ユースエール認定制度の認定基準と、認定企業になるための条件とは?

ユースエール認定制度とは?認定基準をクリアするには?

女性や外国人活用の促進、高齢者の再雇用など、企業の多くは人事面で今までにないドラスティックな変革を求められる時代になりました。裏を返せば、企業の人事分野にはまだまだ多くのチャンレジの可能性があるということでもあります。

次の時代を担う若年層層をいかに活かしていくかということは、日本経済全体の命題の一つです。若年層の労働支援やキャリア形成を体系化していく取り組みがマストであることは、多くの企業で実感しているところでしょう。

そういった状況の中、国も近年、若年層の就業支援には特に力を入れており、2015年10月1日には長期的観点で若年層の就業とキャリア形成を支援するための法律「若年層雇用促進法」を施行しています。さまざまな政策がありますが、その中の一つに「ユースエール認定」制度があります。

「ユースエール認定」とは、「若年層雇用促進法」に基づき、若年層の採用・育成に積極的で若年層の雇用管理の状況などが優良な中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の企業)を厚生労働大臣が認定する制度のことです。ユースエール認定を受けた企業になることで、企業ブランドにプラスのイメージを醸成する効果が期待できます。また、若年層の採用時にはさまざまな優遇措置がされる、各種助成金が上乗せされるなどさまざまなメリットがあります。

ユースエール認定制度を受けるためには、クリアするべき認定基準があります。今回は、ユースエール認定の「認定基準」について、認定基準の内容と条件をわかりやすくご紹介します。

ユースエールの認定基準と認定の条件とは?

ユースエール認定を受けるためには、企業規模や若年層支援の内容など、満たさないといけない認定項目があります。

認定対象となる企業規模の条件とは?

「ユースエール認定制度」は「中小企業対象である」ということです。

「中小企業」とは、常時雇用の労働者が300人以下の企業のことをいいます。その上で、若年層の雇用や育成に積極的に取り組んでいることや、若年層の人材受け入れのための体制や環境の整備を積極的に展開していること、雇用情報の公開や規定に則った人材活用を実施しているなど、さまざまな要件が遵守された企業が対象となります。中小企業で必要な手続きを行った場合に、認定かどうかのチェックを受けることができます。

ユースエールの認定基準項目とは?

認定基準は全部で12項目あり、これを全て満たす中小企業が認定の対象となります。

  1. 若年層対象の正社員求人申し込み または 募集を行っていること
  2. 若年層の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること
  3. 新卒採用に積極的でかつ、労働環境が適正で、有給休暇などの制度も活用されていること
  4. 採用数、離職者数など、若年層の雇用情報について公表していること
  5. 過去に「ユースエール」の認定を取り消された場合、取り消し日から起算して3年以上経過していること
  6. 過去に、以下の[7]から[12]の基準を満たさなくなったため認定辞退を申し出て取り消した場合、取り消しの日から3年以上経過していること※7
  7. 過去3年間に、新規学卒者の採用内定取り消しを行っていないこと
  8. 過去1年間に、事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
  9. 暴力団関係事業主でないこと
  10. 風俗営業等関係事業主でないこと
  11. 雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと
  12. 重大な労働関係法令違反を行っていないこと

1.学卒求人など、若年層対象の正社員の求人申し込みまたは募集を行っていること

学卒求人とは、少なくとも卒業後3年以内の既卒者が応募可能である求人です。第二新卒が応募できないキャリア採用のみ、定年後の人材採用のみの場合などは適しません。

正社員とは「機関の定めがなく(無期雇用)、社内の他の雇用形態の労働者(役員を除く)に比べて、高い責任を負いながら業務に従事する労働者」のことです。契約社員やアルバイトなどの求人は該当しません。

2.若年層の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること

ユースエール認定制度は、中小企業と新卒(少なくとも学校卒業から3年以内)の求職者とのマッチング支援を主な目的としています。ユースエール認定を受けるためには、新卒の求職者を対象とした正社員求人や募集を行っていることが前提となります。

3.新卒採用に積極的でかつ、労働環境が適正で、有給休暇などの制度も活用されていること

具体的な数字として、認定基準が公開されています。

  • 直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下であること
  • 「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
  • 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと
  • 前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上であること
  • 直近3事業年度で、男性労働者の育児休業等取得者が1人以上又は女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であること

