日本のワークライフバランス推進状況とは?
ワークライフバランスとは、若者の経済的な自立や誰もが意欲と能力を発揮できる社会を目指して2007年に政府が策定した、仕事と生活の調和を意味する言葉です。
内閣府によるワークライフバランスの推進サイトの調査によると、男性よりも女性の方が「仕事と生活の両立が図れていると思う」と回答した割合が多い一方で、まだ半数程度しか実現できていないことがわかります。
出典元『「仕事と生活の調和」推進サイト』企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書(平成31年3月)
ワークライフバランスの実現への取り組みは、人手不足や人材獲得難が続く現在の日本において、社員の定着率向上やエンゲージメント向上を図る上で非常に重要な課題です。
厚生労働省の調査によると、ワークライフバランスの実現に積極的な企業ほど売上が高く、離職率の低下や雇用の増加につながっている傾向があるという結果が出ています。
出典元『厚生労働省』労働生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた企業の取組
ワークライフバランスは、社員の定着率向上だけでなく、事業の成長においても重要なのです。企業側からの取り組みで解決できる問題点については「ワークライフバランスの問題点とは?推進するための取り組みについて」の記事で詳しくご紹介しますので、あわせてご覧ください。
今回の記事では、ワークライフバランス推進における日本特有の問題点についてご紹介します。
ワークライフバランス推進における日本特有の問題点とは?
ワークライフバランス推進における日本特有の問題点としては、以下のようなものが挙げられます。
- 専業主婦を希望する女性が多い
- 男性が家事や子育てをする時間が少ない
1.専業主婦を希望する女性が多い
ワークライフバランス推進における日本特有の問題点として、専業主婦を希望する女性が多い点が挙げられます。
厚生労働省の調査によると「結婚(事実婚含む)したあとは専業主婦になりたいと思いますか」という質問に対して「そう思う」と答えた女性は8.2%で「どちらかといえばそう思う」と答えた女性は26.0%という結果が出ています。
厚生労働省の調査結果を見ると、全体で見れば「そう思わない」派の方が多くなっていますが、女性の3人に1人は専業主婦志向がある傾向が読み取れます。
同調査では、専業主婦になってほしい(なりたい)と思う理由として「女性には家事や子育てなど、仕事をするよりもやるべきことがあると思うから」が1位に挙げられています。
厚生労働省の調査結果を見ると、専業主婦を希望する女性が多い背景には、男女の役割分担意識にもとづく偏見や先入観が大きく影響していることが分かります。
日本では「男が働いて家計を支え、女が家事や子育てを行う」といった、男女の役割分担意識が根強く残っています。日本で男女の役割分担意識の改善が進んでいない理由については「アファーマティブアクションが日本で遅れている理由と問題点とは?」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
本心から望んでいるわけではない女性もいるであろう専業主婦志向は、仕事と家庭の両立を目指すワークライフバランスにおいて、日本特有の問題点であると言えます。
2.男性が家事や子育てをする時間が少ない
ワークライフバランス推進における日本特有の問題点として、男性が家事や子育てをする時間が少ない点が挙げられます。
国際社会調査プログラム(ISSP)が2012年に実施した「家族と性役割に関する意識調査」によると、日本は世界的に見て男性の家事参加率が低いことがわかりました。
出典元『Newsweek日本版』日本は世界一「夫が家事をしない」国
男性の家事参加率が低い理由としては、仕事時間の長さが原因として挙げられます。同調査からは、日本における男女の仕事時間と家事時間の差の大きさが見て取れます。
出典元『Newsweek日本版』日本は世界一「夫が家事をしない」国
男性の平均仕事時間と女性の平均家事時間を見ると、どちらも週間50時間前後となっています。男性は仕事で、女性は家事で手一杯という実態があるのに「男性は家事に協力すべき」「女性は働くべき」など、どちらか一方の負担を増やそうとしても無理が生じます。
日本におけるワークライフバランスの問題点を解決するためには、男女の役割差をなくそう・小さくしようという、男女共通の意識や社会全体の価値観の改革が必要なのです。
ワークライフバランスの推進は他社との差別化につながる!
ワークライフバランスとは、若者の経済的な自立や誰もが意欲と能力を発揮できる社会を目指して2007年に政府が策定した、仕事と生活の調和を意味する言葉です。
日本でワークライフバランスを推進する上での問題点として、男女の役割分担意識の強さがあります。「男が働いて家計を支え、女が家事や子育てを行う」といった価値観が根強く残っており、男性の家事参加や女性の社会進出の妨げとなっています。
日本でワークライフバランスを実現するためには「男性は家事に協力すべき」「女性は働くべき」などのようにどちらか一方に負担を強いるのではなく「男女の役割差をなくそう・小さくしよう」という、男女共通の意識や社会全体の価値観の改革が必要なのです。
企業が自社のワークライフバランス推進に取り組む際には、男女の差別や格差、役割分担意識の解消を施策に組み込むことで、ワークライフバランスの実現だけでなく競合他社との差別化にもつながるでしょう。