ウーマノミクスとは?女性活躍推進が求められる背景とは?
ウーマノミクスとは、女性が活躍できる社会づくりを進め、 経済の活性化につながるように取り組んでいく社会を意味する言葉です。ウーマノミクスは、女性の活躍による経済の活性化だけでなく、女性が働き手としても消費者としても社会をけん引する経済のあり方のことを意味します。
ウーマノミクスによる女性活躍推進は、少子高齢化による労働人口の減少が進む現代日本において、企業だけでなく社会全体としての急務となっています。
みずほ総合研究所の人口及び労働力調査によると、2016年で6,648万人の労働人口は2030年時点で6,000万人を割り込む予測があり、労働力人口が毎年減少していく予測であることが示されています。
女性の労働力人口は、2012年時点で約2,700万人だったのが2018年では3,000万人を超え、男性の約3,800万人に追いつく勢いで年々増加しています。人手不足が続くこれからの企業活動において、女性の活躍が重要になることは間違いないでしょう。
出典元『総務省統計局』労働力調査(基本集計)平成30年(2018年)平均(速報)結果の概要
女性の労働人口増加は増加しているものの、有期契約の割合が男性の21.6%に対して35.6%と高く、女性労働者の3人に1人は非正規雇用という状態です。
出典元『総務省統計局』労働力調査(基本集計)平成30年(2018年)平均(速報)結果の概要
ウーマノミクスによる女性の活躍推進を進めるためには様々な課題があり、時短制度やテレワーク制度などの社内制度の整備はもちろん、組織風土や社員の意識も改善する必要があります。
内閣府による調査では、女性が活躍できる・職場環境にするために必要なこととして男女ともに「育児・介護との両立についての職場の支援制度が整っていること」が1位として挙げられており、社内制度の整備が大切なことがわかります。2位は「職場の上司・同僚が、女性が働くことについて理解があること」とされており、組織風土や社員の意識改善が必要であることがわかります。
ウーマノミクスを進めるために解決すべき課題は、人事部だけでなく男性社員と女性社員、会社全体が一丸となって取り組んでいく必要があります。
今回の記事では、ウーマノミクスに取り組んだ企業の事例を、ウーマノミクスに取り組むに至った背景や取り組みの内容、取り組んだ結果に分けてご紹介します。
ウーマノミクスに取り組んだ企業の事例とは?
ウーマノミクスや女性の活躍推進に取り組んだ企業の事例を4つご紹介します。
- ノバレーゼ株式会社の事例
- 東京急行電鉄株式会社の事例
- サイボウズ株式会社の事例
- 拓新産業株式会社の事例
1.ノバレーゼ株式会社の事例
ノバレーゼ株式会社は、ブライダル事業 (婚礼プロデュース部門・婚礼衣裳部門・レストラン部門)やレストラン特化型事業を営む企業です。
ウーマノミクスの取り組みに至った背景
ノバレーゼ株式会社では、結婚式場の運営という業務の性質上、現場の第一線は土日祝日・夜間の業務が中心となる場合が多く、育児中の社員に対して時間の融通が効きやすい部門への異動や業務内容の変更といった対応を行っていました。
創業から一定期間が経過して社員の平均年齢が高まるに従い、結婚・出産というライフステージを迎える女性社員が増加し、出産後に復職する社員も増加しました。
配置転換を中心とした従来の方法では、復職後の社員全員に対応することが難しくなり、復職する社員の「現場の第一線で働きたい」という希望にも添えないことから、復職後の環境作りや働き方について、ウーマノミクスに取り組むことが決まりました。
ウーマノミクスの取り組み内容
ノバレーゼ株式会社では、子育て両立支援と働き方支援の両面からウーマノミクスに取り組みました。
子育て両立支援としては、以下の取り組みを行いました。
- 子どもの運動会や冠婚葬祭など、土日祝日であっても休みを取得できる事由を明確化し、業務の繁忙期にも休みを取りやすい仕組みを導入した。
- 短時間勤務制度の利用期間を小学校卒業まで延長した。
働き方支援としては、以下の取り組みを行いました。
- ライフステージに合った働き方の実現を目的に、期間の制限なく正社員のまま1日の勤務時間を4時間から8時間まで1時間単位で選択できるフレックス制度を導入した。
- 転居を伴う異動を行わない制度の対象を管理職まで広げた。
- 有給休暇の取得を促進して休暇の計画を社員各自が年に1回立案し、四半期に1度のペースで部門ごとの有給休暇取得率をランキング形式で発表した。
ウーマノミクスに取り組んだ結果
ウーマノミクスに取り組んだ結果、社員からは働き続けるイメージを持ち易くなったという声が上がり、離職者が減少して産休・育休からの復職者がほぼ100%になりました。
有給休暇の取得促進によって、取り組みの開始前と比べて有給休暇の取得率が約2倍になっただけでなく、社員が仕事の進め方を工夫したり、休みが取りやすいよう協力し合う姿勢が生まれるなど、生産性の向上や職場環境の改善のメリットも生まれました。
2.東京急行電鉄株式会社の事例
東京急行電鉄株式会社は、鉄軌道事業や不動産事業を営む企業です。
ウーマノミクスの取り組みに至った背景
東京急行電鉄株式会社では、社員の女性比率が少なく、顧客の多くが女性である消費者向け事業を手掛けているビジネス特性を考慮すると、女性の戦力としての活躍が不十分でした。
女性活躍推進に力を入れるため、ダイバーシティーを企業戦略の1つとして掲げ、ウーマノミクスに取り組むことが決まりました。
ウーマノミクスの取り組み内容
東京急行電鉄株式会社では、子育て両立支援と働き方支援の両面からウーマノミクスに取り組みました。
子育て両立支援としては、以下の取り組みを行いました。
