ポテンシャル採用のメリットやデメリットとは?新たな母集団形成にも

人手不足だからこそポテンシャル採用を

人材市場は景気の影響を受けやすく、これまでにもバブル崩壊やリーマンショックにより市場がガラッと急変することがありました。リーマンショックの時期では「人を雇う余裕がない」ということで、一件の求人に対して応募者が殺到する時代でしたが、現在では全く逆のことがおきています。「とにかく募集を出しても人が集まらない」というこの状況は、特に中小企業に深刻な問題となって現れています。

少子化などによる労働人口の減少についても深刻な問題となっています。政府としても仕事と家庭を両立する「ライフワークバランス」や、国外の人材を採用する「外国人採用」、定年後や結婚や出産などの離職しやすい人材でも働きやすい環境を整備する「再雇用」や「女性活躍推進」など、人材に対する様々な施策を打ち出しています。

スキルや経験が豊富な「即戦力人材」の獲得の難易度も上がっています。就職活動や転職活動での人気企業ランキングに掲載されている企業であればまだしも、認知度の低いBtoB企業や中小企業などでは、そもそも「即戦力となりそうな人材からの応募がない」ことも起こっています。そのため、人材を獲得するためには、人事戦略の見直しが必要不可欠です。

「即戦力」でなく「長期的な視点で利益をもたらす人材」を、「専門性が高い人材」でなく「フレキシブルな人材」へと目を向けることで採用のハードルをぐっと下げることができます。そうした採用戦略は「ポテンシャル採用」と呼ばれ、多くの企業での導入例があります。

未経験者を歓迎する求人を行う際にも「ポテンシャル」を採用基準におくことの有効性について紹介します。

採用における「ポテンシャル」とは?

ポテンシャルとは「潜在能力」の意味で、いまだ目に見えていない能力をさす言葉です。よく言い換えられる言葉として「伸びしろ」や「センス」というものがあり、長期的に見たときの成長率がポイントとなる概念です。新卒や第二新卒、若手社員などによく使われます。

ポテンシャル採用のポイントについて

ポテンシャル採用とは「募集している職種におけるスキルや経験を問わず、人材の潜在能力と将来性を評価基準とした採用」のことです。

新卒や第二新卒、20代前半〜半ばの転職者をターゲットとして行われることが多く、採用にあたって社内での教育体制の整備が大切です。

「ポテンシャル採用」を実施する大きな目的は「採用の裾野を広げること」です。スキルがあり、経験も豊富な即戦力人材は採用難易度が高く、人材確保が難しい昨今ではリスクの高い人事戦略です。必要な人手をスピーディーに確保するためには「若手のポテンシャル」に注目し、業界・職種の未経験者を受け入れることが有効な対策になります。

面接での見極めでは、直接的には評価対象とならない「前職の経験」や「スキル」についても、ポテンシャルの評価では一部重要なことがあります。ポータブルスキルと呼ばれる論理的思考力やコミュニケーション能力など「どこの職場でも需要なスキル」が備わっているのかを知るには、これまでの「働きぶり」に注目する必要があります。

ポテンシャル採用を実施するメリットとは

ポテンシャル採用は単に「採用のハードルを下げた」ものではありません。

若手人材を積極的に採用することで「企業の若返り」が期待できることは大きなメリットとしてあげられます。特に人材獲得競争で苦戦を強いられている中小企業などでは、技術の継承が大きな課題となっていますが、若手人材の確保によりこの問題の解決が期待されます。

論理的思考力やコミュニケーション能力など「社会人として必要な能力」を持った人材の確保も期待できます。特に新卒採用だと求職者は大手志向が強い傾向が見られますが、転職者層では大手志向が弱まります。そのため、新卒採用では採用が厳しい人材もポテンシャル採用により可能になるケースもあります。

ポテンシャル採用のデメリットとは

逆にデメリットとして考えられることもあります。

ひとつは「人材開発コスト」です。即戦力人材ではこのコストが少額ですみやすいのですが、業界・職種未経験者を積極的に採用すると、当然ながら教育体制を整えておく必要が生じます。

教育体制の整備に付随して「ちゃんと長く働いてくれるか」という問題もあります。新卒社員の3年以内の離職率は3割を超えるとよく言われますが、勤務先とのミスマッチ以外にも、なかには「辞め癖」などを持ったクセの強い人材がいることもたしかです。また、前職での習慣が中途半端に染み付いていて、前職の仕事のやり方にこだわって周囲に悪影響を及ぼすケースもあります。

ポテンシャル採用で注意すること

「人材を獲得したいか」というビジョンを明らかにすることが大切です。

「ポテンシャル」という言葉は良くも悪くも抽象的ですので、ポテンシャル採用を実施する際は、求めている能力がどういうものなのかを具体的に設定する必要があります。

「ポテンシャル」を具体化することが大切

「ポテンシャル採用」は20代若手人材の採用で用いられやすい傾向にあり、他業種からの母集団形成ができる可能性があります。「人材の流動化」が注目されている昨今では重要な採用手法だと言えるでしょう。

しかし「ポテンシャル」と言っても抽象的な概念です。どんな能力や価値観が自社で必要なのか、その能力や価値観をどのように評価するのかを明確にしなければ、「長期的な視点で活躍する人材」を採用することは難しいです。

まずは自社でどのような能力や価値観が必要なのか、担当者や関係者内で意思疎通を行い、教育体制を整えることができるのか、ポテンシャル採用を導入するのであればどのような選考工程で何を評価するのかを明確にしましょう。

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