新卒・中途に関わらず母集団形成が大きな課題に
労働力人口が減少していることの問題が、各企業に影響を与え始めています。帝国データバンクの調査によると、従業員が不足している企業の割合は増加減少にあり、2018年1月の時点で51.1%と過半数の企業で人手不足となっています。
労働力を確保するためには、採用を強化することが真っ先に考えられます。キャリタスリサーチの調査によると、2019年新卒採用においては、2018年採用よりも増やす見込みが33.6%、減らす見込みは6.3%と、多くの企業が採用人数の増加を目指しています。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』2019年卒 採用活動の感触等に関する緊急企業調査
一方で、新卒者の絶対数は減少傾向にあります。新卒就職希望社の推移予測では、2007年には80万人を超える学生が就職を希望していたのに対し、2018年では70万人を切っています。2019年以降も減少傾向になるとの予測に対して、否定的な意見を述べる方は少ないのではないでしょうか。
出典元『株式会社ベネフィット・ワン』就職希望新卒者(大卒、専修卒、高卒)の推移予測
就職を希望する学生が減少するのに伴って、多くの企業が母集団形成でも苦戦しています。母集団形成状況について「想定よりも少ない」と回答した企業が56.1%と過半数を占めています。従来の採用手法が通用しなくなってきている傾向が見て取れます。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』2019年卒 採用活動の感触等に関する緊急企業調査
中途採用での採用活動でも、苦戦が続いています。マイナビの調査では、2017年の中途採用活動が、2016年並みに厳しい・2016年以上に厳しいと回答した企業が85%以上と回答しています。多くの企業が労働力不足で悩む中、中途採用においても人材の取り合いになることは想像に難くありません。
出典元『中途採用サポネット』中途採用状況調査 2018年版(2017年実績)
目標とする採用人数を充足させるためには、母集団形成が課題の一つとして挙げられます。今回は母集団形成をする意味や目的、効果的な母集団形成方法について再確認しましょう。
そもそも母集団形成とは?
母集団形成とは、採用する際に候補となる人材を集めることです。「採用活動を行っている」ことを求職者に広く知ってもらい、自社に関心を抱く人材を集めることで円滑に採用活動を進めることができます。
母集団は必ずしも多ければよい、というわけではありません。あまりにも多すぎると内定候補に絞り込んでいく過程で手間がかかってしまう為、自社の採用規模に適した人数を集めることが大切なのです。
自社の求める人物像に近い候補者を集めよう!
母集団形成は、候補者の数を集めることだけでなく、質も重視することが大切です。採用することがゴールではなく、採用した人材が入社後に活躍してくれることを意識しましょう。
質を重視するためには、自社の求める人物像の明確化は必須です。どのような人材の質が高いと言えるのかを定義しておかなければ、質の見極めはできません。
求める人物像が明確になっていれば、採用選考で候補者の見極めも容易になるだけでなく、母集団形成においても、求める人物像に近い候補者がどんなことに興味があるのかから、適切なアプローチが可能となります。インターネットが普及したことにより、全国各地の求職者にアプローチができる現状で、どのようなことに注力スべきかの優先順位をつけることは、効率的な母集団形成には欠かせません。
大まかな採用計画について
採用までは「採用計画立案」→「求職者を集める」→「企業に惹きつける」→「人材を選定する」という流れになります。
採用計画立案では、採用予定人数を明確にするだけでなく、「採用すべき人物像」「どのような性格や価値観を持った人なのか」「現場で必要とされている人物はどういう人か」「各選考はどの要素を見極めるためのものか」などの採用要件を定めておく必要があります。
求職者を集めるためには様々な方法がありますが、求めている人材はどの手法を使えば集まりやすか、という視点から分析を行うと良いでしょう。各採用手法のメリット・デメリットを考えながら選ぶことが大切です。
