アンダーマイニング効果とは?モチベーション低下を防ぐ方法について

社員のモチベーション低下を引き起こすアンダーマイニング効果とは?

人のモチベーションを生み出す「動機づけ」とは、やると褒められる・報酬がもらえる、やらないと罰を受けるなどが原因となる「外発的動機づけ」と、好奇心や興味などから自らやりたいと考える「内発的動機づけ」の2種類に分けられます。

会社を継続的に成長させるためには、社員に内発的動機づけを身につけてもらうのが効果的です。しかし、間違ったアプローチをしてしまうと、内発的動機づけが外発的動機づけに変化してしまう「アンダーマイニング効果」を引き起こしてしまう可能性があります。

心理学者リチャード・ドシャーム氏の「自己原因性」という概念によると「人は自分で自分の行動を決めていると知覚している時には内発的に動機づけられるが、他者から統制されていると知覚している時には外発的に動機づけられる」とあります。行動に対して他者から報酬をもらうことで、行動の目的が「報酬をもらうこと」に変わってしまい、報酬なしではやる気が出なくなってしまうのです。

今回の記事では、アンダーマイニング効果の意味や定義、研究事例や防ぐ方法についてご紹介します。

アンダーマイニング効果とは?意味や定義、研究事例や防ぐ方法について

アンダーマイニング効果の意味や定義とは?

アンダーマイニング効果とは、内発的に動機づけられた行為に対して外発的な動機づけを行うことによって、モチベーションが低下する現象を意味する言葉です。

アンダーマイニング効果の具体例としては「業務を効率化しようと自発的にマクロを組んだら、評価されて昇給した。最初は経験を活かしてみたかっただけだったが、昇給につながるなら頼まれてからやった方が評価が上がると思い、自発的には行わなくなった」といったケースが挙げられます。

アンダーマイニング効果が起こる原因とは?

アンダーマイニング効果は、個人がやりがいを感じて自発的に行っていた行為に対して報酬を与えた結果、行為の目的が「やりがい」から「報酬」に変わってしまい、報酬なしではモチベーションが低下してしまうことによって起こります。

人には「自分の行動は自分で決めたい」と望む自己決定の欲求や「できないことをできるようになりたい」と望む有能への欲求があります。アンダーマイニング効果は「自己決定感」や「有能感」の低下によって引き起こされるのです。

アンダーマイニング効果が起こる原因としては、物質的な報酬以外に以下のようなものが挙げられます。

  • 罰の脅威
  • 締め切りの設定
  • 監視
  • 競争
  • 評価

アンダーマイニング効果を実証した事例とは?

アンダーマイニング効果は、心理学者エドワード・L・デシ氏とマーク・R・レッパー氏が1971年に行った実験によって判明した現象です。

実験の被験者である大学生には、内発的に「チャレンジしてみたい」と感じるソマパズルが用意されました。ソマパズルとは、いろいろな形をした7種類のブロックをつなぎ合わせて犬や飛行機などの形を作る、実験当時に流行していた立体パズルです。

アンダーマイニング効果の実験は、大学生を2つのグループに分け、3つのセッションで行われました。

  • 第1セッション:どちらのグループにも普通にパズルを解いてもらう
  • 第2セッション:Aグループにはパズルが解けるたびに1ドルの報酬を与え、Bグループには普通にパズルを解いてもらう
  • 第3セッション:どちらのグループも普通にパズルを解いてもらう

すべてのセッションにおいて、パズルが2問終了した時点で試験官は8分間部屋を離れ、試験官がいない間は実験室にある他のパズルや雑誌に触れても良いと告げました。実験では、この8分間の間にどれほどの時間ソマパズルに従事していたかで、内発的な意欲の指標としました。

実験の結果、何の報酬も与えていなかったBグループは、ソマパズルに触れる時間に変化はありませんでした。一方、報酬を与え得られたAグループは、ソマパズルに触れる時間が少なくなりました。

実験の結果から、Aグループの学生はソマパズルを解くことが楽しかったはずなのに、金銭的な報酬を与えられた結果「ソマパズルは報酬を得るための手段にすぎない」と感じるようになり、内発的な動機が失われてパズルへのモチベーションが低下したことが分かりました。

アンダーマイニング効果を起こさないための対策とは?

アンダーマイニング効果を起こさないようにするためには、相手の自己決定感や有能感を失わせないように、物質的な報酬を期待させず「他者から統制されている」と感じさせないことが大切です。しかし、アンダーマイニング効果を起こさせないためとはいえ、企業では社員の頑張りに対して報酬を与えないわけにはいきません。

アンダーマイニング効果への対策としては、物質的な報酬ではなく言語的な報酬(期待や賞賛の言葉)を与える方法が効果的とされています。言語的な報酬は、さまざまな研究の結果、物質的な報酬に対して自己決定感や有能感を低下させないことが明らかになっています。

社員の内発的な動機による行動に対して、さらなるモチベーションの維持・向上を図りたい場合は、金銭的な報酬ではなく言語的な報酬を与えると良いでしょう。

アンダーマイニング効果とエンハンシング効果の関係とは?

エンハンシング効果とは、アンダーマイニング効果とは逆に、言語的な報酬(外発的動機づけ)によって内発的な意欲が高まる現象を意味する言葉です。

エンハンシング効果は、信頼している人からの期待や賞賛を求めて、内発的動機づけが高まることによって起こります。エンハンシング効果の具体例としては「幼い子どもが母親に褒められたくておもちゃを片付ける」「部下が憧れの上司に評価されたくて求められた以上の成果を出す」といったケースが挙げられます。

企業におけるマネジメントでエンハンシング効果を起こすためには、部下と上司の人間関係が重要になります。「嫌いな上司を見返してやる」という動機で行動できる人は少なく、母数としては「尊敬する上司に認められたい」という動機で行動する人の方が多いためです。

エンハンシング効果による社員のモチベーション向上や生産性向上を起こすためには、上司と部下の性格や価値観の相性を重視した配置・配属を行いましょう。

弊社サービス「ミツカリ」では、AIによって会社全体や部署ごとの価値観と人材の価値観を可視化し、採用・配属におけるマッチ度を測りミスマッチを防ぐことができます。アンダーマイニング効果を防止し、エンハンシング効果を起こすためのマネジメントツールとして、是非導入をご検討ください。

アンダーマイニング効果に注意しつつ、エンハンシング効果を起こすマネジメントを目指そう!

アンダーマイニング効果とは、内発的に動機づけられた行為に対して外発的な動機づけを行うことによって、モチベーションが低下する現象を意味する言葉です。

アンダーマイニング効果は、個人がやりがいを感じて自発的に行っていた行為に対して報酬を与えた結果、行為の目的が「やりがい」から「報酬」に変わってしまい、報酬なしではモチベーションが低下してしまうことによって起こります。

企業で社員のモチベーションマネジメントを行う際には、内発的動機づけが済んでいる社員にアンダーマイニング効果を起こしてしまわないよう注意しつつ、エンハンシング効果によって外発的動機づけを内発的動機づけに変化させられるよう取り組みましょう。

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