仮面就職の原因と対策を知り自社のメリットに変えよう!
仮面就職とは、求職者が志望する企業から内定をもらえなかった場合に、就職浪人をしないで他の企業へ入社して働きながら、第一志望の企業への転職を目指すことを指します。
仮面就職は、人事担当者にとって避けたいと思うところですが、採用難が続く中でせっかく採用できた人材です。仮面就職をデメリットばかりと決め付けず、仮面就職した新卒社員をいかに活かすかを考えていくと、長期的には企業価値向上につながるメリットが数多く見つかります。
今回の記事では、仮面就職の意味と増加の原因、仮面就職への対策とメリットに変える方法をご紹介します。
新卒の仮面就職が増加した原因と対策方法とは?
第一志望の企業から内定をもらえなくても志望の企業への入社を諦めないという人は、就職浪人という形で昔から一定数存在します。
最近の新卒者を中心に求職者の意識に変化があり、第一志望の企業から内定をもらえなくても諦めず、働きながら再度チャレンジの機会を狙う仮面就職が主流になってきました。
デジタルナレッジの調査報告によると、就職活動を行っている大学生の約9割が「就職活動や就職に不安を感じている」と回答しています。
出典元『デジタル・ナレッジ』大学生の就職活動に関する意識調査報告書
マイナビの2019年卒大学生意識調査によると、就職を希望する大学生の約9割が「なにがなんでも就職したい」と回答しており、卒業と同時に就職しなければという意識が非常に高いことが分かります。
第一志望企業にこだわるための就職浪人には、デメリットが多いことも知られるようになりました。就職浪人して年齢が上がることで不利になりますし、一度内定を出さなかった学生は次年度の選考では書類で落とすと決めている企業もあります。就職浪人中の生活費や学費など、コストがかかることも大きな痛手です。
就職浪人の様々なデメリットを知った学生を中心に「就職浪人するよりも一度就職して、社会人としての経験を積みながら、志望する企業に入社できるよう転職の準備をしよう」と考える求職者が増えたことが、仮面就職増加の増加の主な要因です。
新卒者の意識の変化をポジティブに捉えると、仮面就職する道をあえて選ぶしたたかさを持ち、努力できる人材だと言えます。仮面就職した新卒社員が自社にいると仮定するなら、人事担当者は仮面就職の原因と対策を知っておく必要があります。
仮面就職とは?言葉の意味と新卒者にとってのメリットについて
仮面就職とは、志望する企業から内定をもらえなかった新卒学生が、就職浪人や進学をせずに内定をくれた企業へひとまず入社して、働きながら第一志望の企業に転職する道を模索することを意味する言葉です。
新卒者にとっては実務経験を積みながら賃金を得られることから、就職浪人よりもメリットが多くデメリットが少ない方法として、仮面就職を選択する新卒者が増加しています。
仮面就職増加の背景にある3つの原因
仮面就職が増加している背景には、主に3つの原因があります。
- 終身雇用の崩壊と第二新卒の積極採用
- 大卒の就職率が上昇傾向にある
- 大企業志向と大企業採用の高倍率
1.終身雇用の崩壊と第二新卒の積極採用
かつての新卒採用は終身雇用が大前提で、採用される学生側も「一生この企業に勤めるのだから、慎重に慎重を重ねたい」と考えるのが一般的でした。
近年では入社1年目から3年目の第二新卒を積極採用する企業が増加し、学生側も新卒で入社した企業に生涯勤め上げるという意識は薄れ、転職前提で社会人になる人が増えています。
2.大卒の就職率が上昇傾向にある
厚生労働省の発表によると、大卒の就職率は98.0%で、調査開始以来過去最高を記録しています。男女比・文理比においても就職率に大きな乖離は無く、大卒就職状況は極めて良好です。
出典元『厚生労働省』平成30年3月大学等卒業者の就職状況を公表します
新卒の需要に対して供給が追いついていない売り手市場なため、事業規模や事業内容などの条件を緩めさえすれば、学生はどこかの企業には就職できるという状況です。
3.大企業志向と大企業採用の高倍率
学生の大企業志向はかつてと変わらず高く、大企業の数は就職希望者の数に対して極めて少ないため、志望する大手企業に入れなかった新卒社員が続出しているのが現状です。
マイナビの2019年卒大学生意識調査によると、大手企業を志望する学生は前年を1.7ポイント上回る54.5%でした。絶対に大手企業がよいという学生と自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよいという学生が、全体の半数以上を占めています。
総務省が発表した事業所・企業統計調査によると、日本の全企業数は約385万、事業所数は534万であるのに対して、従業員規模300人以上の大企業は1万2223に過ぎず、割合としては全体のわずか0.2%です。
出典元『総務省』平成28年経済センサス‐活動調査結果<要約>
大企業への就職を望む学生の数に対して大企業の数がまったく足りていないため、新卒で内定をもらえた企業にとりあえず入社して社会人経験を積んでから、本来志望していた大企業に転職したいと考える学生が増えた結果として、仮面就職が増加しています。
仮面就職した新卒社員を活かすための対策とは?