求人票や求人広告を出す際には、求める人物像に合わせて魅力的な内容にすることが大切です。求職者にとって「魅力的な会社だ」と感じてもらえるような募集の仕方をする必要があります。
母集団形成における注意点や課題について
採用ターゲットを明確にする
自社の採用ターゲットと合わなければ、いくら集めても意味がありません。極端な例にはなりますが、営業職を採用したいのにエンジニア職希望の求職者を集めたところで、母集団形成にかけた手間や費用が無駄になってしまいます。
母集団形成には応募者の数や質が適正であることが重要です。質の高い人材を採用するためには自社がどのような人材を求めているかを明らかにすることも重要です。
流行手法が自社にとって正解とは限らない
比較的新しいテクノロジーを使う手法や、他社で成功している採用手法は、とにかく活用してみたいと思ってしまいがちですが、その手法が自社に最適とは限りません。
テクノロジーが解決してくれる課題が自社の課題とあっているか、他社が課題としていたものと自社の課題があっているかなどを判断する必要があります。課題としては、営業職を採用したいだけでなく、どんな営業職を採用したいのか、求める人物像ベースで考えて検証する必要があります。
採用マーケティングを毎年行う
時代の変化や市場で活用される媒体も多様化していますし、発展スピードも高まっているため、ターゲット人材の趣向や動向も常に変化しています。
自社が求めている人材の視点がどこにあるのか、ということをしっかりと絞り込んでアプローチにつなげる必要があります。たまたま昨年の趣向や動向と同じことはアリえますが、基本的には異なるものとして、毎年しっかりと趣向や動向を追っていきましょう。
自社の採用スタイルにフィットする方法を選ぶ
自社の求める人物像にフィットする方法を選ぶためには、各手法のメリット・デメリットを整理することが必要です。自社の採用理念もしっかり持つことは大切なのですが、場合によっては自社の採用スタイルを変更したほうが良いこともあります。
母集団形成を行う方法について
就職サイト、自社サイト
最もメジャーな母集団形成です。就職サイトや転職サイトに自社情報や求人内容を掲載して、自社認知度を得て応募を集める方法です。インターネットが普及したことにより、全国の求職者にアプローチできる可能性があります。
母集団の数を確保するにはもっとも有効だとされています。
SNS
TwitterやFacebookなどのSNSを利用した母集団形成です。
SNSを活用する求職者は流行に敏感で、新しいテクノロジーを積極的に活用する傾向がありますので、このような層を獲得したいときには有効です。
人材紹介会社・ヘッドハンター
中途採用に有効です。人材紹介会社やヘッドハンターなどに求人内容を伝え、登録者の中から適任者を紹介してもらう手法です。
人数に関しては紹介される登録者に絞られるため少なくなりますが、質は向上するケースが多いです。
社員紹介(リファラル)
中途採用に有効です。従業員やOBなどに仕事を探している知人を紹介してもらう手法です。
社内の内部事情に詳しく、内部の話もしてもらえるような中継者が間にはいってくれているので、非常に高い確率で採用ができる手法です。しかし社員の人脈によって求職者の数がかなり絞られてしまう可能性があります。
合同説明会
昔からあるスタンダードな手法で、現在でも広く行われています。
合同説明会であれば、自社の認知度が低くとも、説明会ブースを通りかかった求職者に認知してもらう可能性が生まれます。しかし大手企業などにブース集客が取られがちなので、足を運んでもらう魅力的なコンテンツが必要です。
学内セミナー
新卒採用に有効です。採用したい人材が多い大学に訪れ、学内で説明会を開く手法です。
学生にとっては「自分たちの大学に関心を持ってくれている」と感じるので、自社への好感度や関心が上がるというメリットもあります。
自社に適した母集団形成を選択する
売り手市場によって人材獲得競争が激化し、母集団形成は今後もどんどん難しいものになっていくことが予測できます。
「昨年度も同じ内容でやっていたから」ということではなく、都度変わる労働市場の変化に注意を向け、適した母集団形成を取捨選択していく必要があります。