ワークライフバランスの推進に活用できる働き方改革の施策とは?

ワークライフバランスの推進には働き方改革の施策が活用できる!

ワークライフバランスとは、若者の経済的な自立や誰もが意欲と能力を発揮できる社会を目指して2007年に政府が策定した、仕事と生活の調和を意味する言葉です。

ワークライフバランスの目的は「仕事の時間を削減してプライベートの時間を大事にすること」と思われがちですが、厳密に言えば正しくありません。ワークライフバランスの本来の目的は、過重労働問題の解決や残業時間の削減だけではなく、仕事と生活を共に重視して調和を図ることです。

ワークライフバランスを実現するためには、各企業での取り組みが必要不可欠です。政府はワークライフバランス実現の取り組みを推進していますが、企業がワークライフバランスへの取り組みを実施するかは任意となっているため、なかなか推進が進んでいないのが現状です。

ワークライフバランスの実現に向けて、政府は働き方改革の名のもとに法案を整備したり、認定制度や助成金制度などの制定を行っています。

今回の記事では、ワークライフバランスの推進に活用できる働き方改革の施策や助成金制度、認定制度などをご紹介します。

ワークライフバランスの推進に活用できる働き方改革の施策とは?

自社でワークライフバランスを推進する際には、働き方改革の一環として国が行っている施策や助成金制度、認定制度などが活用できます。

ワークライフバランスの推進に活用できる働き方改革の施策や助成金制度、認定制度などをご紹介します。

ワークライフバランスに関係する働き方改革関係法律の整備とは?

働き方改革の関連法案が2018年6月29日に参議院本会議で可決され、ワークライフバランスに関係する8つの法律が改正されました。

改正された法律の中から、特にワークライフバランスと直接関係するものをご紹介します。

  1. 中小企業の時間外労働に対する賃金割増の猶予措置廃止
  2. 一定日数の年次有給休暇の取得義務化
  3. 時間外労働の上限規制

1.中小企業の時間外労働に対する賃金割増の猶予措置廃止

2018年の参議委本会議の法改正によって、中小企業に対する猶予措置が2023年4月1日から廃止となり、月60時間以上の時間外労働に対して50%増しの割増賃金を支払う義務が生まれました。

割増賃金の義務化によって、中小企業でも残業時間が適正に管理されるようになり、ワークライフバランスの推進が期待されています。

2.一定日数の年次有給休暇の取得義務化

2018年の参議委本会議の法改正によって、有給休暇を取得していない従業員に対して、会社側が日程を指定して最低5日の有給休暇を取得させる義務が2019年4月から生まれました。

最低5日の有給休暇取得義務化によって、有給休暇の消化率向上によるワークライフバランス推進の効果が期待されています。

3.時間外労働の上限規制

2018年の参議委本会議の法改正によって、残業時間の上限超過に対する措置が行政指導のみであったのが、法律による罰則が定められました。

従来の36協定に関する厚生労働省告示では、残業時間の上限は「原則月45時間以内かつ年間360時間以内」とされていましたが、法的な強制力はなく、労使合意による「特別条項(特別条項付36協定)」を設ければ無制限の残業が可能でした。

今回の法改正によって、事実上無制限だった残業時間の上限が法律で管理されるようになり、ワークライフバランス推進の効果が期待されています。

ワークライフバランスに関係する育児休業法・介護休業法の改正とは?

育児休暇・介護休暇に関する改正育児・介護休業法が平成29年3月に公布され、同年10月から施行されました。

改正育児・介護休業法では、育児休暇に関して以下のような改正がなされました。

  • 最長2歳まで育児休業、育児給付金給付が可能
  • 育児休業などの制度告知、育児目的休暇の導入の努力義務
  • 有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
  • 子の看護休暇の取得単位の柔軟化
  • 育児休業などの対象となる子供の範囲の拡大

育児に関する改正では、女性の活躍推進や男性の子育て参加推進によって仕事と子育てを両立しやすくすることで、ワークライフバランスの実現を推進しています。

改正育児・介護休業法では、介護休暇に関して以下のような改正がなされました。

  • 介護休暇の取得単位の柔軟化
  • 介護のための所定労働時間の短縮措置
  • 介護のための所定外労働の免除(残業の免除)

介護休暇に関する改正では、所定労働時間の短縮やフレックスタイム制度の導入、終業時刻の繰り上げや残業の免除などによって仕事と介護を両立しやすくすることで、ワークライフバランスの実現を推進しています。

ワークライフバランスの推進に活用できる助成金制度とは?