仮面就職した新卒社員は、いずれは転職したいという意欲を持っているため、就労意欲やスキルアップ意欲が高い場合がほとんどです。
仮面就職の新卒社員が自身の労働市場価値向上に積極的なことに着目して、モチベーションを向上させ、仕事への動機付けを強めることで自社の仕事への満足度が高まり、自社で働き続けてもらえる可能性が高まります。
モチベーションを向上させる
モチベーションを向上させるために、マズローの欲求5段階説を用いて、仮面就職した新卒社員はどの欲求が満たされていないのかを見極めます。
マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求には「低次の欲求」として「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」の3つがあり、次に「高次の欲求」として「承認欲求」「自己実現欲求」の2つがあるとする説です。
就職できた時点で低次の欲求は満たされていることになるので、次に満たすべきは承認欲求と自己実現欲求です。
就労における承認欲求は、上司から褒められる、お客様から感謝される、社内外で評価されるなどで満たされます。表彰制度の導入やインセンティブ設計で承認欲求を満たせば、仕事に対するモチベーション向上を図ることができます。
仮面就職した新卒社員が本来志望する企業と自社のアンマッチの度合いが低いのであれば、承認欲求を満たすことで自社に留まってもらえる可能性が高まります。
仕事への動機付けを強める
仮面就職の新卒社員を自社に留まらせるためには、モチベーション向上を図るだけでは不十分です。ハーズバーグの衛生理論を参考に、業務に対する動機付けを強める方法を考えます。
ハーズバーグの衛生理論とは、人間の欲求に関する理論です。嫌なことや危険なことを避けようとする「動物的な欲求(衛生要因)」と、技術的にも心理的にも成長したいという「人間的な欲求(動機付け要因)」が、人間には同時に存在するという理論です。
出典元『モチベーションアップの法則』ハーズバーグの動機づけ・衛生理論
志望度の低い企業に勤めているが、生活に必要な収入は確保できているという状態は、衛生要因が満たされていることになります。逆に、志望度の低い企業に勤めているため、やりたい仕事があるけれどできていないという状態は、動機付け要因が欠如していることになります。
人事評価制度や面談制度、研修制度を充実させて「いま携わっている仕事が今後のキャリアップにどうつながるか」を意識させ、業務内容に対する動機付けを図ることで、仮面就職した新卒社員だけでなく、従業員全体の仕事に対するモチベーションと愛社精神の向上が図れます。
仮面就職をポジティブに捉え、企業価値向上を図ろう!
仮面就職とは、生活しながら転職活動を行うために、本命ではない企業に就職して働いている人または状態を指します。人手不足によって売り手市場が続き、働き方の多様化が進む日本では、仮面就職はこれからも増加することが予想されます。
仮面就職をデメリットばかりだと決めつけてせっかく採用した人材の評価を下げるのではなく、仮面就職した新卒社員にも納得して自社で働いてもらえるような仕組みづくりをすれば、従業員全体のモチベーションや愛社精神の向上を図ることができます。
もし仮面就職した新卒社員が努力の甲斐なく退社してしまったとしても「自社で育成された人材が外部で活躍するようになった」という結果になれば、円満退職や周囲へのポジティブな口コミ、人材や顧客の紹介などに、大いに貢献してくれることでしょう。