新卒採用での求める人物像の設計で陥りがちな注意点とは?

企業が学生に求める能力やスキルとは?

今回は、人の性格が企業側にどのように求められているのか、また性格や採用でとり扱う場合に気をつけるべき点について、ある研究を引用して紹介します。

早稲田大学大学院教授の小塩真司氏が、中部大学に企業説明会に来た614もの企業の担当者を対象に実施した興味深いデータを報告しています。

この調査では、人材育成の専門家があらかじめ作っておいたそれぞれの質問項目において、「どの程度学生に求めているか」を基準に、5段階評価で答えてもらった。

学生にはスキルよりも性格を求めている

「自主性」「協調性」「忍耐力」「誠実さ」「明るさ」「元気さ」「素直さ」「好奇心」「成長意欲」と言った、性格全般に関わる項目が平均点で全て4.00以上を記録しています。

一方でスキルや経験に関する項目は、性格全般の得点よりも低いことがわかります。

「英語を読む力(1.96)」「日本語を読む力(3.34)」「専門分野の基礎知識(2.72)」「インターンシップ(2.03)」「一般社会常識(3.84)」

このデータが示唆することは、一般的に、企業はスキルや知識よりも、マナーや態度と同じくらい、性格を重視していることを指しています。

これらのデータは、2010年に調査されたものです。一見すると確かに現代の日本企業は、より人間の内面性を重視するようになっているように感じます。

一般的に良い性格か、しか見ていない

このデータをよく見てみると、実はいろいろな疑問点を浮き彫りにしているように思えます。

得られたデータの性格に関する要素を統計的に分類しようとしてみると、全て一つのまとまりになってしまいました。これは、企業が学生に対して求めている性格というのは、「良い性格かどうか」という極端な判断に基づいている可能性が高いということを意味します。

もしそうであると「自社の社風とどれだけ合っているか」を判断する材料としての性格とは、少し意味が違ってくるのではないでしょうか。

「自主性」「協調性」「忍耐力」「誠実さ」「明るさ」「元気さ」「素直さ」「好奇心」「成長意欲」全てにおいて高得点の人間は果たして本当にいるのかどうか、という疑問も残ります。(そのような人物の例を挙げてみようとしたけれど、思いつかないくらい難しい。)

性格は遺伝要因の方が強く影響する

現代の実証研究によると、性格の形成には環境要因よりも遺伝要因の方がより強く影響する見方がやや多数派となっています。

性格をスキルや知識よりも重視するということは、もしかしたら環境や努力によってはどうしようもならない領域を評価することと同じになってしまう危険性があります。

努力などは一切関係なしに、企業は「生まれ持ったもの」だけを求めてしまうこととなります。仮に大企業であっても、中小企業であっても、「遺伝要因を持っている」人を取り合う構図が出来上がることになります。

学生側が企業の求める傾向をある程度研究していたら、性格診断を受けたところで、いくらでも嘘をついて高得点をとれてしまうという問題もあります。

そうなると、嘘をつける人が「性格の良い人」になり、嘘をつけない人が「性格のよくない人」になってしまいます。

自社にとって良い性格とは何か?を定義する

「自社の求める人物像」はどのように決めたら良いのでしょうか?

一つの策としては、自分たちが求める「性格」を、より具体的に定義することだと考えています。性格診断を作るにしても、面接での質問項目を考えるにしても、何かを測るにはその概念を定義することから始めなくてはなりません。また、人の身長や体重と違って、人間の内面を測ることは、そう単純ではないので、しっかりした定義付けが最も重要なのではないでしょうか。

性格診断においては、極端な性格概念から脱却して、より細かく具体的な性格を追求していく必要があります。性格の「良い」「悪い」ではなく、「合うか」「合わないか」を基準に考えていってはいかがでしょうか。そのためには、まずは会社側が、「我々はどうなのか。どのようなカルチャーなのか。」を知るところから始めましょう。

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