早期離職の現状や離職率改善のメリットとは
日本の離職率の現状でいうと、下記の表にもあるように中小企業移行採用後3年間の離職率は中途採用では約3割ですが、新卒採用は4 割を超えており、半数近くの人が3年間で離職している現状です。
出典元『中小企業庁』第2章 中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成
新卒で就職した人のうち、3年以内で辞めてしまう率が中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割という状態を「七五三現象」と呼ばれています。
およそ10年以上前から早期離職の問題は取り上げられていますが、ながらく改善していない現状です。早期離職は、採用にかけた時間や費用はもちろんのこと、教育や研修費用や時間、人事計画などがコストとして大きな影響を与えている対策すべき課題です。
早期離職は、採用にかけた時間や費用はもちろんのこと、教育や研修費用や時間、人事計画などがコストとして大きな影響を与えている対策すべき課題です。そんな高い離職率の改善をすることによって受給できる助成金が「人材確保等支援助成金」です。
人材確保等支援助成金の雇用管理制度助成コースとは?
離職者を減らすことが目的とした「評価・処遇制度」「研修制度」「健康づくり制度」「メンター制度」など色々な人事制度があります。
雇用管理制度助成コースは、離職率低下を目的とした制度の導入を促進することで、企業の雇用管理の改善を行い、人材の確保・定着を図る事業主に対して助成するコースです。
達成目標と受給金額について
雇用管理制度助成コースは目標達成助成で、助成を受けるためには目標を達成する必要があります。目標を明確にするために、雇用管理制度整備計画の認定が必要です。
次の①~⑤の雇用管理制度の導入の雇用管理制度整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けましょう。
- 評価・処遇制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
- 短時間正社員制度(保育事業主のみ)
作成した雇用管理制度整備計画に基づき、雇用管理制度整備計画の実施期間内に、雇用管理制度を導入・実施する必要があります。実施の結果、離職率を目標値以上に低下する目標に達成することで助成されるという流れです。
低下させる離職率の目標値は、対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数の規模に応じて変わりますが、助成金の受給には、評価時離職率を、計画時離職率より下表に記載する離職率ポイント以上低下させることが必要です。
受給額は一律57万円(生産性要件を満たした場合、72万円)です。
どんな取り組みが認められるのか、内容と目的の概要
雇用管理制度助成コースでは、下記制度の取り組みを1つ以上実施することで離職率の低下を目指します。
- 評価・処遇制度
評価・処遇制度や昇進・昇格基準、賃金制度などを定め、新たに導入。- 研修制度
新たな教育訓練制度、研修制度の導入。- 健康づくり制度
女性向け医療健診や大腸がん検診など法定の健康診断以外の健康づくりに関する新たな制度の導入。- メンター制度
会社や配属部署における直属上司とは別に、指導・相談役となる先輩(メンター)が後輩(メンティ)をサポートする制度の導入。- 短時間正社員制度(保育事業主のみ)
新たな短時間正社員制度の導入。
それぞれの制度には満たす項目がありますので、最新情報を確認しましょう。
受給要件
短時間正社員制度以外の「評価・処遇制度」「研修制度」「健康づくり制度」「メンター制度」においては、下記の事業主が対象となります。
- 1、事業主に直接雇用される者であって、事業主と期間の定めのない労働契約を締結する労働者であること
- 当該事業所において正規の従業員として位置づけられていること
- 所定労働時間が、当該事業所の同じ職種で働くフルタイムの正規従業員と同等であること
- 社会通念に照らして、労働者の雇用形態、賃金体系等(例えば、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の算定方法・支給形態、賞与、定期的な昇給の有無等)が正規の従業員として妥当なものであること
- 雇用保険の被保険者(「短期雇用特例被保険者」、「日雇労働被保険者」を除く)であること(※「高年齢被保険者」は含まれます。)
- 社会保険の適用事業所に雇用されている場合は、社会保険の被保険者であること(社会保険の要件を満たす者に限る。)
「短時間正社員制度」に関しては保育事業所限定となり、下記保育事業所や保育労働者が対象となります。
- 一時預かり事業 (児童福祉法第6条の3第7項)
- 家庭的保育事業 (児童福祉法第6条の3第9項)
- 小規模保育事業 (児童福祉法第6条の3第10項)
- 居宅訪問型保育事業 (児童福祉法第6条の3第11項)
- 事業所内保育事業 (児童福祉法第6条の3第12項)
- 病児保育事業 (児童福祉法第6条の3第13項)
- 保育所 (児童福祉法第39条第1項)
- 保育事業主に雇用され、専ら保育関係業務に従事する労働者
申請期間
平成30年から運用がスタートした制度で、現時点ではいつでも申請が可能です。申請の際には雇用管理制度整備計画書が必要となるので、申請前に作成する必要があります。
雇用管理制度整備計画書が認定されたら、そこから3か月以上1年以内の期間で取り組みを行い、計画を実施します。計画期間の末日の翌日から12か月経過する日までの期間の離職率を計算し、計画認定時に示した目標値を達成していれば、目標達成助成を受けられるという流れです。
社内環境の整備は会社の取り組むべき課題
雇用管理制度助成コースは、評価・処遇制度や研修制度、健康づくり制度など、社内制度を整備することによって助成が受けられるものです。
社内環境の整備は、離職率の改善はもちろんのこと、従業員のモチベーションや社員の労働生産性の向上などにも貢献する要素であり、まだ取り組んでいない制度があれば是非検討していただきたい助成金の1つです。