人材アセスメントを効果的に活用するための手法とは?
人材アセスメントとは、複数のシミュレーションや心理テストなどを通して対象者の行動や言動を客観的に観察し、社員の人材配置や昇進・昇格の適性を測定する評価手法です。
人材アセスメントが日本に導入され始めたのは1975年頃とされており、企業内での人材育成に活用され始めてから、現在で40年以上が経過しています。
これまでの人材アセスメントは、日系企業の日本人のみを対象としたものが主流でした。近年の少子高齢化に伴って企業内での人材不足やグローバル化が進み、人材アセスメントの基準もグローバル化が求められています。
人物評価と言っても内容は多岐に渡り、性格や価値観だけでなくテクニカルスキルやリーダーシップなど、評価する項目によって適した人材アセスメントの評価ツールが異なります。
人材アセスメントは「評価すること」が目的ではなく、人事業務に「活用すること」が目的です。今回は、人材アセスメントが実際にどのような人事業務に活用できるのかについてご説明します。
人材アセスメントを人事業務で効果的に活用しよう
企業経営において人事部門は、限りある人材資源をどのように調達して配分や異動などを行うかといった、意思決定の役割を担っています。
人事業務の意思決定を適切に行うには、職務や組織の状況だけでなく、社員一人ひとりの資質や能力を正しく把握しておかなければなりません。
効果的な人材アセスメントとは?
人材アセスメントは、評価の難しい社員一人ひとりの資質や能力を公平かつ客観的に評価できるため、人事業務の意思決定を行う助けになります。
人材を調達する際には、採用活動を行う際にあらかじめ応募者の資質や意欲、適性を測ることで、妥当な採否につながります。人材育成においても、個々の知識や能力・行動を測ることで、適切な人員の配置や昇進・昇格ができます。
評価対象者および上司や人事部が、人材アセスメントを通じて力量や課題を正しく把握することで、対象者の学ぶことに対する動機付けや目標設定になり、能力開発とキャリア開発につなげられます。
人材アセスメントには、正しい自己認識によって学びの動機や目標を与えて成長を実感させることによる、個人の成長を支援する効果もあるのです。
人材アセスメントの代表的な活用手法
人材アセスメントの活用手法として、代表的な手法を5つご紹介します。
- 人材採用
- 配置・異動
- 昇進・昇格
- 能力・人材発掘
- キャリアの節目研修
人材採用
人材採用の際に行われる採用選考では、知能検査や性格検査を活用して応募者が自社に合う人物かどうか、面接や適性検査を通して評価できます。グループディスカッションの様子を観察して、参加者のリーダーシップやプレゼンテーション能力を判定する手法も利用されます。
一般的な人材採用では、面接では好印象だった人材が入社後の印象が違ったり、入社した人材が社風になじめず早期退職してしまうなど、ミスマッチが原因で起きる問題が多発しています。
人材アセスメントを活用すれば、採用したい人材の能力や適性を数値化し、一度に大量の人材を公平かつ客観的に評価できるため、ミスマッチを防止できます。
配置・異動
配置・異動を決める際に重要な個人の適性は、対象者自身でも正しく理解していないことが多々あります。職場の上司や配置・異動の権限を持つ人事部門においても、個人の適性を正しく評価できていないことがあります。
人材アセスメントを活用することで、個人の適性を正確に評価し、職業ごとに数値化した類型的な性格や指向などと比較して、人材を適材適所に配置・異動できます。
昇進・昇格
営業成績の良い社員が管理職として優秀であるとは限りません。管理職への昇進や昇格を営業成績だけで判断すると、ミスマッチの原因となります。
昇進候補の人材が管理職に適任かどうかは、営業成績や直属の上司による人事評価に加えて、人材アセスメントによる評価を活用することで評価できます。
個人の性格を人材アセスメントで客観的に評価し、標準的な管理者の数値と比較して、管理職候補を選出します。選出された人材に対して、不足している課題や対人スキルのアセスメント研修を実施することで、適切な昇格者の選出だけでなく昇格不合格者への啓発も可能です。
能力・人材発掘
人材アセスメントの結果を分析すれば、適性や強み・弱みをさまざまな角度から把握できます。分析した結果をもとに配置・異動や研修を実施すれば、受講者のさらなる能力開発にもつながります。
人材アセスメントは、新規プロジェクトでプロジェクトマネジャーの人選に迷う場合にも活用できます。分析する職務の種類を問わないため、管理職志向が低いと言われる部門も含めた社員の中からも、適性のある人材を発掘できます。
異なるポジションでも活躍できる優秀な人材を判断したい場合、対象者の異動先に関連する数値を収集して分析することで、優秀な人材が異動先でも能力を発揮できるかが分かります。
キャリアの節目研修
キャリアの節目研修には、評価対象者について上司や同僚などから得た評価と対象者の自己評価を比較する、多面評価が頻繁に活用されます。
多面評価では、第三者の客観的な評価から自己の強みと課題を認識できるため、対象者の自己成長につながります。結果のレポートを対象者が読むだけでなく、上司がフィードバックのための面接を行うことも大切です。
人材アセスメントは人事業務で幅広く活用できる!
人材アセスメントとは、人の性格や価値観、スキルなどの抽象的なものを可視化し、幅広い人事業務に活用できる評価手法です。
人材アセスメントをより効果的に活用するためには、導入する前に自社で解決すべき業務の優先順位と、解決したい業務における問題を明確にしておくことが大切です。
管理職候補の適性検査や人材と職務のミスマッチ防止だけでなく、人材の成長や組織の効率的な運用にも役立つ人材アセスメントを導入し、限りある人材資源を有効に活用しましょう。