企業組織において、多様性(ダイバーシティ)は必要?
価値観や性格のマッチングで適材適所を目指す弊社ミツカリとしても、多様性は大きなテーマです。多様性はしばしばダイバーシティと訳され、グローバル化・グローバル企業などというワードと併用されることが多いと思います。
ミツカリを使用していただく際に、また「マッチング」と聞いた時に、ほぼ間違いなく浮かんでくる疑問は以下のようなものではないでしょうか?
①「多様性が必要とされているから、それぞれ違った人が多く集まった方がパフォーマンスが上がるのではないか?」
②「似通ったもの同士で集まったら、組織としては上手くいかないんじゃないか?」
この記事では、上記の疑問を解決するためにミライセルフが多様性についてどのように考えているのかを説明し、企業や組織は目指すべきか?をまとめます。
前半部分で学術的に既に明らかになっている点をまとめ、後半部分でこれから明らかにされていくであろう展望についてまとめます。
そもそも「何に」多様性があると嬉しいのか?
学術的な知見では「組織における多様性は良いものなのか?」というシンプルな疑問を解決するために、細かい条件下での的確な疑問に置き換えて考えます。
具体的には
- どのような多様性があって
- どのような状況下において
- どのようなタスクを行う上で
- 良いのか悪いのか
というように、パターンに分けて考えます。
そもそも多様性の定義とは?
学術的によく使われる多様性の定義は「人が、他人と自分は違うと判断するときに用いる特徴の違い」です。
この定義からは人が「何をもって」他人と違うと判断するかについては読み取ることができません。
今までの学術的研究から明らかになってきたのは、「多様性の種類によってチームパフォーマンスにおける効果は変わってくる」ということです。
多様性のタイプ別に、どのようなことがわかってきたかをまとめます。
-
年齢やステータス
Furtune 500の31社のトップマネージャークラスを対象とした研究報告によると、年齢やステータスの違いは退職率と関係があったと言います。チーム内での年齢やステータスに差がありすぎると、年上が社会的な距離感を感じてしまいより早期に離脱する可能性が高まりました。
-
性別
性別の違い(チーム内での性別間のバランスの欠如)は、他の要因に比べてチームの生産性をそこまで下げないことが報告されています。しかし、異性に対しての偏見やステレオタイプによっては、精神的なストレスを与える可能性があります。
-
人種
人種の違いは、一般的にチーム内での衝突を生むことが報告されています。人種の違いは職場満足感の低下と関連しており、また仕事とは関係のない感情的なストレスを生むことも報告されています。
-
価値観や信念の多様性
価値観や信念の違いはチーム内の軋轢を生み、退職率や職務満足感の低下などと関係があることが多く報告されています。
-
スキルや専門性
スキルや専門性の違いも、作業中に軋轢を生むことが報告されています。しかしこの軋轢はネガティブな意味ではなく、その後の生産性にポジティブな影響を与えることがわかっています。高い専門性の融合は、よりクリエイティブな解決へと導いてくれるということです。
以上の多様性の区別が大まかなところですが、さらに大枠に分けると二つのタイプの多様性に分けられます。
-
表面的な多様性
性別、人種などの見た目による表面的な多様性です。この特徴は観察することが容易であり、一般的に多くの人が他人と区別するために使っている特徴ではないでしょうか。
-
内面的な多様性
二つ目は、価値観やスキルなどの内面的な多様性です。この特徴は、観察することがより難しく見落としがちな部分であると思います。
表面的な一体感よりも内面的な一体感
組織において大きな影響を与えることが知られているのは、「表面的な一体感よりも内面的な一体感」です。
表面的なマッチングを目指すよりも、内面的なマッチングに重視した方が、組織にとっては高い効果が期待できるということです。ただし、スキルや専門知識などは多様性を担保した方が、より効果的な結果が出やすいでしょう。
また、スキルや専門知識の多様性においても、さらに2パターンに分けられます。
- 事務職などの創造性を要さないより単純な作業においては、チーム内のスキルや専門知識は似通っていればいるほど良いということが報告されています。
- より柔軟な作業が求められる場面においては、スキルや専門性は違っていればいるほど良いということがわかっています。この場合、経営陣などが当てはまるでしょう。
以上のことを大まかにまとめると、
多様性の利点(メリット):生産性を生む
専門的な知識やスキルの違いについての多様性がある場合が挙げられます。
多様性の欠点(デメリット):従業員満足度の低下や退職率が上がる
人種などの表面的な違いと価値感に多様性がある場合が挙げられます。
企業や組織において重要なのは、表面的な違いや価値観は統一し、専門的な知識やスキルについては多様性を持たせることです。
ドラクエに例えるなら、全員戦士のチームで固めるよりも、戦士、魔法使い、僧侶など、様々な職業を組み合わせながら、さらにそれぞれのメンバーの価値観は統一されていた方が良い、ということです。
「多様性」研究における問題点とこれからの展望
これまでの学術的研究は、「多様性」という言葉を一括りで語るよりも、より複雑なパターンに分けて考えていった方が建設的だということを明確に示しています。
しかし、まだまだ解明されていないことがたくさん残っています。例えば、スキルの多様性は単純作業ではあまり効果を発揮しないように、タスクの種類によって多様性の効果は違ってくるという点です。
しかし世の中に存在する様々なタスクにおいてパターンを一つ一つ調べていくというのは、測定できるだけのテクノロジーの発達が欠かせなく、まだまだ未知の領域です。けれど、現時点で明らかにされていない事実そのものは、多様性の効果の否定にはならない事も覚えておく必要があります。
多様性の組み合わせも、今までの研究では「性格」「価値観」「宗教」と一括りにされがちでした。しかし、より細かい組み合わせによって多様性の効果は変わってくるかもしれません。
例えば、性格に絞ってみても、内向性x外向性 の組み合わせと 個人主義x集団主義 の組み合わせは、それぞれ微妙に違った効果があるかもしれません。カトリックxイスラムの組み合わせと 仏教xイスラムの組み合わせでは、違った効果が現れるかもしれません。より複雑なパターンに分けて多様性の効果を解明することは、まだまだ時間がかかるでしょう。
一つ補足する点として、ミツカリの一つの利点は価値観を可視化する点にあります。ですので、御社から見て「こう言うタイプとこう言うタイプの組み合わせが上手くいった傾向が弊社にはある」や「こう言うタイプとこう言うタイプを試してみたい」というリクエストがあれば、その多様性も可視化することができます。
一般的な研究では、大きなくくりによる価値観の類似性が良いとされていますが、事業内容やチームの目指す方向によって多様性の効果も変わってきます。その場合においても、ミツカリを「多様性を発見するためのツール」としてカスタマイズして使用することも十分に可能です。
しかし、何を持って多様性と呼ぶのか、どの部分での多様性が欲しいのかは、人工知能が解決できる問題ではありません。この部分だけは、テクノロジーを使用する側がじっくり考えて定義しなければいけない部分です。
以上、多様性について今までの研究内容と今後の展望をざっくりとまとめました。
一つ確実に言えることは、「多様性」という言葉を用いる際には、どの多様性を指しているのかを意識することがより深い理解につながるのではないでしょうか。
出典:Mannix, E., & Neale, M. A. (2005). What differences make a difference? The promise and reality of diverse teams in organizations. Psychological Science in the Public Interest, 6, 31-55.