場合には支給されません。

助成金が支給される事業主の条件とは

助成金の申請を行う事業主は5つの条件すべてを満たす必要があります。ただし「給与付加支援」のみ「職業訓練実施支援」のみの申請の場合は、3を満たす必要はありません。

  1. 雇用保険を適用している事業主である
  2. 人員削減のあった組織において、生産量が低下しているか赤字であること
  3. 中小企業事業主以外の場合、再就職支援を委託する再就職援助計画対象者または求職活動支援書対象者の数が30人以上であること。
  4. 支給のための審査に関して、以下の事項に協力すること
    1. 支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管している
    2. 支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じる
    3. 管内労働局等の実地調査を受け入れる
  5. 助成金の申請期間内に申請を行うこと

事業主の条件なども、社会情勢によって都度変更が加わるため、申請を行う際には厚生労働省のウェブサイトや労働局、ハローワークなどで最新の情報を入手しましょう。

離職する従業員の条件とは

事業主だけでなく、対象となる従業員にも条件があります。7つの条件のうち、全てを満たした従業員の分だけ助成金を受け取れますが、1つでも満たしていないものがあれば、助成金を受け取ることはできません。

  1. 助成金の申請を行う事業主が申請の際に作成した「再就職援助計画」か「求職活動支援書」の対象者であること
  2. 申請事業主に雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として継続して雇用された期間が1年以上であること
  3.  申請事業主の事業所への復帰の見込みがないこと
  4.  再就職先が未定であること、またはこれに準ずる状況にあること
  5.  職業紹介事業者によって退職勧奨を受けたと受け止めている者でないこと
  6.  申請事業主によって退職強要を受けたと受け止めている者でないこと
  7.  職業紹介事業者に委託して行う場合、その職業紹介事業者の行う再就職支援を受けることについて承諾している者であること

事業主の条件同様、離職する従業員の条件も変更される可能性があります。最新の情報を入手し、該当するかを都度確認しましょう。

再就職支援コースで支給される助成金の金額について

1年度1事業所あたり500人が限度となります。中小企業であれば、事業規模の縮小などでも1年度で500人を対象とすることはないかと思いますが、大企業の場合は注意が必要です。

再就職支援の「再就職支援」「休暇付与支援」「職業訓練実施支援」それぞれで1人あたりに助成される金額が異なります。すべて1人あたりに支給される金額で説明します。

再就職支援

再就職支援の助成金を計算するためには「区分」と「計算式」の2種類を理解する必要があります。

区分について

区分は「通常区分と特例区分」「中小企業事業主とそれ以外」の2軸、計4種類に分けられます。

特例区分は以下の条件すべてを満たす場合に認められます。1つでも満たしていなければ通常区分となります。

  1. 申請事業主が、労働者の再就職支援の実施について委託する職業紹介事業者との委託契約において次のいずれにも該当する契約を締結していること。
    1. 職業紹介事業者に支払う委託料について、委託開始時の支払額が委託料の2分の1未満であること。
    2. 職業紹介事業者が支給対象者に対して訓練を実施した場合に、その経費の全部又は一部を負担するものであること。
    3. 委託に係る労働者の再就職が実現した場合の条件として、当該労働者が雇用形態が期間の定めのないもの(パートタイムを除く)であり、かつ、再就職先での賃金が離職時の賃金の8割以上である場合委託料について5%以上を多く支払うこと。
  2. 支給対象者の再就職先における雇用形態が、期間の定めのない雇用(パートタイム労働者を除く。)であり、かつ、再就職先での賃金が離職時の賃金の8割以上であること。
計算式について

基本となる計算式は「(委託費用ー訓練実施に係る費用ーグループワーク加算の額)×倍率」となります。

倍率は区分によって異なります。また、対象とする離職者が45歳以上である場合は、倍率自体も上がります。

  • 通常の中小企業主:1/2
    • 45歳以上の場合:2/3
  • 通常の中小企業主外:1/4
    • 45歳以上の場合:1/3
  • 特例の中小企業主:2/3
    • 45歳以上の場合:4/5
  • 特例の中小企業主外:1/3
    • 45歳以上の場合:2/5

