育成できる部分とできない部分を分けて考える
採用学の服部泰宏先生によると、採用において重要な見方に「入社してからトレーニングできる部分(人材育成)」と「トレーニングでは伸びない部分(採用)」に分けると有効だというアプローチがあります。
効率的な採用において特に注力して選別したいのは、育成では伸びにくい後者です。育成で伸びやすいものは、入社後の教育研修で訓練が可能であるからです。育成で伸びにくい中でも重要な概念のひとつにリーダーとしての素質がある「中核的自己評価(Core self-evaluation)」というものがあります。
今回は「中核的自己評価」が高い人の特徴や可能性について説明していきます。
中核的自己評価(Core self-evaluation)とは
中核的自己評価(Core self-evaluation)とは「自分自身についてどのように評価するかについての程度(無意識に行うレベルで)」です。
中核的自己評価において高い数値を持っている人ほど、自分自身に対してポジティブで良い評価をする傾向にあります。「自分はやればできる」などの肯定的な態度を無意識的に持ち合わせていることを意味しています。
中核的自己評価は、長年研究されてきた「自尊心」「自己自制感」「神経症傾向」の3つの心理的要素を足して、仕事や組織の中での色々な場面での影響力を予測するためにできた概念です。
- 自尊心(Self-esteem)
自分自身についての能力についてどれだけ肯定的に見られるか - 自己自制感(Locus of self-control)
自分の成果が周りの外的要因に左右されず、自分自身の力でコントロールできるか - 神経症傾向(Neuroticism)
どれだけ不安やストレスを感じやすいか
過去に行われてきた研究を統合すると、中核的自己評価の概念と仕事での満足感やパフォーマンスに、以下のような関係があることが分かりました。
(*数字は相関係数)
中核的自己評価は、仕事におけるパフォーマンスと満足感と関係していることが分かります。
中核的自己評価の高い人物はより難しい課題を自ら選ぶ傾向にあり、難しい課題を解くことによって、より高い満足感を得やすいという実験結果もあります。
モチベーションの高い人ほど、高いパフォーマンスを発揮し、高い満足感を得られることは直感的には簡単に理解できます。しかし、この研究結果から、具体的に「どのような」モチベーションが影響しあっているのかが分かってきます。
リーダー格に適した性格は育成できない部分のもの
核心的自己評価が高い人材にはなかなか巡り会えるチャンスがないかもしれませんが、チームのリーダー格となるポジションには必要でしょう。このような人物は、困難に対して前向きに立ち向かい、周りのメンバーのモチベーションも引き上げてくれます。
「核心的自己評価」は性格の一部であり、ある程度生涯通して変わらないと定義づけられています。無意識レベルでの自己評価の仕方とも言えるでしょう。
リーダー格となる人材を選ぶのならば、育成しようとするよりも、最初からリーダー的要素の高い人物を選べば良いことが分かります。その際には、中核的自己評価の高い人物を見極めることは一つのヒントとなり得ます。