コミュニケーションスキルをアップさせる方法とは?
コミュニケーションスキルとは、多くの企業の人材採用において、最も重視されている評価基準です。
経団連の調査によると、企業が新卒採用を行う際に重視する要素として「コミュニケーション能力」が10年以上の間1位に挙げられています。
出典元『日本経済団体連合会』2017年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
ハーバード大学の経営学者ロバート・カッツ氏は、ビジネスに必要なスキルは「テクニカルスキル(業務遂行能力)」「ヒューマンスキル(対人間関係能力)」「コンセプチュアルスキル(概念化能力)」の3つに分類できると提唱しました。
出典元『日本の人事部』よくわかる講座:2.マネジメント・管理職に求められるスキル
コミュニケーションスキルは、ビジネススキルのひとつであるヒューマンスキルに含まれます。ヒューマンスキルは、組織内のどのレベルの人材にとっても重要度が高いため、伸びしろが大きく対応力の高い人材を探すための評価基準として活用されています。
コミュニケーションスキルを評価する際に重要なのは、コミュニケーションは「スキル(能力)」であるため、性格や価値観と違って入社後の研修で育成できるという点です。自社の従業員のコミュニケーションスキルをアップさせるためには、具体的にどのようなスキルを伸ばすのかを明確化する必要があります。
今回の記事では、社員のコミュニケーションスキルをアップさせる研修方法や人事制度などについてご紹介します。
コミュニケーションスキルをアップさせる研修方法や人事制度とは?
コミュニケーションスキルの種類とは?
コミュニケーションスキルは、細分化するとキリがないほどたくさんの種類があります。しかし、採用活動で応募者全員の細かいスキルを一人ひとりチェックしていくのは、現実的に考えて不可能です。
ビジネスにおけるコミュニケーションスキルは「傾聴」「アサーション」「コーチング」という3つのスキルが特に重要です。3つのスキルはそれぞれ「相手の意見を聞くスキル(傾聴)」「相手に意見を伝えるスキル(アサーション)」「双方の意見を検討して具体的なアクションを起こす(コーチング)」と言い換えられます。
「傾聴」「アサーション」「コーチング」という3つのコミュニケーションスキルについて、それぞれのスキルをアップさせる方法をご紹介します。
- 傾聴力をアップさせる方法とは?
- アサーションスキルをアップさせる方法とは?
- コーチングスキルをアップさせる方法とは?
1.傾聴力をアップさせる方法とは?
傾聴とは「耳を『傾けて』『聴く』」という漢字が示す通り、強い興味を持って話を聞くという意味の言葉です。
傾聴力をアップさせる方法としては、簡単に習得出来て効果が高い「オウム返し」があります。
オウム返しとは、相手の言葉をそのまま繰り返すというコミュニケーション方法です。同僚との会話を例に挙げると「仕事が溜まっちゃって昨日から寝てないんだよね」「昨日から寝てないの!?」といった具合です。相手の言葉を少し変えて「徹夜はキツいよねえ」のように返せるようになれば、繰り返しているだけな感じをやわらげられて、より効果的です。
オウム返しを活用すると「ちゃんとあなたの話を聴いていますよ」というスタンスを示せます。傾聴を態度として示すことで安心感を与え、相手の話をより深く聞き出せるようになるため、単純な割に効果的なコミュニケーションスキルです。
傾聴力をアップさせる練習をする際は、2人1組でテーマに沿って会話をさせ、どんなタイミングでどんなオウム返しを入れるかを相談・実践させるとよいでしょう。
2.アサーションスキルをアップさせる方法とは?
アサーションとは、自分の意見を主張しつつ相手の意見もしっかり傾聴するという、適切な自己主張を意味する言葉です。
アサーションスキルをアップさせる方法としては「事実をありのまま、客観的に伝える練習」があります。
ビジネスにおけるコミュニケーションの場では、必ずしも相手と意見が一致している訳ではないので、お互いの意見の位置関係を明確にする必要があります。何が一致していて何が違っているのか、最終的な着地点をどのように調整するのかなど、意見を整理する技術が必要です。
アサーションスキルをアップさせる練習をする際は、他者の議論の内容をメモにまとめる方法が効果的です。どちらかに肩入れせず、客観的な視点にもとづいて議論の内容をまとめることが大切です。
3.コーチングスキルをアップさせる方法とは?
コーチングとは、個人や組織の成長を促す上で、問題に対して「答えを与える」のではなく「自発的な行動を推進する」コミュニケーションスキルです。
コーチングスキルをアップさせる方法としては、相手の自発的な行動を促すために効果的な「オープン・クエスチョン」があります。
オープン・クエスチョンとは「誰が・いつ・どこで・なにを・なぜ・どのように」という5W1Hで行う質問方法です。オープン・クエスチョンは「YES/NO」で答えられるクローズ・クエスチョンと違い、質問された相手が答えをじっくり考える必要があるため、自発的な行動を促進する効果があります。
コーチングスキルをアップさせる練習をする際は「オープン・クエスチョンだけでどれだけ会話できるか」といったようなゲーム感覚で行える方法がオススメです。会話の内容をメモしておいて、話の道筋が整っているかを確認するようにしましょう。
コミュニケーションスキルをアップさせる際は「どこをどう伸ばすか」を明確にしよう!
コミュニケーションスキルとは、多くの企業の人材採用において、最も重視されている評価基準です。
コミュニケーションスキルは抽象的な概念であるため、具体的なスキルの例は挙げ出せばキリがありません。コミュニケーションスキルのアップを図る際は、ビジネスで必要になるスキルのみに要点を絞って具体化し、適切な教育研修を行う必要があります。
人事施策として社員のコミュニケーションスキルアップを行う際は、やみくもにすべてのスキルを伸ばそうとするのではなく「入社後何年以内にどんなスキルがどの程度の基準に達していてほしいか」を人事評価制度に落とし込んで、戦略的な人材育成につなげましょう。