早期離職の防止は人事業務の重要な課題になっている
人事部の主要な業務のひとつである人材採用で大事なことは「採用したら終わり」ではないということです。
たくさんの応募を集め、能力の高い人材を獲得できたとしても、獲得した人材が自社に定着しなければ意味がありません。特に若手人材については、即戦力ではなく入社後の成長を加味した採用となるので、早期離職の防止は人事業務において非常に重要な課題です。
厚生労働省の調査によると、新卒社員の3年以内の離職率は、中学卒が約7割、高校卒が約4割、最も低い大学卒でも約3割となっています。
新入社員が一人前の戦力として独り立ちするまでには3年以上の「投資期間」が必要とされることから、平均して3人に1人以上が戦力になる前に離職してしまうという問題は、採用にかかるコストを考えると決して無視できる問題ではありません。
出典元『リクルートワークス研究所』人材流動性とOn the Job Trainingに関する探索的研究
早期離職の防止が重要な課題だと言われ続けている一方で、具体的な解決方法を確立できている企業の数は少なく、上記のグラフを見ても直近30年で全体的な離職率はほとんど変わっていないことが分かります。
今回の記事では、早期離職問題の現状や原因、企業への悪影響や対策方法についてご紹介します。
早期離職問題とは?早期離職の現状や原因、企業への悪影響や対策方法について
早期離職率の現状と推移状況とは?
早期離職率は若い人材ほど高く、最も低い大卒でも約3割の新入社員が3年以内に離職しており、直近30年の推移を見ても大きな改善の兆しは見らていません。
早期離職についてもう少し踏み込んで見たデータとして、厚生労働省の調査による企業規模別の早期離職率の統計があります。
出典元『厚生労働省』新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)を公表します
上図の調査結果から、早期離職率は大企業ほど低く、中小企業で高くなり、従業員30人未満の会社では過半数を超えているという現状が読み取れます。
現在の日本の求人市場は、求職者数に比べて求人件数の方が多い「売り手市場」となっており、企業間での人材獲得競争が激化しています。他社との人材獲得競争に勝つためには、人材採用や労働環境整備にどれだけコストを割けるかという企業の体力が要求されるため、中小企業ほど人手不足に悩まされている傾向があります。
早期離職が起こる原因とは?
そもそもなぜ早期退職が起こってしまうのでしょうか?早期離職が起こる最も大きな原因として挙げられているのは、企業と求職者の「相性」の問題です。
リクナビNEXTの退職理由の本音ランキングでは、「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」「同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」「社長がワンマンだった」「社風が合わなかった」などの人間関係に起因する理由での退職が多く発生しています。
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)
出典元『エン・ジャパン』定着・活躍人材を増やすための入社後ギャップ撲滅作戦
人間関係の問題は、上記理由からは49%と半数を占める理由として挙げられています。仕事内容や労働環境の相性も26%と無視できない数字ではありますが、人間関係の相性を改善することで、離職の半分は防止できる可能性があります。
早期離職が企業に与える悪影響とは?
早期離職が企業に与える悪影響は様々あり、特に大きな問題として採用・教育コストの損失が挙げられます。
新入社員が一人前の戦力として独り立ちするまでの期間は、教育研修制度が機能している企業でも4年以上かかるとされています。
出典元『リクルートワークス研究所』人材流動性とOn the Job Trainingに関する探索的研究
新入社員が独り立ちするまでにかかるコストは、将来的に自社の戦力になってもらうための「投資」であると言えます。つまり3年以内の早期離職は、投資先の会社の倒産がしてしまったようなもので、新入社員にかけた採用コストや教育コストが全て無駄になってしまうのです。
大卒新入社員の初任給の平均が月給約21万円で、社会保険の企業負担分が上乗せされ、年に2回の賞与(1回あたり月給の2.4ヶ月分計算)の支払いもあります。人件費だけでも年間400万円以上、3年で1,200万円以上のコストとなり、採用や教育にかかったコストも合わせて考えると、早期離職が企業に与える損失がどれだけ大きいかが分かります。
早期離職の悪影響は、金銭的な損失だけにとどまらず、周囲の社員のモチベーション低下にもつながる危険があります。新入社員の早期離職は、残った社員に「自分も転職した方が良いのではないか」という疑問や「教育にかけた頑張りが無駄になった」という落胆を与え、生産性の低下や連鎖的な離職者を出すきっかけになる恐れがあります。
早期離職の対策方法とは?
早期離職を解決するためには「社風」と「人間関係」という、2つの相性についての対策が必要です。2つの相性への対策としては、採用時に性格や価値観のマッチングを重視する方法が挙げられます。
人間関係は組織全体で考えると難しい問題に感じますが、根本には「個人対個人」という最小単位のコミュニケーションがあります。社会心理学の研究によると「人間は似た者同士が惹かれ合う」という主張がされており「個人対個人」の関係性についての基本的なモデルとなっています。「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、ポジティブな意味でもネガティブな意味でも、性格や価値観は人間関係において非常に重要な要素となります。
早期離職を防ぐためには社風や上司・同僚とのマッチングが重要になるため、採用選考の過程で「現在自社で活躍している人材の特徴」を参照して、性格や価値観の相性を吟味して内定を出すようにしましょう。
弊社サービス「ミツカリ」では、応募者の性格や価値観・志向性といったパーソナリティを見える化し、社風や部署の人間関係の相性やミスマッチの問題点を明らかにすることができます。採用ミスマッチを防止する採用支援ツールとして、是非導入をご検討ください。
早期離職の対策はできることから始めよう!
早期離職率は若い人材ほど高く、最も低い大卒でも約3割の新入社員が3年以内に離職しており、直近30年の推移を見ても大きな改善の兆しは見らていません。
早期離職の原因は、人間関係や社風とのミスマッチが最も大きな理由として挙げられています。早期離職を防ぐためには、社風や上司・同僚との性格や価値観のマッチングが重要になるため、面接による応募者の見極めが大切です。
早期離職の対策は、ひとつの施策を実施すれば全ての問題を解決できるわけではありません。しかし、問題をひとつずつであっても改善していかなければ、改善の手がかりを掴むことすらできません。早期離職を解決するためには、できることから始めていく姿勢が求められるのです。