働き方改革の施策の中には、ワークライフバランスの推進に活用できるさまざまな助成金制度があります。

ワークライフバランスの推進に活用できる助成金制度の一例として「時間外労働等改善助成金」の5つのコースをご紹介します。

  1. 時間外労働上限設定コース
  2. 勤務間インターバル導入コース
  3. 職場意識改善コース
  4. 団体推進コース
  5. テレワークコース

1.時間外労働上限設定コース

時間外労働上限設定コースとは、時間外労働の上限設定や長時間労働の見直しに取り組む企業に対して、労働時間短縮の施策に要した費用の一部を助成するコースです。助成金額は、1企業当たり最大200万円です。

2.勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバルとは、従業員の終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間を設ける制度です。

勤務間インターバル導入コースとは、過重労働の防止や長時間労働の抑制に向けた勤務間インターバルの導入に取り組んだ際に、導入に要した費用の一部を助成するコースです。助成金額は、1企業当たり最大50万円です。

3.職場意識改善コース

職場意識改善コースとは、所定外労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進などを図る事業主に対して、取り組みに要した費用の一部を助成するコースです。助成金額は、1企業当たり最大150万円です。

4.団体推進コース

団体推進コースとは、時間外労働の削減や賃金の引上げに向けた取り組みを実施した事業主団体に対して、取り組みに要した費用の一部を助成するコースです。助成金額は、1事業主団体あたり上限額500万円です。

5.テレワークコース

テレワークコースとは、在宅勤務やサテライトオフィスなどのテレワーク導入に取り組む事業主に対して、テレワーク導入に要した費用の一部を助成するコースです。助成金額は、1人当たり最大20万円、1企業当たり150万円です。

テレワークコースについては「テレワーク導入に使える助成金制度の種類と受給条件、受給金額とは?」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

ワークライフバランスの推進に活用できる認定制度とは?

厚生労働省は、働き方改革に関連するさまざまな認定制度を設けています。

認定基準を満たすと、企業HPや求人広告などに各認定制度のロゴを掲載でき、ワークライフバランス推進に力を入れているという企業ブランディングに活用できます。

ワークライフバランスの推進にかかわる認定制度をいくつかご紹介します。

  1. 次世代育成支援対策推進法における認定制度(くるみん)
  2. 女性活躍推進法における認定制度(えるぼし)
  3. 安全衛生優良企業公表制度

1.次世代育成支援対策推進法における認定制度(くるみん)

次世代育成支援対策推進法における認定制度(くるみん)とは、子育てサポートやワークライフバランスの推進などに積極的な企業が行動計画を定め、一定の基準を満たした場合に厚生労働大臣が認定する制度です。

くるみんについては「くるみんとは?税制優遇だけじゃない!認定企業の様々なメリット」の記事で詳しくご紹介いますので、あわせてご覧ください。

2.女性活躍推進法における認定制度(えるぼし)

女性活躍推進法における認定制度(えるぼし)とは、女性の活躍推進の取り組み状況が優良な企業に、厚生労働大臣から与えられる認定制度です。えるぼし認定は、女性活躍推進法で規定されている一定の基準を満たした企業の中で、より優良と判断された場合にのみ与えられます。

えるぼしについては「えるぼし認定制度とは?制度の意味と認定を受けるメリットとは」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

3.安全衛生優良企業公表制度

安全衛生優良企業公表制度とは、労働安全衛生に関して積極的な取り組みを行っている企業を認定して、優良企業として企業名を公表する制度です。

安全衛生優良企業公表制度は、優良企業として社会的な認知度を高められるメリットを提供し、多くの企業に安全衛生に関する取り組んでもらうことを目的とした制度です。

ワークライフバランスを推進して競合他社との差別化につなげよう!

ワークライフバランスとは、若者の経済的な自立や誰もが意欲と能力を発揮できる社会を目指して2007年に政府が策定した、仕事と生活の調和を意味する言葉です。

ワークライフバランスを実現するためには、企業による努力が必要不可欠です。自社でワークライフバランスを推進する際には、働き方改革の一環として国が行っている施策や助成金制度が活用できます。

ワークライフバランスの推進に取り組む上では、人事職は通常業務に加えて、新しい情報に対して常にアンテナをはっておく必要があります。ただでさえ忙しい業務の中での情報収集は大変ですが、新しい情報にいち早く対応することは、ワークライフバランスの推進だけでなく競合他社との差別化にもつながり、自社の今後を支えていく柱になるでしょう。

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