条件適合理論とは?状況に適応したリーダーシップを発揮する

リーダーそのものだけでなく、「環境」も大切

リーダーシップの研究の歴史は古く、20世紀にはアメリカを中心として大きな発展を遂げてきました。研究初期では「リーダーシップとは生まれ持った性質である」という前提を持っていた特性理論が主流でしたが、共通する特徴を見つけ出せなかったために「教育などで後から身につく能力やスキル」である仮説が成り立ちました。能力やスキルを特定するために、優秀なリーダーにおける行動に着目した行動理論へと1940年代頃に移行しました。

行動理論では「業務への関心度」と「人間への関心度」の2軸からリーダーシップを評価します。しかし、現実では行動理論により「優れたリーダー」と分類される人材でも、いつも成果をあげられるわけではないことが指摘されました。優秀なリーダーが常に優秀であると限らないため、どのような環境(条件)においてどんなリーダーが優秀になるのかといった条件適合理論へと1960年代頃に移行しました。

「条件適合理論」は行動理論ではカバーできなかった「リーダーを取り巻く環境」まで考慮した理論なのですが、今回は条件適合理論についての歴史と概要を紹介します。

条件適合理論はなぜ生まれたのか?

行動理論はもともと「リーダーシップを先天的な要素でなく、行動として捉え、その再現性を検討する」というモチベーションから生じたものです。アンケート調査を行うだけでなく「業務への関心度」と「人間への関心度」の2軸での評価をマッピングするという手法が取られたことに新しさがあります。

行動理論により、リーダーシップの大まかな特性の分類ができるようになり「マネジリアルグリッド理論」「PM理論」といった、現在でも使用されることもある理論が提唱され、この点については成功といえました。

しかし、行動理論により提示されたリーダー像と、その実際の働きぶりが必ずしも一致しないことが実証研究から明らかになったのです。いわば、行動理論により示されるリーダー像は「特定の条件下でのもの」だったのです。

条件適合理論とは、「どんな仕事」を「どんな条件」で行うのかまで考慮し、行動理論を一般化するために生まれたのです。

条件適合理論における前提

条件適合理論は、行動理論に比べてフレキシブルな性質を持っています。リーダーシップのありかたは一様ではなく、状況や構成員の性質に合わせて変えていく必要があるという点に着目しているのが大きな特徴です。

条件適合理論では

  • リーダーには必ず部下がいるため、部下のことも考慮しなければならない
  • 仕事の難しさなどによって業務の進め方が変わる

ということが前提となっています。

コンティンジェンシー理論

コンティンジェンシー理論は条件適合理論のひとつであり、名前の「コンティンジェンシー(偶発)」が示すように外部環境の変化に応じて組織の管理方針を適切に変化させるという理論です。

1964年にF.フィドラーが提唱した「リーダーシップ条件適応理論」とも呼ばれるコンティンジェンシー・モデルが有名で「リーダーシップ・スタイルは集団が置かれている課題状況によって異なる」と定義されました。フィドラーによれば、リーダーシップとは資質でなく「役割」だと言っており、コンティンジェンシー理論は「役割である」思想を基盤として成り立っています。

リーダーの振る舞いに関わる条件変数が「状況好意性」という概念で定義されていており、以下の3要素で構成されます。

  1. リーダーが組織の他のメンバーに受け入れられる度合い
  2. 仕事・課題の明確さ
  3. リーダーが部下をコントロールする権限の強さ

これら3つの変数が高い場合はリーダーが主体的にアクションをとる方法が取られやすく、低い場合は部下との信頼関係の構築が必要になると考えられています。

パス・ゴール理論

1971年にR.ハウスが提唱した「パス・ゴール理論」は、「組織の構成員が目標(ゴール)を達成するために、リーダーはどのようなパスを道筋(パス)を出せば良いのか」という考えに基づいた理論です。パス・ゴール理論ではリーダーシップが以下の4つに分類されています。

  1. 指示型リーダーシップ
    組織の構成員に対してのタスクを指示し、仕事のスケジュールを具体的に設定する。
  2. 支援型リーダーシップ
    構成員との信頼関係を重視し、自発的な発想やその承認を重視する。
  3. 参加型リーダーシップ
    決定を下すまえに構成員と相談し、彼らの提案を活用する。
  4. 達成志向型リーダーシップ
    ハードルの高い目標を設定し、構成員にそれを追うことを求める。

ハウスは、パス・ゴール理論でリーダーを取り巻く状況を「組織体制などの環境的要因」と「部下の個人的な特性」の2つに分けて分析しました。組織体制や構成員の特徴により、発揮すべきリーダーシップが異なることを説明しました。

SL理論

SL理論は、1977年にP.ハーシィとK.H.ブランチャードにより提唱された理論です。条件適合理論では「部下がいる」という前提がありますが、SL理論では「部下の習熟度」に着目してリーダーシップを4つに分類しています。

  1. 教示的リーダーシップ
    構成員に指示を与える。
    タスク志向が強く、人間関係志向が低い。
    部下の習熟度が低いフェーズでのリーダーシップ。
  2. 説得的リーダーシップ
    構成員に意思を説明し、納得した上で実行してもらう。
    タスク志向・人間関係志向がともに強い。
    部下の習熟度が上がってきたフェーズでのリーダーシップ。
  3. 参加的リーダーシップ
    構成員と相談し、考えを合わせる。
    タスク志向が低く、人間関係志向が高い。
    更に部下の習熟度が上がってきたフェーズでのリーダーシップ。
  4. 委任的リーダーシップ
    構成員に仕事の裁量を委ねる。
    タスク志向・人間関係志向がともに低い。
    部下が自立できたフェーズでのリーダーシップ。

SL理論でも他の条件適合理論と同様に「状況に応じて発揮すべきリーダーシップ・スタイルを変える」ということを基礎としています。

現代のリーダーシップ論へ

条件適合理論、特にパスゴール理論は現在でもマネジメント領域で広く活用されているリーダーシップ論です。

優秀なリーダーは「業務への関心度」と「人間への関心度」がともに高く、かつ「ビジネス環境」や「部下の能力」など状況に応じて行動を変化させている人材であることが、条件適合理論で説明されています。

条件適合理論を元にした「集団やビジネス環境に応じて起こるパターンでのリーダーシップのとり方」研究として、現代でも研究され続けているコンセプト理論に発展したのです。

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