- 出産休暇・育児休業中の社員への、社内イントラネットにアクセスできるPCの貸与や、病児保育支援・学童保育費用の補助、復職前の人事部との面談制度を導入した。
- 男性の育児休業取得を促すため、休業中の経済的不安の軽減を目的に、最大43日間賃金を支給する制度を導入した。
働き方支援としては、以下の取り組みを行いました。
- 勤務時間の柔軟な調整を目的として、始業時刻を7時30分から10時30分まで30分ごとに選択し、繰り上げ又は繰り下げることができる「スライド勤務制度」を導入した。
- 年次有給休暇の半休取得(午前・午後)や2時間単位で利用できる時間休暇を導入した。
ウーマノミクスに取り組んだ結果
ウーマノミクスに取り組んだ結果、働き方の見直しや仕事と育児の両立が進み、直近3年間に入社した総合職の離職率が男女ともに0%になりました(2014年度末)。
男性の育休取得者数は、2011年7月から2012年6月までの1年間では1名(平均取得日数9日)だけでしたが、2014年7月から2015年6月までの1年間では16名(平均取得日数73日)に増加しました。
3.サイボウズ株式会社の事例
サイボウズ株式会社は、グループウェアの開発・販売・運用を営む企業です。
ウーマノミクスの取り組みに至った背景
サイボウズ株式会社では、長時間労働が日常化して2005年時点での離職率は28%にまで増加し、離職が止められない状態にありました。
給与の引き上げや業務転換などでは離職が止まらなかったことから、人事制度の理念を「100人いれば100通りの働き方があってよい」という方針に変更し、ウーマノミクスだけでなく会社全体の働き方の見直しに取り組むことが決まりました。
ウーマノミクスの取り組み内容
サイボウズ株式会社では、子育て両立支援と働き方支援の両面からウーマノミクスに取り組みました。
子育て両立支援としては、以下の取り組みを行いました。
- 妊娠が判明したらいつでもスタートできる、男女とも取得可能な最大6年の育児休暇制度を導入した。
働き方支援としては、以下の取り組みを行いました。
- ワークスタイルに合わせて残業の有無、短時間勤務、週3日勤務など、働き方を選択できる選択型人事制度や、時間・場所の制約を無くしたウルトラワーク制度を導入した。
- 社員が自分らしい個性的なキャリアを積むために副業を自由化し、申請も不要にした。
- 退職後6年間は復帰可能な「育自分休暇」制度を導入した。
ウーマノミクスに取り組んだ結果
ウーマノミクスに取り組んだ結果、2015年の離職率は4%にまで減少し、社員の女性比率が約半数にまで増加しました。
出産後の社員の復職率は100%になり、女性活躍の進んだダイバーシティ企業として企業ブランディングにも寄与し、様々なメディアで取り上げられたことで優秀な人材確保にもつながりました。
4.拓新産業株式会社の事例
拓新産業株式会社は、建設機材のレンタル・リース業を営む企業です。
ウーマノミクスの取り組みに至った背景
拓新産業株式会社では、新卒採用の合同説明会で自社のブースに学生が1人も訪れなかったというショッキングな経験から、魅力ある「一流の中小企業」と認知してもらうため、経営トップがリーダーシップをとってウーマノミクスに取り組むことが決まりました。
ウーマノミクスの取り組み内容
拓新産業株式会社では、子育て両立支援と働き方支援の両面からウーマノミクスに取り組みました。
子育て両立支援としては、以下の取り組みを行いました。
- 「育児休業・介護休業ガイドブック」を作成し、育児短時間勤務を15分単位で設定できるようにするなど、社員一人ひとりの事情に対応できる柔軟な制度にした。
働き方支援としては、以下の取り組みを行いました。
- 完全週休二日制や有給休暇完全消化が社内に浸透するまで、社長が朝礼で呼びかけたり、有給休暇の取得率が低い社員に個別に呼びかけを行うなど、経営トップが中心となって休暇を取得しやすい職場環境づくりに取り組んだ。
- 顧客から時間外の急な依頼を受けなくてすむよう、顧客との事前の打ち合わせやスケジュールの確認を徹底した。
- どうしても休日に対応しなければいけない場合のために、子育て中の者を除く管理部門を含めた社員全員に、月1回土曜出勤して水曜日に代休を取ってもらう年間ローテーションを組み、完全週休二日制を実現させた。
ウーマノミクスに取り組んだ結果
ウーマノミクスに取り組んだ結果、残業ゼロを達成し、有給休暇も完全消化に近い状態になりました。
取り組みの成果によって「福岡県子育て応援宣言企業」に登録され、2004年には「福岡県男女共同参画企業」など様々な賞を受賞して働きやすい企業であると広く認知された結果、新卒の応募者数が毎年増加しています。
働きやすい企業として多くの学生から注目されることは、人材獲得で有利になるだけでなく自社で働く社員の誇りにもなり、離職率の低下につながっています。
ウーマノミクスの推進は自社の成長につながる!
ウーマノミクスとは、女性が活躍できる社会づくりを進め、 経済の活性化につながるように取り組んでいく社会を意味する言葉です。
ウーマノミクスによる女性活躍推進は、少子高齢化による労働人口の減少が進む現代日本において、企業だけでなく社会全体としての急務となっています。
ウーマノミクスには多くの企業が取り組んでおり、様々な成功事例が様々なメディアで公開されています。しかし日本企業全体で見ると、ウーマノミクスに取り組んでいる企業はまだ少数派で、女性の活躍推進には多くの課題が残っています。
労働人口の減少が進む現代日本において、会社がこれから成長していくためには、女性の活躍が欠かせません。女性が自分らしく働ける社会をつくるためにも、会社全体でウーマノミクス推進に取り組んでみてはいかがでしょうか。