人材マッチングの需要と難易度は年々上昇している
人材マッチングとは、企業や組織と人材をつなぎ合わせることを意味する言葉です。双方が希望する条件や職種などを考慮し、適した企業と人をマッチングさせるシステムやサービスを指します。
人手不足による売り手市場を背景として、人材マッチングの難易度は年々上昇しています。
人材マッチングは、主に人材紹介会社や人材派遣会社で行われているのですが、注目すべきは市場規模です。人材紹介業・人材派遣業ともに、人口減少に反して市場規模は拡大傾向にあります。
厚生労働省が発表した「職業紹介事業報告書(平成28年度)」によると、人材紹介業の市場規模は約3,876億円で、対前年度比で9.6%増加しています。事業所数、求人数も前年を上回っており、人材紹介業の市場規模は年々拡大しています。
出典元『厚生労働省』平成28年度職業紹介事業報告書の集計結果
同じく厚労省発表の「労働者派遣事業報告書(平成28年度)」によると、人材派遣業の市場規模は6兆5,798億円で、対前年度比で15.9%増加しています。
出典元『厚生労働省』平成28年度労働者派遣事業報告書の集計結果
2018年の有効求人倍率は1.61倍で、45年ぶりの高水準という売り手市場となっており、人材マッチングを専門とする人材紹介業や人材派遣業の好調を支えています。人材マッチングは需要が高まると同時に、マッチングの難易度も高まり続けています。
今回の記事では、人材マッチングサービスの種類と、人材マッチングにおいて重要な4つの要素をご紹介します。
人材マッチングサービスの種類と重要な4つの要素とは?
人材マッチングは、主に人材紹介会社や人材派遣会社のサービスとして、様々な要素を参考に行われています。
人材紹介会社の人材マッチングサービスとは?
人材紹介会社のサービスは、人材マッチングの確度を上げることを目的として、求職者や企業に利用されています。
求職者は企業の情報や内部事情に精通することが難しいため、少ない情報から自分の希望に合った企業を探さなければならず、理想の企業を見付けることは非常に困難です。企業もまた、人事業務が煩雑化する中で、採用の効率化は大きな課題です。
人材紹介サービスは、求職者は企業の情報や内部事情を手に入れるため、企業は人事業務に必要な労力や情報を補助するために、年々需要が高まっています。
人材派遣会社の人材マッチングサービスとは?
人材派遣会社のサービスも人材紹介会社と同じく、人材マッチングの確度を上げることを目的として、求職者や企業に利用されています。
人材派遣業の元々の目的は、常に自社に抱える必要はない高度な専門知識を持つ人材を、一時的に雇用するために人材マッチングを行うことです。
人材派遣サービスは、人材の使い捨てや低賃金などが社会問題になっている側面もありますが、女性活躍推進による働き方の多様化を受けてスキルと希望条件の両方を重視する必要が生まれ、人材マッチングの難易度が高まると共に需要も高まっています。
人材マッチングにおいて重要な4つの要素とは?
人材マッチングでは、企業と人材をつなげるために、業種や賃金以外にも多くの要素を参考にしています。
人材マッチングで参考にされる要素は様々ですが、特に重要な要素を4つご紹介します。
- 希望条件
- スキル
- 人柄
- 属性
1.希望条件
人材マッチングにおける希望条件とは、報酬や職種、業務内容や勤務時間などの基本的な雇用条件を指す要素です。企業でいうところの「採用要件」に該当します。
求職者が企業を選んだり内定受諾を決めたりするに当たって、希望する条件は人それぞれです。とにかく年収を上げたいという人もいれば、正社員にこだわっている人もいます。収入はさほど上がらなくてもいいから、柔軟な働き方を求めているという人もいるでしょう。
希望条件は基本的な要素なので、募集・応募の時点でマッチングが済んでいる場合がほとんどですが、人によって重要視する項目や絶対に譲れない範囲は異なります。希望条件のマッチングに不満やズレが無いかの確認には、十分に注意しましょう。
2.スキル
人材マッチングにおけるスキルとは、応募者の基本的なコミュニケーションスキルや問題解決能力などに加えて、募集職種の業務を遂行する上で必要となる専門的な知識や技術を指す要素です。
業界や職種が多少変わっても応用して使えるような、汎用的な知識や経験(ポータブルスキル)も、スキルに含まれます。
どのようなスキルを重視して人材マッチングを図るのか、具体的な評価項目や評価基準の策定手順は以下の記事にて説明しています。
3.人柄
人材マッチングにおける人柄とは、求職者の性格や価値観、物事のとらえ方などを指す要素です。
人柄の要素は軽視されがちですが、人材マッチングにおいて非常に重要な要素です。
他の要素が全てマッチした場合は入社が決まることが多いですが、企業の社風や組織のメンバーと馴染めない場合には、入社しても早期離職の可能性が高くなります。
スキルは入社後の教育や研修で身につけることができますが、生まれ持った性格や長年かけて培われた価値観などは余程のことがない限り変化しないため、求職者の人柄が自社に合うかどうかを採用前にしっかりと見極める必要があります。
4.属性
人材マッチングにおける属性とは、応募者の居住区や保有資格、募集職種における過去の経験年数などのプロフィールを指す要素です。
プロフィールというと、出身地や家族構成、宗教や思想などを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、採用面接で質問することが法的に禁じられている項目があるので注意が必要です。
人材をマッチングさせるための方法とは?
人材マッチングで重要な4つの要素について、網羅的に把握できればよいのですが、採用選考には速度が求められます。
せっかく良い人材が面接に来てくれても、内定を出すのが一歩遅れて、求職者が他社に入社が決まってしまうことは日常茶飯事です。面接の時間が限られているため、希望条件とスキルのみなど限定的な要素の確認にとどまってしまうことも、人材マッチングの難易度を上げている大きな要因です。
スキル・属性・希望条件の3つの要素については、絶対に譲歩できない条件と、他の条件を満たすなら補える可能性がある条件について、明確な線引きをする必要があります。全ての条件を満たす人材はいないと考えておく方が現実的です。
人柄の要素については、限られた面接時間で応募者一人ひとりの性格や価値観を見極めることは極めて困難なため、面接の前にあらかじめ適性検査を受けてもらう方法が効果的です。
事前に人柄をある程度判定して、面接で掘り下げるべき項目を具体的にすることで、人材マッチングの精度が格段に向上し、早期離職の防止につながります。
弊社サービス「ミツカリ」では、AIによって会社全体や部署ごとの価値観と人材の価値観を可視化し、採用・配属におけるマッチ度を測り、人柄でのミスマッチを防ぐことができます。
人材マッチングはAIを活用したHR Techによって精度と効率が上がる!
企業と人材のマッチングは、企業にとっても求職者にとっても、非常に大きな課題です。
人材紹介業や人材派遣業の市場規模は年々拡大して需要は右肩上がりといえますが、人材紹介業で取り扱う求人数の対前年度比は20%の増加であるのに対して、就職件数は6%の増加に留まっています。人材マッチングを取り扱う専門事業者も、マッチングに苦戦していることが読み取れます。
人材マッチングの需要と難易度が上がり続けている状況を受けて、近年では人材マッチングの精度向上を目的に、AI(人工知能)を活用したHR Techが台頭してきています。AIを活用したHR Techでは、人手や機械的なマッチングよりも高い精度と効率が期待でき、精度も効率も日ごとに進化を続けています。
人材マッチングが年々難しくなるこれからの時代、HR Techへの理解を深めることは、人事業務の精度や効率を高める上で欠かせない要素となるでしょう。