メンター制度の事前研修とは?メンティーの心構えやスキルも知ろう

メンター制度マニュアルの概要

日本の企業の約半数が導入していると言われているメンター制度は、離職率低減のための一手段としても用いられています。

政府としてもメンター制度の導入促進を行っており、人材確保等支援助成金では、メンター制度を導入して、離職率を低下させた場合に助成金を受給できます。無償でメンター制度導入にむけたマニュアル「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」を公開しており、女性社員の活躍推進だけでなく、メンター制度そのものを導入する場合に必要な準備などが詳細に記載されています。

女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」には運用ルールやメンターとメンティの選定方法、事前研修の実施などについて記載されています。

今回はメンター・メンティの双方に必要な事前研修の実施について、研修を行う目的や重要性、どんな心構えやスキルが必要なのかについて説明します。

メンター制度の運用ルールの概要

まずメンタリングで話した内容は口外しないこと、メンタリングに関することは業務時間内に行うこと、などを最低限のルールとして決めておきます。

それ以外では次の事項などを決めておく必要があります。

  • メンタリングの実施期間
  • メンタリングで話し合う内容
  • メンタリングの実施のタイミングや頻度など

メンターとメンティの選定

ミスマッチの生まれにくい、気軽に相談できるペアを作るために、メンターとメンティそれぞれの選定方法を策定します。

マッチング方法には、人事部などがメンターとメンティのバックグラウンドを考慮しながら組み合わせを指定する「アサインメント方式」と、メンティにメンターのリストを提示し、メンティの希望に応じて選定する「ドラフト会議方式」の2つがあります。

事前研修の実施

事前研修とは、制度開始にあたりメンター・メンティに「どのような心構えやスキルを持っておく必要があるか」を説明するための場です。本記事では、「事前研修の実施」に焦点を当て、説明していきます。

メンター・メンティには、どんな心構えとスキルが必要なのか

メンター・メンティ共に求められることは、当然のことながら、メンター制度の概要、自社がメンター制度を導入しようとしている背景、制度活用にあたり何を目的としているのかを理解する必要があります。

人材育成が目的であれば、面談内容も業務内容やキャリアプランなどの内容になります。一方で離職率の低下が目的であれば、面談内容は仕事で悩んでいることだけでなく、家庭で悩んでいることを業務面からどのようにサポートできるかを考えることが必要になります。

目的が明確でなければ、メンターも適したアドバイスができないだけでなく、メンティもどんな内容を相談したら良いのかがわからなくなります。メンターに相談したのに的を得ていない答えしか返ってこないのであれば、メンター制度そのものが形骸化してしまう恐れがあります。

メンターに求められる心構え・スキルとは

メンターにのみ求められる心構えやスキルとは、どのようなものでしょうか。メンター制度におけるメンターの役割を考えると、自然と必要な心構えやスキルが見えてきます。

  1. メンターがメンティの成長を促進すること
  2. 相手を受けとめる傾聴力

メンターがメンティに関わる上で、「メンティの成長を促進すること」と「相手を受け止める傾聴力」が最も重要な項目だと言えます。よりメンターの心構えやスキルを理解してもらうためにも、メンターの事前育成研修は有効です。

研修内容の一例をご紹介します。

  • テキストでの座学
    • メンター制度の概要
    • メンター制度導入の目的について
    • メンターの役割について
  • グループディスカッションのテーマ一例
    • メンターになることのメリット
    • メンターになることへの不安
    • 良いメンターと悪いメンターとは
  • トレーニングの内容一例
    • 相手を受けとめる傾聴力向上のためのトレーニング
    • 共感・承認・質問の仕方
    • メンティーが話しやすくなる聴き方
    • アクティブリスニング
    • メンタリング面談の方法
      ※座学だけでなくロールプレイングも有効

研修ではテキストでの座学だけでなく、グループディスカッション、ロールプレイングなどを取り入れ、受講者であるメンターが自ら考え、能動的に参加できる内容にすると良いでしょう。

メンティに求められる心構えとスキルとは

メンティにも、メンターと同じく、メンター制度導入の目的を理解してもらい、どんな些細なことでも相談できる相手がメンターであることを伝えていきます。

伝える場としては、入社時のオリエンテーションが最も適しているでしょう。メンター制度の紹介と活用方法についてレクチャーし、メンター制度の意義付けを理解してもらいます。

オリエンテーションの1度きりでは、制度の形骸化に繋がる可能性があります。定期的にメンティのみを対象として、メンタリングの効果や本人が特定されない範囲で事例の共有を行うことが有効でしょう。

メンター・メンティの歩み寄りが重要

メンター・メンティへの事前研修に、時間も人的リソース割けない場合は、外部業者に委託するのも1つの手です。外部委託する場合は、全てを業者に丸投げするのではなく、自社における事前研修の目的を明確にし、メンター・メンティに何を身につけさせる必要があるのか、要点を押さえておくことが重要です。

メンター制度を上手く活用するためには、メンター・メンティがメンター制度運用の意義や目的を理解し、双方が歩み寄る姿勢を持つことが重要です。双方がメンター制度への理解を深めることで、制度の形骸化を防ぎ、本来のメンター制度の導入目的-若手社員の定着や育成など-を達成することに繋がります。

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