内定者の入社前研修に労災は適用される?事故のリスクを理解しよう

内定者の入社前研修中、もし事故が発生してしまったら?

内定者フォローの重要な施策の一つに、入社前研修があります。

入社前研修は、企業戦略や実業務について事前にレクチャーしつつコミュニケーションをとることができ、会社にとっても内定者にとっても互いの理解を深められる施策として、多くの企業で実施されています。

内定者フォローで入社前研修や見学会を行う際に企業が留意すべきなのが、就業とみなされた場合に発生する労災保険にまつわる事項です。

内定者フォロー時には、製造業での工場見学時における事故や、故意ではないものの備品の破損による損害など、様々なトラブルが発生する可能性があります。人事担当者として、内定者に労災は適用されるのか、適用されない場合はどうすべきかを知っておく必要があります。

今回の記事では、内定者の入社前研修中に事故や損害が発生した場合に、労災が認定される条件や、認定されない場合の注意点などについてご説明します。

内定者の入社前研修中に労災保険が適用される条件とは?

入社前研修中の事故に労災保険が適用されるためには、内定者が「労働者」としてみなされるかが焦点になります。

内定者が労働者としてみなされる条件や、労働者としてみなされない場合に事故が起こってしまった場合の対処例を確認していきましょう。

労災保険の適用範囲とは?

入社前研修と一口に言っても、研修の内容や形態はさまざまです。

研修対象者の学生が労働者とみなされるケースでよくあるのが、短期アルバイトや長期インターンシップのような、一時的でも会社の指揮命令下で働く場合です。

賃金を支払うほどの労働の実体がない、単なる職場見学や職場体験程度であれば、労働関係にはないため労働者とみなされないと考えられます。

多くの企業で中・長期的に実施されている研修のケースでは、会社からの指示による強制参加かどうかがポイントとなります。強制の場合、基本的には研修の時間は労働時間とみなされ、賃金が生じると同時に、労災保険も適用範囲になります。

研修中に労災保険の適用が認められる条件とは?

内定者が労働者としてみなされる条件は、以下の3つになります。3つの条件は賃金を支払う条件にも通ずるものとなります。

  1. 研修生に支払われる賃金が一般の労働者並みの賃金であり、少なくとも『最低賃金法』の規定を上回っていること
  2. 実際の研修内容が、本来業務の遂行を含む研修期間中であること
  3. 研修が使用者の指揮命令のもとに、契約上の義務として行われているものであること

労災保険が適用されない場合の注意点とは?

労災が適用されない場合でも、企業として注意しておくべきポイントとして、雇用保険があります。雇用保険は、学生は被保険者に該当しませんが、次の3つの場合は例外となります。内定者に対象となる学生がいる場合は、留意しておきましょう。

  1. 卒業見込み証明書を有する学生が、在学時から卒業後まで継続して勤務する場合
  2. 休学中、または一定の出席日数を課程修了の要件としない学校に在学する学生
  3. 大学の夜間学部に在学している学生

労災適用範囲外になると、企業に法的な責任は発生しませんが、それでも、企業側としては事故の可能性(リスク)を考慮した研修を構築する姿勢が求められます。

完全にリスクを回避したいのであれば、極論としては研修をしない、もしくは一般的な研修(賃金が発生しない内容)にとどめるという方法があります。しかし、内定者を4月から即戦力として活用するため、入社前に研修を済ませておきたい企業は多いでしょう。

企業のニーズと学生のスキル向上の両方をかなえるためには、時と場合に応じてアルバイトの労働契約を締結するといった形をとり、労災保険の適用を認めることが理想的です。さらに補償を厚くするような、損害保険による対応を行うとより安全です。

特に労災の認定が得られないケースでは、さまざまな事態を考慮し、損害保険会社の傷害保険や生命保険などへの加入を検討することを強くオススメします。

入社前研修中の事故が労災認定されるか否かの具体例とは?

入社前研修中の事故が労災認定されるかどうか、具体的な例を挙げてご紹介します。

倉庫の見学中に荷物が崩落して学生が負傷したら?

会社の研修中に倉庫内を見学していたところ、突然段ボールが崩れ落ちて学生が負傷した場合、学生側は治療費を請求できるのでしょうか?

労災申請では、負傷者が労働者かどうかがポイントです。民法上では、損害賠償請求を行うことが考えられます。民法上の請求の場合は、負傷した際の原因が会社側の過失があったことを学生側が立証しなければなりません(段ボールの配置に問題があったなど)。民法上での損害賠償請求は、会社側の職場環境と安全にかける会社の配慮のレベルなども理解する必要があるため、ハードルはかなり高いと考えられます。

民法上の請求とは別に、労働者災害補償保険(労災)を申請するという方法もあります。労災が適用される場合は、民事上の立証は必要なく支払いも確実と言われています。

研修中の事故に対しては、行政の解釈は、研修生が労基法9条の「労働者」に当たるかどうかという観点から、いくつかの判断が示されており、労働者として認められた造船会社で実習中の商船学校の生徒の例など、さまざまな事例・判決がされています。

研修中に学生が企業でなんらかの損害を出したら?

会社の研修中に、学生が第三者にけがを負わせたり、機械を故障させてしまった場合はどうなるのでしょうか?

企業の指導の状況等にもよりますが、基本的には学生個人に賠償責任が発生すると考えられます。

学生が「学研災付帯賠償責任保険(「付帯賠責」)」に加入していれば補償を受けることができますが、大学の正式な授業の一環として行われるインターンシップなどに限定されます。

第三者にケガを負わせた場合は、実質的に企業と学生に使用関係があり、企業の入れ先の営業活動行為中であると客観的に判断される場合には、企業側が「使用者賠償責任」を問われるケースが想定されるため、注意が必要です。

挙げた事例はいずれにしてもケースバイケース、時と場合によります。企業と学生との契約内容や研修時の状況によるため、一概に「これだからこう」という確証的な話は難しい領域です。研修内容と保険の適用範囲に関しては、事前に企業の顧問弁護士や専門家に確認しておくことをオススメします。

参照URL『ロア・ユナイテッド法律事務所』入社前研修中の事故と労災認定
参照URL『日本の人事部』人事のQ&A 新卒内定者の事故について

内定者の健康と安心を守るのも企業の役目
企業の資質が問われる

内定者への入社前研修で事故が起きた際、法的には学生が労働者とみなされるかどうかで労災の適用が決まりますが、怪我や事故が発生しそうであれば事前に対策しておく真摯な対応が、内定者の入社動機につながります。

企業として一緒に働く人材をどのように遇するかは、企業にとって非常に重要な人事戦略です。学生は人事担当者を見て会社を判断していることが多いことを念頭に置き、研修中の事故には万全の対策と真摯な対応を心掛けるようにしましょう。

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