人材ポートフォリオの作成事例とは?軸の作成方法は目的ごとに異なる

人材ポートフォリオとは?軸の設計が成功のポイント!

現在の日本の労働市場は、売り手市場によって優秀な人材の獲得競争が激化しており、多くの企業で人材不足が問題になっています。人材不足の対策として、従来では主要な働き手として見られてこなかった女性や、生産年齢人口でなくなった65歳以上の人材、派遣社員などの様々な働き手が注目されています。

様々な働き手が活躍できる方法として、裁量労働制や時短勤務、リモートワークやパラレルキャリアなど様々な働き方が推奨されており、人事担当者は人材の働き方によってマネジメント方法を変えなければなりません。

人材ポートフォリオとは、売り手市場の影響で人材獲得が困難になり、慢性的な労働力不足から多様な人材の活用が求められる中で注目されている、様々な事情を抱えた人材の働き方をサポートする人材マネジメントの手法です。

人材ポートフォリオを設計する際には、自社の業務や事業戦略などにあった軸を選ぶことが重要ですが「自社で重要になる要素の明確化はできたが、具体的な軸の決め方が分からない」という方は多いと思われます。

今回の記事では、実際に企業で設定されている軸の事例をもとに、人材ポートフォリオの軸の作り方をご紹介します。

人材ポートフォリオの軸とは?実際の事例を4社ご紹介!

人材ポートフォリオの軸とは、人材ポートフォリオを設計する際に決める、自社の人材を評価する上で基準となる2つの要素です。

今回紹介する4社は、様々な軸をもとに人材ポートフォリオを設計し、独自の基準で人材を定義しています。業種も戦略も違う企業が違う軸を設定するのは当然ですが、自社の業務の特徴を活かした設定を行っているという点では、全ての企業が共通しています。

  1. A社の事例(創造-運用、組織-個人)
  2. B社の事例(恒常的な通常業務-繁閑の激しい業務、専門性高-専門性低)
  3. C社の事例(ルーティン-ノンルーティン、コグ二ティブ-マニュアル)
  4. D社の事例(知識・技能レベル高-低、知識・技能特殊性高-低)

1.A社の事例(創造-運用、組織-個人)

A社の事例では、既存の人材を「価値の創造を仕事とする人材群」と「既存の仕組みの運用を仕事とする人材群」の2群に分けてから、さらに「個人ベースで仕事をする人材」と「組織としての仕事がメインとなる人材」に区分し、人材を4領域に分類します。

「創造-運用」は「変革-維持」や「狩猟民族型-農耕民族型」などの言葉でも表現され、多くの企業で企業活動の維持・拡大に必要な要素として、人材ポートフォリオの軸に設定されています。

「組織-個人」は、ほとんどの業務を分類する際に使うことができる汎用性の高い要素として、人材ポートフォリオの軸に設定されていることが多いです。

人事戦略を考える上で、組織としての仕事と個人ベースの仕事では活躍できる人物像が大きく異なるため「組織-個人」の軸は重要な参考になります。

2.B社の事例(恒常的な通常業務-繁閑の激しい業務、専門性高-専門性低)

B社の事例では、会社の業務を「恒常的に発生する通常業務」と「繁閑の激しい業務」の2つに分けてから、さらに仕事に求められる「専門性の高低」で区分し、人材を以下の4領域に分類します。

  • 日常業務を継続的にこなす社員(恒常的に発生する通常業務-専門性低)
  • 会社のコア業務を専門性を生かし担当する社員(恒常的に発生する通常業務-専門性高)
  • 単発的な補助業務を行う社員(繁閑の激しい業務-専門性低)
  • 特定分野の専門性を持ち期限付きで働く社員(繁閑の激しい業務-専門性高)

B社のような人材ポートフォリオは、人材の雇用形態を考慮する上で重要な参考になるだけでなく、代わりの人材を用意する難易度が分かりやすくなるため、人材の評価や採用にも活用できます。

3.C社の事例(ルーティン-ノンルーティン、コグ二ティブ-マニュアル)

C社の事例では、会社の業務を「ルーティン」と「ノンルーティン」の2つに分けてから、さらに「コグニティブ」と「マニュアル」で区分し、人材を4領域に分類します。

「ルーティン-ノンルーティン」のルーティンとは、恒常的かつ継続的な運用が必要な仕事のことで、ノンルーティンとは、一つひとつの問題に対して個別のアプローチが必要な仕事のことです。

「コグニティブ-マニュアル」のコグニティブとは、パソコンを用いる分析や設計といった仕事のことで、マニュアルとは、体を動かす営業や接客といった仕事のことです。

C社のような人材ポートフォリオは、比較的大きな枠で人材を分類できるため、業務の多様性が大きい事業を展開している企業で設計されることが多いです。

4.D社の事例(知識・技能レベル高-低、知識・技能特殊性高-低)

D社の事例では、会社の業務に求められる知識や技能を「レベルの高低」で分けてから、さらに「特殊性の高低」で区分し、人材を以下の4領域に分類します。

  • 専門職の正社員(レベル高、特殊性高)
  • 派遣社員や契約社員(レベル高、特殊性低)
  • 一般職の正社員(レベル低、特殊性高)
  • パートタイマーやアルバイト(レベル低、特殊性低)

D社のような人材ポートフォリオは、業務に必要とされる知識や技能の質で人材を分類できるため、人材獲得の際に適切な雇用形態を考える上で役に立ちます。

実際の事例を参考に人材ポートフォリオの軸を考えよう!

人材ポートフォリオの軸とは、人材ポートフォリオを設計する際に決める、自社の人材を評価する上で基準となる2つの要素です。

人材ポートフォリオを設計する際には、自社の業務や事業戦略などにあった軸を選ぶことが大切です。基準となる軸を決める際は、なんとなくで決めた軸をもとに人材ポートフォリオを作っても、意味のある分析・運用には繋がりません。分類の基準となる2軸には、自社にとって重要な要素を設定することが大切です。

人事業務の効率化を目指して、実際の企業で使われている事例を参考にして、自社に合った人材ポートフォリオの軸を考えてみてはいかがでしょうか。

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