上記の計算式で算出される金額に加え、区分に関係なく「訓練加算」と「グループワーク加算」が上乗せされます。

訓練加算は、訓練実施に係る委託費用の2/3の額となります。上限は30万円です。

グループワーク加算は、グループワークを3回以上実施した場合に1万円となります。

計算式で計算された金額と訓練加算、グループワーク加算の3種を合計した金額と60万円のいずれか低い方が上限となります。そのため、最大支給金額は60万円となります。

休暇付与支援

再就職実現時に、当該休暇1日当たり5,000円(中小企業事業主については8,000円)を助成(180日分が上限)されます。中小企業主が180日の休暇を与えている場合は、8,000円×180日=1,440,000円が支給されます。

支給対象者が早期の再就職を実現できた場合(離職日の翌日から起算して1ヶ月以内に再就職した場合)は、支給対象者1人につき10万円が加算されます。

職業訓練実施支援

訓練実施にかかった費用の2/3が支給されます。上限は30万円となっています。

助成金を申請する上での注意点について

助成金の申請を行う事業主の条件として1つでも該当してしまうと助成金を申請することができません。

  1. 再就職支援または休暇付与支援の申請を行い受給する場合、助成金の支給対象である従業員が再就職をした日の前日までの1年間、対象の従業員と再就職先が関連事業主の関係にあった場合
  2. 再就職支援の際に離職者への職業紹介を依頼した事業者から退職コンサルティングを受けた場合(助成金の対象である従業員が離職する日の前日までの1年間で)
  3. 再就職支援の実施を委託する職業紹介事業者と退職コンサルティングを実施する会社等が連携していたことを承知していた事業主
  4. 不正受給をしてから3年以内に支給申請をした事業主、あるいは支給申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした場合
  5. 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
  6. 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主
  7. 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主
  8. 暴力団関係事業主

過去に問題となった事案について

再就職支援コースでは、過去に不正受給が問題になりました。その結果、都度受給要件が見直され、今後も不正受給の問題が明るみになれば受給要件が変更される可能性があります。

過去の不正受給に起きた理由として、再就職先が見つからなくても10万円が助成されたことが挙げられます。そのため、リストラを促進してしまう問題が発生しました。また離職した従業員が、企業からの支援を一切受けずに再就職した場合にも助成金が支給されていることが発覚しました。

不正受給が起きた原因を解決するために平成30年4月1日から改正され、事前の委託開始申請分の支給が廃止され、また支援を一度も受けずに再就職が実現した場合は支給対象外になる等の変更がありました。

助成金制度は、企業に運用してもらう以上、難解な制度にしてしまうと導入してもらえないなど、本末転倒になってしまうため落とし所が難しいものです。今後も何かの不正受給や問題が明らかになったり、社会情勢の変化によって、受給要件や金額などが変更になる可能性があります。

再就職支援コースを有効に活用するためには

再就職支援コースのことを知っておけば、今後従業員をやむを得ず離職させてしまう場合に、従業員の再就職の支援を行うことで助成金を受給できる可能性があります。やむを得ず離職させてしまう状況を意図的に考えるのは難しいですが、仮にそのような状況に陥ってしまったとしても、再就職支援コースを知っているのかの差は大きいものです。

以前悪用された経緯もあり、見直しが随時行われている状態は否めません。以前受給できたとしても再度受給申請をする場合には、受給要件を満たせずに、助成金受給を認められないケースも発生してくるでしょう。自社が該当するかや条件等は、助成金を申請する際の最新の情報を確認し、助成金受給を目的とするのではなく、従業員が今後他社でも活躍できる支援を行うことを目的として、有効に活用しましょう。

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