テレワークとは?導入のプロセスと必要な対策とは
テレワークとは、国や政府が推進している働き方改革の柱の1つです。厚生労働省や総務省は、テレワークの導入マニュアルを公開したり導入を促進する助成金を設けるなどで、テレワーク導入を推奨して強化しようとしています。
国土交通省の調査によると、雇用されているビジネスパーソンでテレワークで働いたことがある割合は、最も多い若年層の男性でも約22%となっており、まだ広く普及していない現状がわかります。どの年代においても、女性のテレワーカー比率が男性よりも低い状態にあります。
テレワークが普及していない実態として、勤務先企業に制度がないことが挙げられています。従業員調査によると、勤務先にテレワーク制度があると回答した人は増加傾向にあるものの、平成29年度時点で10%以下となっています。
テレワークを実施している企業に対するHRプロの調査では「生産性向上/業務効率向上」「ワークライフバランス」「仕事と育児の両立」などが、テレワーク実施の目的として挙げられています。
出典元『HRプロ』HR総研:「多様な働き方」実施状況調査【1】全般、テレワーク
テレワークは、多様な働き方をサポートすることで新規人材を獲得しやすくなるだけでなく、既存の従業員の生産性向上も図れます。テレワークを導入するメリットは多く効果が出るのも早いため、今後さらなるテレワークの導入拡大が期待されています。
今回は、テレワーク導入の全体的な流れと導入に必要なプロセス、導入のためのルールとセキュリティ対策についてご説明します。
テレワークとは?導入のために全体像をつかもう!
テレワークとは、在宅勤務だけでなくサテライトオフィスやモバイルワークなども含めた、職場から離れたところで働く勤務形態の総称です。
テレワークを導入するためには、目的やルールを決めたり、勤務環境やセキュリティを整えたりと、多くの準備が必要です。厚生労働省がテレワーク推進のために公開している表をもとに、テレワーク導入のプロセスを確認し、テレワークの全体像を確認していきましょう。
テレワーク導入に関わる全体的な方針を定める
テレワークの導入・運用をスムーズに行うためには、テレワーク導入の目的と基本方針を定め、会社全体でテレワークを推進し、全体的な方針を定めることが大切です。
テレワーク導入の目的を明確にする
全体方針を決定するためにまず行うことが、テレワーク導入目的の明確化です。
テレワーク導入の目的を明確にするために、テレワークを導入することでどのような効果を得たいかを社内で統一・共有し、導入することが目的にならないように注意しましょう。
テレワーク導入の基本方針を策定する
テレワーク導入の目的や導入の対象を明確にするため、具体的な導入目的や実施部門、対象者や対象業務などを盛り込んだ、テレワーク導入に当たっての基本方針(テレワーク・ポリシー)を策定します。
テレワーク導入の基本方針を策定する際には、労使で十分に協議を行い、テレワークの導入について社内全体で認識を共有することが大切です。
会社全体でテレワークを推進する
テレワーク導入の準備や導入後の運用をスムーズに行うために、経営企画部門や人事・総務部門、情報システム部門など、テレワーク推進に関わる社内制度や施策を担当する部門が中心となり、会社全体でテレワークを推進する体制を構築します。
テレワークの導入目的や対象業務などについて、労使委員会で十分に協議し、協議内容を文書として保存することが望まれます。労働組合がある場合は労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との合意が求められます。
テレワーク運用のルールを作成する
テレワークの対象者の選定には、関係者の理解を得られるよう、明確な基準を設けることが大切です。対象者の基準については、実施に条件を設けることで、テレワーク推進がしやすくなります。
テレワークの対象業務の選定では、業務全体の洗い出しを行い、テレワークで実施しやすい業務と実施しにくい業務を整理することがポイントです。
企画や書類作成などの思考業務やPCを使う業務は、社内の現行制度やルールのほとんどを維持したまま導入できるため、テレワーク導入の足掛かりとして最適です。
テレワークの導入時には、実施頻度や労務管理(勤怠管理や在籍管理)、業績評価・人事管理等の取り扱いなど、他にも多くの策定すべきルールがあります。
テレワーク勤務の環境を整える
テレワーク利用者が円滑に業務を進めるためには、労務管理ツールやWeb会議システムなどのコミュニケーションツールを導入して、オフィス勤務者との仕事が円滑にできる環境を作る必要があります。
テレワーク勤務の環境を構築するには、コストの検討だけでなくシステムの導入にかかる関係部門の業務の調整や、システム導入完了までにかかる期間などを確認し、導入スケジュールを作成しなければなりません。
テレワーク導入時に現行のシステムをまま引き継げるのか、新たに開発する必要があるのかによっても、工数や期間が変わります。
テレワークのシステムには、テレワーク利用者のPCを会社の端末にネット上で接続する、会社の端末をそのまま持ち帰り使うなど、様々な方法があります。
テレワーク導入のためのセキュリティ対策を整える
セキュリティ対策は、テレワーク勤務の環境と連動して考える必要があります。会社の外で社内の情報が見られるようにするのですから、セキュリティ対策はきちんと検討しなければなりません。
セキュリティ対策として検討する項目は「ルールによるセキュリティ対策」「技術的なセキュリティ対策」「物理的なセキュリティ対策」の3点を軸に考えます。
ルールによるセキュリティ対策
情報を扱う業務に対しては、情報セキュリティに関する基本方針や行動指針などを定めた、組織として統一のとれたルールが必要です。
テレワーク導入の際にも、セキュリティに関するルールを明文化した、セキュリティのガイドラインを作成します。情報を取り扱う際の行動指針やルールの遵守、安全に情報を扱う方法を学ぶ研修も大切です。
技術的なセキュリティ対策
技術的なセキュリティ対策として、ウイルス感染や不正アクセスがされにくいネットワークを用意することは必要不可欠です。
十分なセキュリティ対策を施していないネットワークを使い続けた結果、情報資産全体に悪影響となり、事業を一時的に停止しなければならない事態になる恐れもあるため、非常に重要な部分です。
技術的なセキュリティ対策には、ウイルス対策ソフトはもちろん、情報の暗号化やログインの複雑化など、万全の対策を施しましょう。
物理的なセキュリティ対策
物理的なセキュリティ対策とは、ルールや技術的なセキュリティ対策では防げない、盗難やスパイ活動、破壊などへの対策です。
会社貸与のPCを施錠管理できる棚があるか、執務中に不特定多数の人にPCの画面を覗かれないかなどのセキュリティの確認は、非常に重要です。
執務環境のセキュリティ確認の際に、テレワークの利用申請書類に執務環境を明記させる、セキュリティに関する誓約書を交わすなど、物理的なセキュリティ対策にも十分な注意を払いましょう。
テレワークの導入に向けて、早い段階から取り組もう!
テレワークを導入するためには、導入の目的を明確にするだけでなく、テレワークの対象となる業務内容の分析・細分化など、様々な準備が必要です。しかし業務内容の分析や細分化は、テレワーク実施の有無に関わらず、労働生産性向上のためには避けて通れない道です。
テレワークの導入には時間がかかりますが、労働力人口の減少による多様な働き方への対応としても、非常に重要な施策となります。テレワークを導入していれば、従業員のために柔軟な勤務形態を取り入れている会社として、企業ブランディングにもなります。
従業員だけでなく会社にとってもプラスが大きいテレワークの導入に向けて、導入には時間がかかることを見越し、早い段階から取り組まれてみてはいかがでしょうか。