新卒者は「新規学卒者を対象とした正社員求人から採用した既卒者」も含まれます。実際に採用した人がどうだったかではなく、求人や採用枠の基準で判断がされます。

直近3事業年度の採用者数が3人または4人の場合は、離職者数が1人以下であれば可となります。また直近3事業年度において新卒者等の採用実績がない場合、他の要件を満たしていれば本要件は不問となります。

有給休暇に準ずる休暇として①企業の就業規則等に規定する②有給である③毎年社員に付与する、という3つの条件を満たす休暇について、労働者1人あたり5日を上限として加算することができます。

男女ともに育児休業等の取得対象者がいない場合は、育休制度が定められていれば可とします。また「くるみん認定」を取得している企業については、くるみんの認定を受けた年度を含む3年度間はこの要件を不問とします。

政府が主導して進めている「働き方改革」では、近年違法な長時間労働が問題視されており、平成29年4月1日から認定基準が変更となりました。

また正社員の有休取得率が年間の付与日数の70%以上である、もしくは有休取得日数が年間10日以上であることも必須条件となるため「有給休暇は付与しているが使う余裕がない」などの実態がないかも確認されます。

4.採用数、離職者数など、若年層の雇用情報について公表していること

公表しなければならない点としては、次の3つがあります。

  • 直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数
  • 研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度・社内検定の制度の有無とその内容
  • 前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員・管理職の女性割合

このほか雇用情報を公表していることや、人材育成の方針・教育訓練の計画を策定していることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。こういった情報の公開が求められるのは、近年、実情と異なる求人情報を出す事件等が発生、社会問題化したためです。

5.過去に「ユースエール認定」を取り消された場合、取り消し日から起算して3年以上経過していること

ユースエール認定後に認定基準を満たせなくなったのを隠していた場合など、ユースエール認定を取り消された場合は、少なくとも3年は再申請ができません。

6.過去に7~12の基準を満たさなくなったため認定辞退を申し出て取り消した場合、取り消しの日から3年以上経過していること

  1. 過去3年間に、新規学卒者の採用内定取り消しを行っていないこと
  2. 過去1年間に、事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
  3. 暴力団関係事業主でないこと
  4. 風俗営業等関係事業主でないこと
  5. 雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと
  6. 重大な労働関係法令違反を行っていないこと

これらの基準を満たさなくなり、認定辞退を申し出た場合でも、少なくとも3年はユースエール認定の再申請ができません。

  1. 新卒採用に積極的でかつ、労働環境が適正で、有給休暇などの制度も活用されていること
  2. 採用数、離職者数など、若年層の雇用情報について公表していること

これらの条件を満たさなくなり、認定辞退を申し出た場合は、3年以内でもユースエール認定の再申請が可能です。

7.過去3年間に、新規学卒者の採用内定取り消しを行っていないこと

内定を出したのに取り消したなどの場合は、若年層とのマッチングを行うのに適さないとみなされます。

8.過去1年間に、事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと

いわゆる会社都合退職となるような解雇をしていないかどうかになります。

経歴詐称など、虚偽があることが判明して解雇にした場合は、この認定項目には当てはまりません。

9.暴力団関係事業主でないこと

厚生労働大臣が認定する制度であるため、暴力団関係事業主でない前提になります。

従業員に暴力団団員がいないことはもちろんのこと、役員などの経営に実質的に関与しているものが、社会的に非難されるべき関係を有していないなども条件になります。

10.風俗営業等関係事業主でないこと

風俗営業法で届け出をしている事業主でないことはもちろんのこと、別の届け出を行っていたとしても、実態が「風俗営業に該当する」とみなされる場合は、風俗営業等関係事業主とみなされる可能性があります。

11.雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと

ユースエール認定は、中小企業と若年層のマッチングを促進する制度のため、関係する助成金の不正受給は許されない事項となっています。

12.重大な労働関係法令違反を行っていないこと

11同様、若年層の雇用を促進するためには、法令違反は許されません。賃金が支払われていない、危険に晒される可能性のある労働者に対して安全対策を行わない、違法な時間外労働をさせたなどは法令違反に該当します。

認定基準を満たしてユースエール認定を受けよう!

ユースエール認定を受けるには、今回ご紹介した認定基準のすべてを満たす必要があります。新卒採用や中途採用(35歳未満)に注力する中小企業であれば、この認定制度の取得を目指すことはさまざまな観点で非常に有用と言えます。

大切なことは実態があってこその意味ある認定制度だということです。いかに自社の人材活用を構築していくか、その中で若年層にどう活躍してもらいたいか。まずは、骨子となる人事戦略を今一度確認するところから始めてみるのもよいかもしれません。

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