ナレッジワーカーとマニュアルワーカーの関係性とは?歴史背景から読み解く

ナレッジワーカーとマニュアルワーカー

20世紀末のテクノロジーの進化から、21世紀のクラウド化・モバイル化などで、人々の生活はここ数十年で劇的に変化をとげてきました。社会の変化とともに、仕事の内容やワークスタイルもさまざまな変革がもたらされてきました。

世界的な経済発展による金融工学やコンピュータ技術の進歩により、これまでの形のあるものを生産する労働から、形の無い知的生産物を創造する業務に多くの労働者がシフトする現象が発生したのが1960年代以降です。この時、マネジメントの生みの親として世界的に有名な経営学者、ピーター・ドラッカー氏が提唱したのが「ナレッジワーカー」です。

2000年代以前から、ビジネスの世界では「ナレッジワーカー」「マニュアルワーカー」などの言葉で呼ばれ、働き方を語る際に使われてきた言葉が今、再度注目を集めています。

今回は「ナレッジワーカー」「マニュアルワーカー」について、その意味するところや概念などについてご紹介します。

ナレッジワーカーとマニュアルワーカーとは

ナレッジワーカーの意味や定義とは

「ナレッジワーカー」とは、マネジメントの生みの親として知られる経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーが提唱した用語として、ビジネスの世界を中心に世界中に広まりました。「ナレッジ(知識)」と「ワーカー(労働者)」を組み合わせた造語で、「知識労働者」とも呼ばれています。ドラッカー氏の著書『断絶の時代』(1969年)では、『知識経済を根本から支える高度な専門知識をもつ労働者』として位置付けています。

「ナレッジワーカー」は単に「知識だけ」を有していればいいわけではなく、知識を集合させその内容をまとめる力や第三者に共有するスキル・生産性なども重視されます。

「どうすれば、この業務を効率的かつ迅速に完了できるか」を常に意識し、ゼロベースの仕事でも効率性や生産性を求めるのがナレッジワーカーです。

マニュアルワーカーの意味や定義とは

ナレッジワーカーの対語として定義される「マニュアルワーカー」とは、その名の通り、決められたマニュアルに沿った業務を行う労働者を表現する造語です。一般的に高度成長期を支えてきた製造業など、モノづくりに従事する「ブルーカラー」と呼ばれてきた労働者が含まれます。マニュアルワーカーはマニュアル通りに業務を遂行し、労働力によって生産性と作業の効率性を高めることが重要視される働き方です。

労働時間や労働人数の多さで生産性が向上していた高度成長期には、階層レベルに合わせた画一的なマニュアルによる人材育成が積極的に行われてきました。しかし目覚ましい技術の進化によって、生産性向上に繋がっていた時代は過去のものとなり、マニュアルワーカーの仕事の多くは最先端のテクノロジーやマシン、AIの分野に取って変わられつつあります。

ナレッジワーカーが創出するものとは?

ナレッジワーカーの仕事は多岐にわたります。どのような職種・業務でも、彼らは知的生産物を創造するため、高度な情報収集能力や分析能力が必要とされます。情報を集め分析することで、企業の生産活動に付加価値を与えるのがナレッジワーカーに期待される役割です。

今現在存在する仕事でいうと、コンサルティングや金融アナリスト、システムアナリストディーラー、マーケティングアナリストなど、日々情報がアップデートされていく職種は代表的なナレッジワーカーといえます。

建設業や石油・ガス掘削業の現場監督、農場牧場などのマネージャーなど、多角的な視点で経営や業務を円滑に遂行する業務はほぼすべて知識に基づいた大局的な判断が求められる仕事であり「ナレッジワーク」と言えるでしょう。

理学療法士や特定看護師、専門医をはじめ、医療・ヘルスサービスマネージャーなど、特に医学系の仕事はナレッジワーカーの特性の最たるものです。会計士や弁護士、システム開発者、アプリケーションエンジニアなども特に専門性が高いと言われています。

以上は現在すでにある仕事ですが、AIの進化で人に代わってテクノロジーが解決する、サポートする仕事が増える、既存の仕事は大きく様変わりすると言われています。米国の情報サイト『Cheat Sheet』の情報を元に、将来生まれるであろう有望な職業などを以下にリストアップしてみました。これらも「ナレッジワーカー」に該当します。

  1. ボット・ロビイスト(Bot lobbiest)
    ボットやソーシャルメディアの機能を上手く利用し、クライアントのビジネスやマーケティングを支援する職業です。
  2. 未来貨幣投機家(Future currency speculator)
    仮想通貨のスペシャリストです。
  3. 生産カウンセラー(Productivity counselors)
    人生全般の生産性を上げるために、健康管理や時間管理などのアドバイスを行う専門家です。
  4. 微生物バランサー(Microbial balancer)
    病原体となる危険なバクテリアなどの微生物を査定する専門家です。
  5. ミームエージェント(Meme agent)
    ユーチューバーなどのネットスターたちの代理を務める職業です。
  6. ビッグデータ・ドクター(Big data doctor)
    患者の病歴や個人データなどの様々な情報を活用し、患者個人に適した治療を施す医師です。
  7. クラウドファウンディング・スペシャリスト(Crowdfunding specialist)
    クラウドファンディングを用いた、企業資金を効率的に集めるためにアドバイス・コンサルティングを行う専門家です。
  8. 未来の仕事スペシャリスト/リクルーターの仕事(Jobs of the future specialist/recruiter)
    将来のキャリアや新しく生まれる仕事に対して、助言を行う専門家です。
  9. 組織混乱家/企業かく乱家(Disorganizer/corporate disruptor)
    システムや業務プロセスが古くなっている・停滞している企業を揺り動かすことで、新たな時代を作る人です。
  10. プライバシー・コンサルタント
    Webに様々な個人情報が保管されるようになるため、デジタル情報を管理することで、人々のプライバシーを守る支援を行う専門家です。

