トライアル雇用助成金で得られるメリットとは
売り手市場が加速し、業界経験者などの即戦力が期待される人材採用が難しくなっていく中、未経験者を教育・育成して人材を確保する戦略の重要性が高まっています。
当然のことながら、未経験人材を採用して必ず活躍してくれる保証はどこにもありません。未経験人材を採用したとしても、教育・研修を行う時間や費用だけでなく、教育する現場社員が一時的にでも離脱することで、少なくない影響があります。
今でこそ未経験でも応募できる求人は増えているものの、未経験者不可の求人も多数あります。人材不足が懸念される一方で、非正規雇用などの労働者問題は未だに存在しており、国としてこの問題を解決するための制度として「トライアル雇用制度」が生まれました。
トライアル雇用制度を促進するためには、就業先である企業に制度を導入してもらう必要があります。企業がトライアル雇用制度を導入するメリットとしては、以下のものがあります。
- 今後のポテンシャルを面接だけでなく、実際働く姿を見ながら評価・判断できる。正規社員にする前に見極め期間が持てることは自社にあうかどうかといった点でも判断できます。
- 今まで採用したことのない層(未経験者や就業経験が少ない若年者)からの採用で、会社に新しい影響を与える可能性がある。トライアル雇用は就業経験が少ない人が入社するため、他社や自分のやり方にこだわりすぎる人が少ない。
- 助成金が支給されるため、採用コストの負担も抑えることができる。
トライアル雇用を実施し、助成金を受給するためには、受給要件を満たした上で、申請手続きを行う必要があります。トライアル雇用の手続きは3回行う必要があり、それぞれ提出する書類も異なります。今回はトライアル雇用の手続方法について説明します。
トライアル雇用の手続き方法について
トライアル雇用の助成金を受け取るには、正規の手続きを行う必要があります。手続きの流れと、手続きの際に必要な書類について説明します。
トライアル雇用の手続きの流れ
トライアル雇用を申請するまでの一連の流れを整理しました。
- トライアル雇用である旨を記載した求人票を、ハローワークや職業紹介事業者などに提出
- ハローワークや職業紹介事業者などから対象労働者の紹介を受け、トライアル雇用の対象労働者を3か月の期限付で雇用
- トライアル雇用の開始から2週間以内に、対象労働者の紹介を受けた機関に「トライアル雇用実施計画書」を提出
- トライアル雇用期間終了日の翌日から2ヶ月以内に「トライアル雇用結果報告書」「トライアル雇用奨励金支給申請書」を添えて、労働局に受給を申請
- トライアル雇用期間が終了した後に、トライアル雇用奨励金が一括で支給
手続きを行うタイミングとしては①求人票を提出する②雇用開始日から2週間以内③雇用終了日の翌日から2ヶ月以内と、合計で3回の手続きが必要です。
トライアル雇用の助成金手続きで必要な書類とは
①求人票を提出する②雇用開始日から2週間以内③雇用終了日の翌日から2ヶ月以内の計3回の手続きのタイミングごとに、必要な書類を説明します。
求人票の提出するタイミング
管轄のハローワークなどで、トライアル雇用の求人票を提出します。トライアル雇用である旨だけでなく、労働条件なども提示し、求職者の方の誤解を招かないようにしましょう。
求人票を事前に準備していくだけでなく、ハローワークで相談しながら記入・提出を行うことも可能です。どのような業務に携わる人材を採用したいのか、労働条件などを事前に決めておけば、トライアル雇用の細かい部分で不明点がある場合には、相談して確認しながら記入しましょう。
雇用開始日から2週間以内のタイミング
求職者の紹介を受けた機関に「トライアル雇用実施計画書」を提出します。
参考URL:トライアル雇用実施計画書(PDF)
トライアル雇用を行う事業所だけでなく、労働者の氏名や行う業務内容なども記載します。事前に「トライアル雇用終了時に常用雇用に移行するための要件」も取り決めて労働者の同意を得る必要があります。
雇用終了日の翌日から2ヶ月以内のタイミング
労働局に「トライアル雇用結果報告書」と「トライアル雇用奨励金支給申請」を提出します。
参考URL:トライアル雇用結果報告書 兼 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)支給申請書
トライアル雇用終了後に常用雇用へ移行した・離職したのかだけでなく、助成金の受給要件を満たしているかなどを記載する書類となります。離職した場合であっても、内容に相違がないか、労働者本人の自署が必要になります。
トライアル雇用実施計画書の書き方について
トライアル雇用実施計画書には、実施する事業所の名前や対象となる労働者の氏名など、事務的に記載できる内容が中心となります。記入するのに、あまり時間のかからない書類です。
参考URL:トライアル雇用実施計画書(PDF)
唯一事務的に記載できない内容として「常用雇用に移行するための要件」が必要です。トライアル雇用制度は「常用雇用に移行するのが前提」である制度であり、その前提を基に労働者の紹介がされます。労働者の同意を得るためには、明らかに満たすのが難しい要件とするのは難しいでしょう。
記入例を確認すると「基本的な(必要とされる)知識や技術を身につける」「業務を円滑に遂行できると認められる」のような記載が多く見受けられます。常用雇用に移行した場合には問題になりにくいですが、常用雇用への移行が難しい場合には、誤解を招く抽象的な表現がトラブルになる可能性があります。「具体的にどんな知識や技術を身につけてほしいのかをリストアップする」「正社員はこの業務を10分で行うので、15分以内に終わらせることを目標とする」など、基準を客観的かつ明確に定めると良いでしょう。
トライアル雇用の手続きは回数は多いが、難しくない
トライアル雇用の助成金を受け取るためには、計3回の手続きが必要です。手続きのタイミングによって、提出する書類が異なりますが、基本的には事業所名や労働者名の事務的に記載できるものか、汎用的に使えるものばかりです。
唯一書きにくいのは「トライアル雇用実施計画書」の「常用雇用に移行するための要件」です。抽象的に記載しても、記入例などから考えると、書類としては受け取ってもらえます。しかし、仮に常用雇用へ移行しない判断を行った場合に、抽象的な表現であるとトラブルになりかねないため、具体的な目標を取り決めて、労働者の同意を得るのが良いでしょう。
手続きが煩雑なイメージからトライアル雇用を実施していなかった方は、是非一度この機会に検討してみるのはいかがでしょうか。