人材ポートフォリオの分析方法とは?分析結果を人事業務に活用しよう

人材ポートフォリオによる分析の方法と、分析結果の活用方法とは?

前回までの記事では、人材マネジメントの手法の一つである人材ポートフォリオについて、意味や作り方、軸の設計方法などを解説してきました。

人材ポートフォリオ自体の理解や軸の作り方などは大切な要素ですが、完成した人材ポートフォリオを使ってどのような分析を行い、分析結果を実際の業務にどう落とし込むかが、人材ポートフォリオをマネジメントに活かす上で最も重要な要素です。

今回の記事では、人材ポートフォリオを使った分析の方法や、分析結果の活用方法と注意点についてご説明します。

人材ポートフォリオによる分析の方法とは?

人材ポートフォリオを使って分析を行うためには、2つの軸によって分類した4つの領域から、各領域に属する自社の社員の人数を数えておく必要があります。

4つの領域に属する人数を数えた後に行う分析は、大きく3つのステップに分けられます。

  1. 各領域に必要な人材の数を計算する
  2. 人材過多・過小な領域を判断する
  3. 各領域の人材の属性を明確にする

1.各領域に必要な人材の数を計算する

人材ポートフォリオによる分析を行う上で基礎となるのが、各領域に必要な人材の数を計算することです。単に今必要な人材の数を計算するだけでなく、今後の事業計画や戦略をもとに、各領域に必要な人数を計算することが大切です。

必要な人材の数を計算するコツとしては、具体的に「何年後のモデル」として考えることで、各領域に必要な人材の数と比率がわかりやすくなります。

各領域の人材の数は流動的なため、多少あいまいになってしまうのは仕方ありませんが「組織全体で人材が何人足りない」という状況から一歩進んで「どのような仕事を担当するどの領域の人材が何人足りないか」を可視化してくれるのが人材ポートフォリオの強みなので、必要な人材の数はなるべく具体的に考えていきましょう。

2.人材過多・過小な領域を判断する

各領域に必要な人材の数が計算出来たら、人材過多・過小な領域を判断します。

各領域の人材の数が余っているのか不足しているのかという判断は、人材ポートフォリオによる分析の結果を実際の業務に落とし込む際、非常に重要になります。

人事戦略を考える上では、人材過多な領域は自社の強み、人材過小な領域は自社の弱みであるといえます。

3.各領域の人材の属性を明確にする

各領域の人材の過不足が判断出来たら、各領域の人材の属性を明確にします。

自社にどの領域の人材が今どれだけいるかが分かれば、どんな人材を獲得・育成すべきか、どんな人材が現状必要でないかなど、人事戦略が立てやすくなります。

自社にとって本当に必要な人材を判断し、実際の人事業務に役立てるために、各領域の人材がどのような属性を持つのかをしっかり定義しましょう。

人材ポートフォリオの分析結果の活用方法とは?

人材ポートフォリオによる分析ができたら、分析結果を実際の業務に活用していきます。

人材ポートフォリオの分析結果は、人材の採用や育成、雇用形態などの人事業務を行う上で、非常に参考になります。しかし、人材ポートフォリオによる分析結果だけを頼りに配属や異動を行うと、社員の離職やモチベーション低下につながることがあるため、注意が必要です。

人材の採用や育成、雇用形態などの人事業務に活用する

人材ポートフォリオの分析結果は、人材の採用や育成、雇用形態などの人事業務に役立てることができます。

人材ポートフォリオの軸を、自社の業務に必要な知識や技能の「レベルの高低」「特殊性の高低」に設定した場合を例に挙げると、人材は以下の4種類に分けられます。

  • 専門職の正社員(レベル高、特殊性高)
  • 派遣社員や契約社員(レベル高、特殊性低)
  • 一般職の正社員(レベル低、特殊性高)
  • パートタイマーやアルバイト(レベル低、特殊性低)

専門職の正社員(レベル高、特殊性高)

自社特有の業務に精通した高度なスキルを持つ人材は、業務の特殊性ゆえに自社での育成が欠かせないため、専門職の正社員として高待遇を用意して、長い目で見た育成が必要です。

派遣社員や契約社員(レベル高、特殊性低)

一般的なスキルを高いレベルでこなす人材は、自社で育成するよりも高度なスキルを既に持った人材を人材市場で調達し、雇用期間を定めた独占的な契約を結ぶ方法が効率的です。

自社特有の業務に適性を示す派遣社員や契約社員がいれば、正社員登用を検討するとよいでしょう。

一般職の正社員(レベル低、特殊性高)

レベルは低くとも自社特有の業務を行う人材は、業務の多くを担う主な働き手として、緩やかな賃金の増加を前提とした正社員としての契約が想定されます。

長期の経験や個人の努力によって高度なスキルを獲得した正社員には、昇給や昇進などの報酬を与えることが大切です。

パートタイマーやアルバイト(レベル低、特殊性低)

専門性もスキルも低い人材であれば、時給制のパートタイマーやアルバイトに任せた方がよいでしょう。

日々の業務をこなす中で、パートタイマーやアルバイトの従業員が自社特有の業務に精通したり高度なスキルを身につけることがあれば、社員登用を検討するとよいでしょう。

人材ポートフォリオによる分析の注意点とは?

人材ポートフォリオの分析と分析結果を活用する際の注意点として、人材の配属や異動は社員個人の評価やキャリアパスなどに大きくかかわるため、社員一人ひとりの価値観を加味して戦略を立てなければ、離職につながる危険があります。

「社内の事情で仕方なくやりたくない仕事をやっている」「自分の頑張りを正当に評価してもらえていない」などの不満を社員が感じてしまわないように、採用時・入社時の価値観のすり合わせや、社員への継続的なヒアリングなどを行い、ミスマッチを防ぐ必要があります。

弊社サービス「ミツカリ」では、AIによって会社全体や部署ごとの価値観と人材の価値観を可視化し、採用・配属におけるマッチ度を測りミスマッチを防ぐことができます。

人材ポートフォリオの分析結果を人事業務に活用しよう!

人材ポートフォリオによる分析を行えば、自社にどんな人材がどれだけの人数いるかが可視化でき、様々な人事業務に役立ちます。

人材ポートフォリオの分析結果は、人材の配属や異動、採用戦略や雇用形態などを考える際に非常に参考になります。しかし、人員の過剰や不足があるからといって、従業員を無理に領域変更しようとするとミスマッチが発生し、離職につながる危険があることには注意が必要です。

人材ポートフォリオの分析結果だけを頼りに人事業務を行うのではなく、社員一人ひとりとのコミュニケーションを大切にすることで、マネジメント手法としての人材ポートフォリオの効果を最大限活用することができるでしょう。

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