参考URL『The Cheat Sheet』10 New Jobs People Will Have by the Year 2030

マニュアルワーカーからナレッジワーカーへ
~「価値」を創造する仕事へのパラダイムシフト

組織における「仕事」の内容が大きく変化しています。単純に経営環境の変化やグローバル化やネットワーク化が進んできたからということではなく、本質的な部分で仕事に求められるものが変化してきたためです。

「ホワイトカラー」においては、仕事のパラダイムシフトが起きており、従来のルーティン作業中心のアドミニ的な仕事から、よりダイナミックかつ今までにない価値を創造する仕事へのシフトが一気に加速しています。

キーワードとなるのが「ナレッジ」です。不確定要素が多く、頼るべき前例がないケースが多々発生する状況において、戦略的かつ自発的な行動ができることがポイントとなります。行動の拠り所となる「知識(ナレッジ)」をあらゆる角度から収集分析し、遂行して結果を出していくといった、いわばプロジェクトマネジメント的なスタイルが現在の仕事の姿です。

高度成長期の工業化社会では、必ずしもそうではありませんでした。この時代のホワイトカラー(今でいう「マニュアルワーカー」)にとっては、与えられたテーマや課題を効率よくこなすことが重要で、達成のためにマニュアルに基づく教育や働いた時間・量で評価するという均質的・画一的なマネジメントが長い間有効と思われて実行されてきました。組織のルールを遵守することが第一で「働き方」のモデルが決まっていたのです。

現代のナレッジワーカーは、今までにない新しい価値を生み出すことが求められます。自ら課題を設定し、かつ完遂できるスキルはもちろん、アウトプットの質(貢献度や成果)も今まで以上に問われることになったのです。

今後の展望

テクノロジーの急速な進化とともに、グローバルの企業間で競争が激化しています。日本の企業もより高いレベルの事業推進力や組織の強さが求められています。

高度成長期の経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」と言われてきました。経営資源を集約し効率的に生産することで事業を発展・拡大させるのが、この時代のスタイルでした。しかし外的環境や価値観が多様化する現代の経済社会では、競合他社が真似のできない企業独自のナレッジ(知識)を創造し構築することが不可欠です。量ではなく質をビジネスに活かす手法が、組織力を高めるために効果的なのです。

IT技術の進歩は、企業内での業務を効率化すると同時に「ナレッジ」の集約をより容易にしてきました。「ナレッジワーカー」のナレッジをデータベース化し、組織内で共有することは時代を追うごとに迅速にできるようになっているのです。

ナレッジワーカーですが、ニーズは高まる一方で、AIなどの領域が発展するのに伴い、役割にも大きく影響を与えると言われています。

ドイツ銀行のCEOは、同行従業員9万7000人のうち半数がロボットに交代すると予測しています。法曹界の仕事の39%は今後10年で自動化が可能になるという調査もあります。別の研究では、会計士などの高度専門職種と言われる仕事もAIなどに仕事をとって変わられ、失業の確率が95%にのぼるのではと言われています。制作や製造などのモノづくりの業界は、その将来はずっと早く訪れるかもしれません。

前述の報告書は「レンガ積みロボット」の登場にも言及しています。機械学習のアルゴリズムが「光学部品の仕分け」「自動化品質管理」「故障検出」「生産性と効率性の向上」の担当者に取って代わることも予測されています。

日々進化を続けるテクノロジーが、働く現場にダイナミックなシフトチェンジをもたらしています。しかしAIを使いこなすスキルや管理する必要はまだまだあり、そのためにも組織の「ナレッジ」を有効活用する働き方が求められているのです。

ナレッジワークの重要性を、企業全体で培い活動に活かす

以前はマニュアルワーカーが重視されていましたが、技術進歩などにより現代・将来はナレッジワーカーが求められています。

ナレッジワーカーは知識社会を根本から支える役割を担う存在として、より多くの人材のナレッジワーカーへのシフトが急がれているのは間違いありません。もちろんマニュアル的な業務も数多くあり、そういった仕事の重要性は「ナレッジ」とは別の価値としてあります。しかし競合他社との差別化のためにも、企業独自の知識創造=「ナレッジ」が求められています。

ナレッジワーカーは、暗黙知の深化と形式知への変換が必須です。企業としても、社員に対して知識をインプットする機会を提供すると同時に、アウトプットする方法や機会を与えることが意識して行っていくようにしましょう。

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