副業解禁とは?期待する効果やメリット・デメリット、注意点について

多くの企業でNGだった副業

ここ数年、メディアで取り上げられるワークスタイルのテーマの一つが「副業解禁」です。ここ数年だけを見ても、企業における「副業解禁」の動きは徐々に広がりつつあるようにも見えます。

2018年の4月に大手銀行としては初めて、新生銀行が「兼業」ならびに「副業」を解禁。就業規定を改め、正社員ほか嘱託社員を含む約2700人が、本業と並行して異業種で就業することを認めました。ユニ・チャームも同様に4月から「副業」を解禁していますが、それに先んじるカタチで、ソフトバンクは2017年11月、コニカミノルタも2017年12月に副業を認めています。

もともと、日産自動車やリクルート、花王などの大手企業が副業をOKとしているのは有名なところですが、この背景には、現政権が進める「働き方改革」があり、「副業・兼業」は推進すべしとしてガイドラインの策定を進めています。従来のモデル就業規則では「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と記載がありましたが、今年の1月の改定により、この一文は削除。第14章に「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と記載されました。

参考URL『厚生労働省』副業・兼業

そもそも副業とは、正社員や非正社員が、他社に雇われたり自ら事業を営んだりすることをいいます。収入が少なければ副業とはみなさない企業もありますが、一般的には、収入に関わらず、所属企業以外で収入を得ていた場合、副業に当たるとみなされます。

副業を禁止している企業の方が多いのが現状ですが、IT系などの新興企業では、副業をすることにより、本業との相乗効果が生まれるとして、副業を就業規則で認める会社も増加しています。

こういった政府や企業の動きを踏まえつつ、今回は、「副業解禁」が認められるようになった経緯や概要と、企業への影響などについて確認してみましょう。

副業解禁の現状を見る

日本企業における副業の現状とは

2018年1月、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で、同省が示していた「モデル就業規則」から「副業禁止」の規定を削除しました。「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除。「副業・兼業」という章を設けて以下のような条文を例示しています。

(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

引用元『厚生労働省』第14章 副業・兼業

「会社の利益に反しない限り、副業(・兼業)は自由だと、国がガイドライン上で認めた」ということです。これまでの「原則禁止」から「原則自由」へと国が方針を180度変更したのです。このことが「副業解禁OK」に踏み切る企業が増加した大きな要因であるとも言われています。

ただし、中小企業庁の調査では、現状大多数の企業が副業を「原則禁止」しており、認めている企業は全体の14%程度となっていますが、今回の方針変更で今後さらに、ワークスタイル全体に大きな変化が起こる可能性は高いでしょう。

企業における副業・兼業制度について
出典元『厚生労働省』副業・兼業の促進に関するガイドライン

この調査結果によると、企業が副業・兼業に対する課題・懸念として「自社での業務がおろそかになること」「情報漏洩のリスクがあること」「競業・利益相反になること」などが挙げられていました。

労働者サイドからは、以前から、副業・兼業を求める声は以前から多く、年々増加しています。総務省の調査によると、副業・兼業を行う理由としては、「自分がやりたい仕事であること」「スキルアップ」「資格の活用」「十分な収入の確保」などさまざま。副業・兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業など多岐にわたります。

副業を希望している者の推移
出典元『厚生労働省』副業・兼業の促進に関するガイドライン

副業における日本での扱いと変遷

誤解されがちなのですが、もともと「副業(・兼業も)」自体に法的な規制はありません。ただ、厚生労働省が2017年12月時点で示したモデル就業規則の『労働者の遵守事項』に、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という記載があり、これが「副業禁止」的な意味合いとして受け取られていたのです。

そもそも、日本において「副業禁止」が一般的な通念として浸透しているのは、高度経済成長期における成長モデルとその慣行がマッチしていたためではないか、と言われています。「終身雇用」と「年功賃金」という高度成長期からの成功体験をベースに、「働いた分だけ給与がアップする」という恩恵の代替として、社員の多くは、残業や休日出勤、転勤などを受け入れてきた風土があります。

社員の多くは、会社に在籍するだけで活躍の場は与えられる仕組みであったため、そのスキルを社外で使う思考はあまり持ち合わせていませんでした。こういった構造の中で「副業禁止」は通念化していった節があります。

