イノベーション人材の特徴とは?具体的なスキルの例について

イノベーション人材が求められている背景とは?

現代ビジネスは「VUCAワールド(予測不可能な状況)」と呼ばれるように、明確な最適解がない複雑な課題が山積みの世界です。科学技術の急激な発展によって、労働やライフスタイルなどの生活環境が加速度的に変化しているのが、現代社会におけるビジネスの特徴といえます。

未来の予測が困難な現代では、企業を変革していける新しい時代の担い手の存在が、より一層求められています。企業を変革するためには、新しい価値の創造、つまり「イノベーション」を引き起こすことが求められます。イノベーションを起こすために必要とされるのは、優れた知識を融合して問題に対峙していける人材です。

イノベーションとは「革新」「一新」などを意味する言葉であり、ビジネスシーンにおいては「技術革新」なども含まれます。イノベーションのタイプは、大きく分けて「製品・サービス」「生産工程」「組織」「マーケティング」の4種類があるとされており、何を目的とするかによってやり方も必要とされる人材も異なります。

今回の記事では、イノベーション人材の特徴や、イノベーション人材が持つスキルの具体例についてご紹介します。

イノベーション人材の特徴とは?具体的なスキルの例について

イノベーション人材とは、イノベーションを起こす可能性が高い人材(=ヒューマンリソース)を意味する言葉です。

イノベーションは、起こそうと思っても簡単に起こせるものではありません。イノベーションを起こすためには、良い人的資本(human capital)の蓄積が不可欠です。

良い人的資本を蓄積する上で重要な「人材の質」は、人的・社会的・経済的福利を促進するための「知識」「技能」「能力」「資質」によって決まると言われています。

優れた知識や技能、能力や資質を持つ「イノベーション人材」は、外部から獲得する方法だけでなく、組織の中から選抜して成長機会を与えることによって育成する方法もあります。

イノベーションを起こすために必要な要素とは?

イノベーションを起こすために必要な要素としては、以下の4つが挙げられます。

  1. 企業の成熟と成長を両立する判断ができる
  2. リスクを正しく理解し、適切なアクションを取ることができる
  3. 企業を取り巻く市場環境の変化や時代の流れに敏感である
  4. コミュニケーション環境の構築ができている

イノベーション人材を活用するためには、イノベーションを起こしやすい社内環境を整えておかなければなりません。もしイノベーション人材を採用・育成できたとしても、イノベーションを起こすために必要な環境や制度が整っていなければ、採用したイノベーティブな人材だけでなく周囲のモチベーションも低下する恐れがあるため注意が必要です。

イノベーション人材の特徴とは?

イノベーション人材とは、課題設定力・解決力と価値変換スキルを持つ人材であると定義されています。

企業が求める人材像については、2015年4月に公益社団法人・経済同友会が発表した「これからの企業・社会が求める人材像と大学への期待」において、業種や職種を問わず普遍的に求められる資質・能力が以下のように整理されています。

  • 変化の激しい社会で課題を見出し、チームで協力して解決する能力(問題設定力・解決力)
  • 困難から逃げずにそれに向き合い、乗り越える力(耐力・胆力)
  • 多様性を尊重し、異文化を受け入れながら組織力を高める力(協調力)
  • 価値観の異なる相手とも双方向で真摯に学び合う力(コミュニケーション力)

代表的なイノベーション企業であるGoogle社の前副社長ジョナサン・ローゼンバーグ氏は、同社が求める人材を次の5つのスキルを持つ人材と定義しています。

  • 分析思考能力
  • コミュニケーション能力
  • 新しい試みに対する意欲
  • チームで仕事ができる能力
  • 情熱と指導力

イノベーション人材が持つスキルの具体例とは?

野村総合研究所が行ったイノベーターに関する調査では、日本企業の事例から有数のイノベーション人材を選出し、共通点がないかを調べました。

野村総合研究所の調査の結果、イノベーション人材に共通しているのは「価値発見力を持っていること」であると発表されました。価値発見力は、以下の7つのスキルに分類できるとされています。

  1. 観察する力(気づく力)
  2. 関連づける力
  3. 挑戦する力
  4. おかしいと思う力
  5. 人とつながる力
  6. 試す力
  7. 捨てる力

参考『NRI』顧客価値を創造するイノベーション

1.観察する力(気づく力)

観察する力(気づく力)とは、物事を観察してアイデアや気付きを得る能力です。

イノベーション人材は、他の人が見逃してしまうような物事や出来事に着目し、対象に疑問を持つ能力があります。

2.関連づける力

関連付ける力とは、自分の専門領域や得意分野以外アイデアを組み合わせて、問題の解決法を見つける能力です。

イノベーション人材の代表例ともいうべきスティーブ・ジョブズ氏は、物事を関連付ける力で成功した1人です。マッキントッシュの「マウスでクリックする」という技術は、実はゼロックス社が開発した技術でしたが、ゼロックス社が「使えない機能」としたモデルをジョブズ氏がタダ同然でもらい受けたという話が残っています。

3.挑戦する力

挑戦する力とは、失敗の可能性があったとしても成功のために実行できる能力です。

イノベーション人材は失敗を恐れず、失敗から学び課題を乗り越えようとする姿勢を持っています。

4.おかしいと思う力

おかしいと思う力とは、社会にあるさまざまなルールや仕組み、既存の事実などから問題点を見出し、改善するための行動をとる能力です。

イノベーション人材は、普通の人が「決まっていること」「当然のこと」と思い込んでいることに疑問を持ち、改善しようとする能力があります。

5.人とつながる力

人とつながる力とは、自分の周囲にいる社内外のさまざまな部門や職種の人から、多種多様な情報やアイデアを引き出す能力です。

イノベーションを起こすためには、個人の力だけでなく周囲の協力が必要不可欠です。イノベーション人材は、自分の考えに賛同・協力してくれる人を見つけ出し、積極的に交流して関係性をつなげる能力があります。

6.試す力

試す力とは、自分の考えを具体的な形にして、実際に試す能力です。

イノベーションに限った話ではありませんが、新しいモノは試してみないと価値が分かりません。試した結果失敗する場合もありますが、イノベーション人材は試した結果を次の成功へのヒントにつなげる能力があります。

7.捨てる力

捨てる力とは、自分の考えに必要以上に固執せず、失敗や間違いを素直に認める能力です。

イノベーションを起こすためには、物事の本質を突き詰めて、必要でないものは潔く捨てなければなりません。イノベーション人材は、必要ないと判断したタスクはきっぱりと切り捨てる能力があります。

イノベーション人材の特徴を知り、自社の求める人材を採用・育成しよう!

現代社会のビジネスでは、大企業のみならず中小企業においてもイノベーション人材の需要が非常に高まっており、イノベーション人材の獲得競争が激化しています。

イノベーション人材を採用・育成するためには、自社がどの分野でイノベーションを起こしたいのかという目的を明確にして、求める人物像を具体化していく必要があります。

イノベーション人材を採用・育成するために、イノベーションを起こしやすい組織づくりや、自社が求めるイノベーション人材像の明確化に取り組みましょう。

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