リーダーシップとは?意味や良い・悪いリーダーを決める要因と具体例

生産性の向上には「リーダーシップ」が大切?

リーマンショック以降、求人倍率が上昇し続けており、新規人材の獲得のハードルは上がり続けています。求職者数よりも求人件数が上回る「売り手市場」になっているこの現状では、業界・職種未経験者の積極的な採用や副業の承認など、これまでとは違う人事戦略を持つことを企業には求められています。

求人、求職及び求人倍率の推移
出典元『厚生労働省』一般職業紹介状況(平成30年6月分)について

求人倍率が上昇し続けて新規人材の獲得が難しくなることに加えて、既存人材の離職の問題も解決すべき課題として挙げられます。大卒に限ると、3年以内の離職率はリーマンショック時の平成21年度入社のみ約29%となっていますが、それ以外の入社年度においては20年以上30%を超える離職率となっています。

新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移
出典元『厚生労働省』新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移

仕事を辞める理由は労働条件や労働者が求めるライフスタイルと深い関わりがあります。中小企業庁が公表した「仕事をやめた理由」の上位に「人間関係(上司・経営者)への不満」がランクインしていることは注目すべきことです。

仕事をやめた理由
出典元『中小企業庁』中小企業白書 2015年版

仕事内容でもなければ、労働条件のことでもない項目で人材流出しているのは、非常にもったいない話です。雇用される側からみると、現実問題として「仕事を長く続けられるか」という問題は「どの上司・経営者に当たるか」ということに大きく影響されています。

マッキンゼーで人材育成マネジャーを務めた伊賀泰代による著作『生産性』では、管理職の仕事とは「チームの生産性向上のためにリーダーシップを発揮すること」と説明されています。

リーダーシップが既存人材の確保、生産性向上に重要な概念であることを理解している人は多いかと思いますが、リーダーシップを具体的に説明できる方は多くありません。今回は漠然とした「リーダーシップ」という概念を具体的に掘り下げ、その重要性の再認識を行います。

リーダーシップとは?

まずは「リーダーシップ」という言葉の意味を整理しましょう。「leadership」を直訳すると「統率力」や「指導力」となります。しかし日本では主に「組織を牽引する能力」のこととして認知されています。

リーダーシップの役割とは、組織の目標設定や目標に達するまでの道筋の設計だけでなく、メンバーのモチベーションを上げたりすることも含まれており、組織の牽引と同様に重要です。

リーダーシップに関する誤解

「組織を牽引する能力」として認知されているリーダーシップですが「組織のトップに立つ」というイメージが強いため、しばしばその意味を誤解されがちです。

1つ目は、リーダーシップは経営層などの組織のトップだけに求められるものではないことです。組織が良い方向に向かって進むように、俯瞰的に組織内部と目標を見つめることは、組織のトップだけでなく、組織の全員が持ち合わせることが理想です。現在の多くの仕事が、マニュアル通りにやれば良いものではなく、知恵や知識などを使い工夫して仕事をしていくことが求められています。そのため、組織の目標を理解しながら、同僚などとも協力するリーダーシップは全員に求められるものです。

2つ目は、リーダーシップとは「能力」であり、「地位」や「才能」ではないということです。入社後であっても訓練することが可能な領域であり、研修・教育制度を整えておけば、採用要件に「リーダーシップ」を設ける優先順位は低くなります。それよりも入社後に変わりづらい「性格」や「価値観」から組織の目標に共感してくれるかを見極めるほうが、離職に繋がりにくい採用を実現できます。既存人材への教育ももちろん可能であるため、「リーダーシップがない」と思われる人材であっても改善することが可能です。

リーダーシップは能力である以上、「行動」や「実務能力」に落とし込むことも大切です。「メンバーに指示だけしていれば良い」というのも間違った認識です。組織として何をすべきか、という視点は持たなければならないのですが、実行するためにメンバーと信頼関係を築き、弱点をフォローし合いながら機能する組織作りを行えることも「リーダーシップ」の重要なポイントになります。

「良いリーダー」と「悪いリーダー」

仕事を長く続けるためには「上司や経営者との人間関係」が良好であることが望ましいです。実際に「イヤな上司」に当たることで退職を余儀なくされたというケースはめずらしくないので、人事戦略としては「良いリーダー」になれる人材、「悪いリーダー」になるかもしれない人材をしっかり見分けることが大切です。

その見分け方のポイントは「視野の広さ」と「想像力」です。

視野の広さについては「メンバーの把握・理解」「信頼関係の構築」「組織内構造と目標までの距離を俯瞰的に見れる」などの冷静さと客観性につながります。

「想像力」は「相手のことを理解しようとする力」とも言い換えられます。メンバーそれぞれの業務負荷に無理がないか、実は「できない」と言えないでいるメンバーがいるのではないか、などのロジックではない心理面をきちんと把握するためには「相手のことを想像する力」が重要です。

「良いリーダー」は想像力に富みメンバーへのプレッシャーを取り除くよう働きかけますが、「悪いリーダー」は想像力の欠如からメンバーにプレッシャーをかけるような行動をしてしまいがちです。

リーダーに求められる仕事とは?

「リーダー」にはどんな仕事や役割が求められるのでしょうか?

ビジネスでリーダーという「役職」に与えられる最大のミッションは「担当する組織の利益最大化」です。そのための目標や戦略の設計、組織が正常に機能するためのメンテナンスなどが、リーダーには不可欠です。

概念的な軸をしっかりともち、常に俯瞰的な視点と柔軟な思考を持っていることが望まれます。同時に、組織を構成するメンバーも人間なので、ロジックだけでなく感情面への共感能力、さまざまな意見を受け入れられる空気作りなど、業界・職種問わず共通して重要な能力が多数求められます。

リーダーシップを発揮するために必要なこと

「常に組織の内外を俯瞰できる広い視野」と「メンバーとの信頼関係を構築するコミュニケーション能力」がリーダーシップという能力の重要な要素です。では、こうした能力を発揮するためにはどんなことが必要なのでしょうか?

まず必要なのは「組織の概念的ビジョンの共有」です。きちんと核となる思想をわかりやすく説明し、メンバーに理解してもらうことが最初に必要です。

その他、メンバーの自主性を尊重する場として組織を作っていくことも大切です。そのためにも「どんな意見を誰がしてもいい」「誰かの意見を根拠なく否定しない」という風土を定着させる必要があります。

リーダーシップへの正しい知識と正しい認識を!

事業成長を行うための人材流出の防止、生産性の向上の両視点から見ても、リーダーシップは重要な概念であることは明らかです。

しかしリーダーシップが重要なことを知っていながらも、具体的にどんなものかを説明できる方は多くなく、また多くの誤解も生まれています。リーダーシップとは「役職」でなく「能力」です。組織のトップだけが持っていればいいものではなく、生産性の高い組織作りにはメンバーが個々にリーダーシップを発揮することが大切なのです。

リーダーシップについては紀元前から着目されており歴史は長く、現代主流となっているリーダーシップの研究も1900年代からアメリカを中心に研究がされてきた分野です。今後は、リーダーシップについて正しい知識を得て、自社業務に活用できるように、より掘り下げた内容を説明していきます。

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