人口も増加して社会が成長する時代という、幸運な社会的・経済的構造に支えられてきたこのシステムも、あまりにも大きく社会が変化した今、継続は困難になりつつあります。今までのように、仮に社員のスキルを生かせる仕事がない場合に配置転換などで仕事をあてがい、生活を保障する構造は、存続は難しいのが現状です。

「終身雇用」を維持できなくなった企業と、一社だけで働くより、本業と並行して別の仕事(収益源)を持つ方が、個人のメリットが大きいという働く側の認識がマッチ。ITやデザイナーなど、専門職的な人材の間で浸透しはじめたのを皮切りに、「副業」は徐々に一般化しつつあります。

個人側のニーズに応える形で、ここ数年急速に、企業側の副業解禁の動きは広がっています。社員の副業を認めることなくして、優秀な人を採用することや、つなぎとめることが難しい時代に突入しつつあるのです。収益力が高くない企業では、給与レンジを引き上げることが困難という苦しい事情もあるでしょう。自社で面倒が見られない分、外で働くことを容認せざるを得なくなったというわけです。そして、政府の方針転換です。

副業解禁のメリットとデメリットについて

副業解禁によるメリット・デメリットは、企業側・労働者者側双方にあります。それぞれの視点でのメリット・デメリットについて確認しましょう。

企業側のメリット

  1. 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
  2. 労働者の自律性・自主性を促すことができる。
  3. 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
  4. 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。

企業側のデメリット(留意点)

  1. 本業に支障をきたす可能性がある。(必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応など)
  2. 秘密保持、職務違反などのリスクが発生する可能性がある(職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念)

労働者側のメリット

  1. 本業を離れることなく、別の仕事に就くことが可能となることで、スキルや経験値を向上させることができる。結果、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
  2. 本業での所得や社会的責任をベースに、新たに自分がやりたいことに挑戦することができる。
  3. 所得が増加する。
  4. 仮に起業や転職などを視野に入れている場合、本業と並行して、リスクの小さい形で準備を始めることが可能。

労働者側のデメリット(留意点)

  1. 就業時間の超過などに対する体調管理を、自己で徹底する必要がある。
  2. 本業で定められた規定(職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務)を逸脱する可能性やリスクが発生する。(常に意識して行動することが必要)
  3. 副業で仮に社会保険などの適用について、事前に把握していくことが求められる。

自社で副業を解禁する際の注意点

実際に自分の会社で「副業」の導入を検討、もしくはその前段階の事前調査などを実施する際、どのように考えていくことが必要か、おおまかな考え方のポイントについて触れておきます。

まずは、副業・兼業を認めることの是非を検討する

副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査するところから始めましょう。

仮にマイナスの要素がない場合、社員の労働時間以外の活動について、希望をヒアリングし、それに応じて、原則、副業や兼業を認める方向で検討していきましょう。実際に副業・兼業を承認していく場合、社員と企業双方が納得感を持って進めることができるよう、十分に話し合いの場を設けることが重要です。

副業の内容を共有する
(労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等のリスク回避のため)

副業を認めた場合、社員と企業とのコミュニケーションを徹底させ、企業へのリスクを極力ゼロにしていく行動が求められます。

当該社員が副業先で負っている守秘義務に留意しつつ、労働条件通知書や契約書などについて、情報共有を徹底させましょう。契約締結前であれば、副業先企業の募集要項などを活用することも有効です。

労働時間に関する規定の適用の留意

社員の労働時間や健康の状態を把握するためにも、上記同様、副業の業務内容を事前に届出してもらうようにしましょう。

※詳細は、厚生労働省策定の「モデル就業規則」の規定も参照してください。

自社の働き方全体の枠組みで、副業の在り方を模索する

働き方改革によって政府としても推進している副業解禁が、大手企業などでも取り入れられ始めています。

就業規則の改定など、自社に取り入れる際も工数が非常にかかることが懸念されますが、いち早く導入することによって、従業員のスキルアップなどだけでなく、競合他社との差別化やブランディングなどにも使えるという新たなメリットも生まれます。

プラスマイナス両面から検討し、自社の人材活用全体の枠組みで検討していくことをオススメします。

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