まずは自分たち自身がどのような人材を定義する
採用・人事部署は、様々な形のテスト・面接を使って、応募者を選別しています。しかし、どのような人材を求めるのかを明確化するために「自分たち自身がどのような人材であるか」をまず知る必要があります。そうしなければ、「自分たち自身にあった人材であるか」が分からないからです。
今回は、筆者がアメリカでの大学院時代に履修した産業組織心理学の授業で扱った教科書をもとに、現在アメリカで実践的且つ体系的に行なわれている業務分析(Job Analysis)の仕方を紹介したいと思います。
業務分析(Job Analysis)について
業務分析とテスト作成の中軸に、KSAOとなる業務分析のフレームワークがあります。
- Knowledge
知識。高等教育などで培われた知識のこと。 - Skill
技術。専門的な技術。 - Ability
能力。要求された課題に、知識と技術を統合して実行できる能力。 - Other characteristics
その他。性格、価値観、興味、経験値など。
求める人物像を定義するためには、採用したいポジションに適したKSAOを考える必要があります。適したKSAOを考えるためには、自分たちがどのようなKSAOを持っているのか、自社の業務分析を行う必要があります。
今回のブログの本題は、業務内容をどのように特定していくかです。多くの米企業で使われているKSAOでの業務分析のスタンダードな方法は、以下の5つの方法となります。
- 観察 (Observations)
実際に仕事中の社員を観察する方法。
ここでポイントとなるのは、ある程度客観的な視点を持つということ。同じ人物を複数の観察者で調べたりして、まとめた答えを統合していく方法が良いだろう(もちろん仕事の邪魔になってはいけない)。人数は狭まるが、その分深い考察ができるのが利点。 - インタビュー (Interviews)
社員にインタビューをしていく方法。
1の観察をした後に、聞くべき質問を事前に用意してから複数人にインタビューをしていくと効果的だろう。1より広い視野に立つことができ、観察では得られないよりパーソナルな事を聞き出すことができる。 - 致命的な出来事の考察 (Critical incidents)
現場で過去に起きた「致命的な損失に至った出来事」や「劇的な利益につながった出来事」を取り上げて、それぞれに至った経緯や原因について考察していく。会社の命運を分ける決定的な要素を洗い出すことが可能。 - 日記 (Diary)
各社員に、一定の間隔をあけて(例えば1時間毎)その都度にしている業務内容を記録してもらう方法。この方法は実際の「知識」や「技術」を特定するのに有効。 - 調査・アンケート(Surveys)
この方法では、1〜4で特定した要素を会社全体として可視化することができる。また、1〜4では得られなかった性格や価値観などを聞き出すことも可能。より素早く全体像を把握することができる。
これらの方法を統合して、自分たちの会社に必要なKSAOを特定していきます。複数の方法を統合して分析するメリットは、多角的なアプローチによる客観的な視点を持てるという点にあります。
おそらく少人数のスタートアップなどには適さないですが、ある程度成長段階にある組織なら、もう一度客観的に社員の風土や本当に必要な能力などを見つめ直せるかもしれません。
業務分析→KSAOの特定→テストや面接の作成
今回紹介したことを簡単にモデル化すると、下のようになる。
自分たちのKSAOを理解してこそ、求める人材像を決めることができる。
これらの方法を使って、はっきりした「的」を絞ることができれば、きっとその的を得た妥当性のある性格診断や、面接の質問などを作りやすくなることでしょう。