社員のモチベーションは生産性や離職率に大きく影響する!
社員のモチベーションが高い状態では、業績アップや生産性の向上など、企業にとって良い効果があります。しかし、現実として社員のモチベーションが高い会社はあまり多くありません。
ダイヤモンド・オンラインが全国の男女会社員に行ったアンケート調査によると「今働いている会社は仕事に対してやる気が出ない会社」であると回答した社員が63%と、過半数を超える結果が出ています。
出典元『DIAMOND online』なぜ「やる気」が出ないのか?会社が知る由もない社員のホンネ大調査
ベイン・アンド・カンパニーとプレジデント社の共同調査によると「やる気に溢れる」社員の生産性は、単に「満足している」社員と比べて約2.3倍高いという結果が出ています。
出典元『PRESIDENT Online』”3人に1人”の不満社員を奮起させるには
モチベーションの高い社員は生産性が高くなる一方で、モチベーションの低い社員は生産性が低い、離職率が高いなど、企業にとってさまざまなデメリットがあります。
労働人口の減少による人手不足に悩む現代日本では、社員一人ひとりの生産性向上や離職防止が重要な課題となっています。社員のモチベーションマネジメントは、単に社員にやる気を出させるためだけでなく、生産性向上や離職防止による人手不足問題の緩和・解消方法として注目されているのです。
社員のモチベーションマネジメントを行う上で重要になるのが、社員一人ひとりへの動機付けの方法です。人が仕事をする上で、どんなことが満足する要因となり、逆にどんなことが不満足になる要因となるのかを明確にした理論として「ハーズバーグの二要因理論」という動機付け理論があります。
今回の記事では、ハーズバーグの二要因理論についてご紹介します。
ハーズバーグの二要因理論とは?動機付け要因と衛生要因の違いや、モチベーションマネジメントへの活用方法について
ハーズバーグが二要因理論を提唱した背景とは?
ハーズバーグの二要因理論とは、動機付け理論のうち、仕事においてどんなことが満足する要因となり、逆に不満足となる要因であるのかを明確にした理論です。
ハーズバーグの二要因理論は、アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏(Frederick Herzberg)の「How do you motivate your employees?(邦題:モチベーションとは何か?)」という論文において、19世紀に発表されました。
ハーズバーグの二要因理論が提唱された19世紀当時は、産業化が急速に進み、個人の生産効率を最大限に発揮することが重要と考えられるようになっていました。ハーズバーグ氏は個人の生産効率を上げる上で、仕事への態度を決める要因は何なのか、仕事への満足度やモチベーションを決める要因は何なのかを研究し始めたのです。
ハーズバーグの二要因理論とは?
「ハーズバーグの二要因理論(Herzberg’s theory of motivation)」とは、人事労務管理に必要な要素を「動機付け要因(Motivator Factors)」と「衛生要因(Hygiene Factors)」の2種類に分けて考えるべきだとする理論です。
ハーズバーグ氏は人のモチベーション要因を研究する上で、調査の方法にインタビュー形式を選択し、インタビューから抽出された5000もの具体的な動機付けに関する内容を「達成すること」や「承認されること」などの抽象的な要素に落とし込みました。
動機付け要因とは?
動機付け要因とは「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進・向上」といった、仕事の満足度に関わる要素です。
動機付け要因は、促進要因とも呼ばれる「ないからといってすぐに不満が出るものではない」ものの「あればあるほど仕事に前向きになる」要素です。
衛生要因とは?
衛生要因とは「給与」「福利厚生」「経営方針・管理体制」「同僚との人間関係」「監督(上司との関係など)」といった、仕事の不満に関わる要素です。
衛生要因は、不満足要因とも呼ばれる「整備されていないと社員が不満を感じる」ものの「整備していても満足につながるわけでない」要素です。
動機付け要因と衛生要因の関係性とは?
動機付け要因と衛生要因は相反する概念ではなく、互いに足りない部分を補い合うような関係になっています。
動機付け要因である「達成」や「承認」は、仕事の満足度を高める上で重要な要素ですが、衛生要因が満たされていない状態では動機付け要因だけ満たしても効果がありません。給与に不満がある状態で仕事の成果を褒められたとしても、誰だって「言葉はいいから給料を上げてくれ」と思うでしょう。
衛生要因である「給与」や「福利厚生」は、不足・悪化すると不満が溜まる原因となる要素ですが、求める水準を超えて改善してもあまり影響がなくなります。やりがいや将来性を感じられないような仕事では、待遇に不満が無くても「今の仕事を続けていていいのだろうか」という不安感やモチベーションの低下から、離職や転職につながるケースがほとんどです。
社員のモチベーションマネジメントを行う上では、職務満足の反対が職務不満足ではない点に注意が必要です。職務に満足してもらおうとして不満要因を徹底的に解消したとしても「不満がなくなる」のであって「満足する」わけではないのです。
社員の職務満足度を上げるためには、動機付け要因と衛生要因のどちらか一方だけ満たせばよいというわけではなく、衛生要因における問題を解決した上で動機付け要因を満たす必要があるのです。
ハーズバーグの二要因理論をマネジメントに活用する方法とは?
ハーズバーグの二要因理論を社員のモチベーションマネジメントに活用するためには、動機付け要因と衛生要因が社員に対してどのような影響を与えるかを知っておく必要があります。
動機付け要因が与える具体的な影響とは?
動機付け要因は、簡単に言えばいわゆる「やりがい」と呼ばれる要素で、生産性に直接関わる要因です。
「やりがいのある仕事です!」という募集がブラック企業の決まり文句のような扱いをされているように、悪く言えば「やりがい搾取」に関わる要因ですが、動機付け要因が満たされていない職場では優秀な人材はやりがいを求めて離職してしまうケースが多くあります。
衛生要因が与える具体的な影響とは?
衛生要因は、不満足要因とも呼ばれる「きちんとしていないと社員の意欲が落ちる」要因です。
給与や福利厚生が満たされていない状態では、いくらやりがいのある仕事であっても、ほとんどの人は生活のために離職を選びます。ただし、衛生要因は社員の不満を防ぐ効果はありますが、多少給与が低くてもやりがいのある仕事をしたがる人が多いように、一定の水準さえ満たしていれば衛生要因よりも動機付け要因が重要になる点に注意が必要です。
ハーズバーグの二要因理論を活用して社員のモチベーションマネジメントを行おう!
ハーズバーグの二要因理論とは、仕事における「満足」と「不満足」につながる要因が、それぞれ全く別の原因であるとする理論です。
給与や福利厚生といった「衛生要因」は「不満を解消する」だけで「満足する」ための要素ではなく、逆に達成や承認といった「動機付け要因」は「満足する」だけで「不満を解消する」ための要素ではない点に注意が必要です。
社員のモチベーションマネジメントを行う上では、動機付け要因と衛生要因のどちらか一方だけ満たせばよいというわけではなく、衛生要因における問題を解決した上で動機付け要因を満たす必要があるのです。
現代の日本は、労働人口減少による売り手市場で人材確保が難しくなり、人手不足が深刻な問題となっています。人手不足を補うためには、競争の激しい人材確保だけでなく、既存人材の離職防止や生産性向上が重要な課題となります。
人材の離職防止や生産性向上のために、社員のモチベーションマネジメントを行う上で、ハーズバーグの二要因理論を活用してみてはいかがでしょうか。