人材育成制度の違いを理解しよう!
少子高齢化による労働力の実質的な不足を受け、企業は採用のみならず、その後の人材育成においても力を入れなければならない時代になりました。
新入社員(正式配属後)に対するメンター制度、メンター制度に準ずる制度や取り組みを行っている企業は約半数となっています。準ずる制度の内容は記載されていませんが、新入社員を教育する制度がある企業は約半数程度存在することがわかります。
出典元『経営プロ』若手育成に「メンター制度」は本当に効いている?!
メンター制度に準ずる制度としては、「ブラザーシスター制度」「エルダー制度」「プリセプター制度」「OJT(On the Job Training)」などが挙げられます。エルダー制度・プリセプター制度は、ブラザーシスター制度とほぼ同様の内容ですが、「メンター制度」「ブラザーシスター制度」「OJT」は、それぞれ違いがあるため、この3つの人材育成制度の違いを見ていきましょう。
メンター制度とは
メンター制度はアメリカで確率された人材育成方法で、若手社員の成長と会社への定着を目的としています。基本的には若手社員の定着のために運用される制度ですが、若手社員に限らず全体的に離職率が高い企業や業界、あるいは競合他社に負けない組織作りが必要な際に導入されるケースもあります。
メンター制度では、指導を受けるメンティとは別部署から指導役であるメンターを選定しマッチングを行います。人事部などが主導し、選定方法やマッチング方法を決めておく必要があります。メンティは、会社に定着してもらうことを目的としているため、若手社員などが対象になりますが、メンターにおいてはメンティとは他部署の社員で、メンティのロールモデルになり得るような人物を選定します。
メンター・メンティのマッチング後、実際の運用ではメンターとメンティの面談を中心に行います。面談は定期的に行い、メンターはメンティの仕事や人間関係やキャリアについてなど様々な悩みの相談に乗り、メンティはその対話を通じて気づきを得ます。
メンター制度の運用期間は実に様々で、導入した背景によって変わってきます。一般的には、ブラザーシスター制度やOJTに比べると、運用期間は長期に渡ることが多く、1年〜数年になることがあります。
メンター制度は、指導役、被指導役の範囲も広く、様々な経営課題、人事課題に適用ができる制度です。
ブラザーシスター制度とは
ブラザーシスター制度では、新卒の新入社員の育成・定着を対象としており、制度の対象範囲は、メンター制度に比べて限定的です。
メンター制度との大きな違いとしては、指導役は新入社員と同じ部署の年齢が近い先輩社員が担います。実務指導を行いつつ、学生から社会人になったばかりの新入社員が、スムーズに会社組織に馴染めるよう、生活や人間関係などの相談にも乗ることもあります。
ブラザーシスター制度の運用期間については、新入社員が新人である間になるため、次の新人が入社をすれば終了となり、今度は自分が指導役のブラザー・シスターになることもあります。
ブラザーシスター制度は、新入社員だけでなく指導役となる若手社員の定着にも効果が期待できます。業務内容だけでなく、生活や人間関係の相談にも乗ることで、コミュニケーションスキルやマネジメントスキルなどの向上も期待ができます。
OJT(On the Job Training)とは
OJT(On the Job Training)の起源は、第一次世界大戦まで遡ります。当時10倍の作業員の補充が必要となり、新人を効果的に育成するために、開発された指導法が始まりだと言われています。
OJTの目的は、新人の業務取得の早期化です。OJTでは、以下のような流れで、仕事の全体像を理解してもらうことに重きをおいています。
- Show(やってみせる)
- Tell(説明する)
- Do(やらせてみる)
- Check(評価・追加指導)
OJTの対象となる従業員は、新入社員だけでなく、他部署から異動した人材など、業務内容を知らない・不慣れな従業員が対象となります。実際に業務を行いながらの指導を行うため、指導役には同部署の先輩社員や上司が選ばれることが一般的です。
OJTの期間の様々ですが、目的が新人の業務習得にあるため、基本的に新人が業務を1人で行えるようになれば、OJTは終了となります。
OJTによって効果的な業務取得が行えるだけでなく、指導役の先輩社員・上司とのコミュニケーションの活発化が期待できます。指導する業務によって複数の従業員が指導役となる場合には、部署内でのコミュニケーションの活性化にもつながります。
ブラザーシスター制度・メンター制度・OJTの違いとは
3つの制度の比較をまとめると、以下のようになります。
各人材育成制度の違いを明確にし、自社の課題に適した制度を採用しよう
メンター制度やブラザーシスター制度(エルダー制度、プリセプター制度)、OJTは人材育成制度として用いられる制度ですが、実施・運用方法だけでなく、それぞれの目的も異なっています。
メンター制度よりブラザーシスター制度が優れているなどの視点ではなく、自社が抱える人的課題を明確にし、どの人材育成制度で解決できるのかから、適した制度を選択することが大切です。
新しく人材育成制度を導入する場合には、従業員内で混乱や認識のズレが生じないように、人事部が率先して制度の違いや目的などについて説明することも重要です。売り上げを向上させるだけでなく、人材を育成することが今後組織や従業員自身にどのような影響があるのかを伝えましょう。