早期離職の対策は人事の重要な課題となっている
人材採用市場では企業間の競争が激化しており、目標人員を確保できない企業が増えてきています。人員確保に苦しむ企業は、採用活動の目的が「人員を埋めること」に集中してしまい、内定者や新入社員へのフォロー体制がおろそかになりがちです。
内定者や新入社員へのフォローがおろそかになると浮かび上がってくるのが、早期離職の問題です。早期離職とは、一般的に入社から3年以内の離職のことで、大卒の新入社員の早期離職率は直近30年で平均3割を超えています。
早期離職の問題は長らく改善されておらず、人事業務における重要な課題となっています。早期離職が企業に与える損失は、採用活動費や人件費、教育研修費などの金銭的なコストに加えて、残った社員のモチベーション低下や連鎖的な離職につながる危険もあり、決して無視できるものではありません。
早期離職を防止するためには、早期離職の発生理由をきちんと調べて、自社の採用や教育のプロセスを改善する必要があります。今回の記事では、早期離職の対策方法について詳しくご紹介します。
早期離職の対策方法とは?採用活動の段階ごとの対策について
早期離職の対策について考える上で、求人募集から定着に至るまでを採用活動と定義して、採用活動を以下の3つのフェーズに分けて考えていきます。
- 採用選考(内定前)
- 内定者フォロー(内定後入社前)
- 配属(入社後)
1.採用選考(内定前)
早期離職の対策方法を考える上で、採用選考の段階で意識すべきことは「求職者とのマッチング」です。入社後に長く活躍してもらうためには、仕事の内容や待遇だけでなく、自社の社風と求職者の価値観といった定性的な部分でのマッチングが欠かせません。
自社と求職者のマッチングを図る上でポイントになるのが「ネガティブな情報をどれだけ公開すべきか」という点です。ネガティブな情報を発信するのは勇気が要るとは思いますが、ネガティブな情報を正直に説明するとマッチングの精度が向上することは、アメリカで40年以上研究・実証されてきた「RJP理論」で証明されています。
RJP理論とは、ポジティブな情報しか説明されないと「オイシイ話には裏があるのではないか?」と求職者がかえって不安になるため、ネガティブな情報についても説明した方が企業と求職者双方にとって不満の無い雇用関係を結べるとする理論です。
RJP理論については「RJP理論とは?ネガティブな情報も伝えることで入社後のミスマッチを防ごう!」の記事で詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。
2.内定者フォロー(内定後入社前)
早期離職の対策方法を考える上で、内定を出した後に意識すべきことは「内定者フォロー」です。求職者を集めて内定を出したとしても、内定辞退されてしまっては意味が無いため、入社が決まるまでの内定者に対するフォローは非常に重要です。
内定者フォローの目的は、内定者が入社に向けて抱いている不安の払拭です。リクルートキャリアの調査によると、新卒学生の75%以上、4人のうち3人の学生が「入社にあたって不安に感じていることがある」と答えています。
出典元『リクルートキャリア』「2019年3月度(卒業時点)内定状況」就職プロセス調査(2019年卒)
入社にあたって不安に感じていることの内容については、1位が「職場の人間関係」で2位が「仕事の忙しさ」、3位が「自分の能力について」で4位が「職場環境や雰囲気について」となっており、3位以外は会社の内部にある定性的な情報が挙げられています。
社内の定性的な情報に対する不安が上位の大半を占めたという調査結果から、内定者の不安の根源は「内定先の会社で働いている自分が想像できない」ことが原因であると言えます。
内定者が感じている入社への不安を解消するためには、不安の根源である「入社後どうなるのか」を具体的にイメージできるようにするため、現役社員との交流や入社体験などの内定者フォローが効果的な施策となります。
内定者フォローについては「内定者フォローの目的とは?嬉しかったと言ってもらえる内容とは?」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
3.配属(入社後)
早期離職の対策方法を考える上で、入社後に意識すべきことは「配属」です。どれだけ万全に入社前のマッチングを行ったとしても、配属先の仕事内容や人間関係が合わなければ早期離職につながる可能性があるため、注意が必要です。
入社後の離職理由は多岐にわたるため、すべての理由に対策するのは非常に困難ですが、早期離職の理由は配属先とのミスマッチが原因である場合が多いです。
新入社員の配属先の決定は、人事担当者にとって採用活動と同じくらい重要な課題です。新入社員の性格や価値観にマッチした配属を実現できれば、早期離職の防止だけでなく、仕事に対するモチベーションの向上も期待できます。
早期離職への対策は早い段階から取り組もう!
早期離職への対策は、入社後のマネジメントだけでなく、入社前の採用選考や内定者フォローなどの段階から始める必要があります。
早期離職を未然に防ぐためには、新入社員に「こんなはずじゃなかった!」と思われる要素をひとつずつ潰していくことが大切です。採用活動のゴールを「入社してもらうこと」ではなく「定着してもらうこと」に設定し、早期離職の対策に取り組むようにしましょう。
採用活動の段階が進めば進むほど、早期離職や内定辞退による損失は大きくなります。早期離職の対策に取り組む際には、募集や選考の段階での見極めを重視することで、早期離職の防止だけでなく採用コストの削減にもつながるため、可能な限り早い段階での見極めをオススメします。
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