政府もメンター制度の導入を推進している!
若手社員のうち、中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が入社3年以内に離職すると言われています。人材不足で、採用コストが増大傾向にある昨今、若手社員の離職は極力防ぎたいところです。このような現状を受け、危機感を抱いた企業はメンター制度の導入を進め、現在日本の約半数の企業がメンター制度を導入しています。
日本政府としても、メンター制度の導入マニュアルを公開するだけでなく、メンター制度を導入することで助成金を支給するなど、積極的に企業のメンター制度の導入を後押ししています。
今回は、メンター制度の導入を含む、厚生労働省主管の「人材確保等支援助成金」に関して説明します。
メンター制度に関する人材確保等支援助成金とは
人材確保等支援助成金とは、制度導入や設備投資により、離職率を引き下げた場合に受給できる助成金です。労働人口の減少による人材不足を改善するために、労働者の職場定着を図る事業主を心するために設けられました。
人材確保等助成金の各コースについて
人材確保等助成金の制度は、離職率改善を図る内容に応じて「雇用管理制度助成コース」「介護福祉機器助成コース」「介護・保健労働者雇用管理制度助成コース」の3つのコースに分けられています。
雇用管理制度助成コース
雇用管理制度助成コースでは、事業主が雇用管理制度(評価処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度)を導入することにより、労働者の離職率を低下させることを目的としています。
短時間正社員制度は、保育事業主のみが対象となっています。評価処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度においては、保育事業主以外の事業主も対象となっています。
介護福祉機器助成コース
介護事業主が介護福祉機器の導入することにより、労働者の離職率を低下させることを目的としています。
入浴機器を導入することで労働者の肉体的・時間的負担を軽減させるなどで、長時間労働を是正したり、肉体的疲労を抑えることで、離職率の低下につながれば受給できます。
介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
介護事業主・保育事業主が、労働者の職場への定着を図るため、賃金制度の整備を行い、労働者の離職率を低下させることを目的としています。
職務や職責に応じた昇給制度の整備や、職能や資格、勤続年数に応じた賃金テーブルの作成などによって受給できます。残業代や賞与を除いて、賃金制度を整備した後に賃金総額が減少していないことが必要です。
メンター制度が対象となる雇用管理制度助成コースとは
メンター制度が助成対象となる、雇用管理制度助成コースについて説明します。雇用管理制度助成コースは、メンター制度を含む、雇用管理制度を導入して離職率を低下させることで受給できる助成金です。
- 評価・処遇制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
- 短時間正社員制度(保育事業主のみ)
具体的にどのような制度とするのか、どのように運用するのかを雇用管理整備計画として作成し、事前に労働局の認定を受ける必要があります。
メンター制度で助成金を受給するための条件とは
メンター制度を導入し、助成金を受給するためには、以下の要件を全て満たすことが必要です。
- 直属の上司とは別に、指導相談役となる先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)をサポートする制度であること。
- メンターに対して、メンタリングに関する知識やスキルの習得を目的とした講習を受講させること。
- 2の講習を受講する際のメンターの賃金、受講料、交通費を要する場合、それらの全額を事業主が負担していること。
- メンター・メンティの間で面談方式のメンタリングを行うこと。
- メンター・メンティに対し、メンター制度に関する事前説明を行うこと。
- 労働協約もしくは就業規則にメンター制度に関して定めておくこと。
- 雇用管理制度整備計画期間内に退職が予定されている者だけを対象としないこと。
助成金を受給できる要件
雇用管理制度助成コースは、メンター制度を導入すれば必ず助成金が受給できるわけではありません。助成金の受給を検討しているのであれば、必ず受給要件を確認しておきましょう。
- 雇用管理制度整備計画書を作成し、労働局長の認定を受けること。
- 認定された雇用管理制度整備計画に基づき、制度を導入し実施すること。
- 計画期間内に雇用管理制度の導入・実施を行い、且つ、評価時離職率算定期間の末日まで引き続き雇用管理制度を実施すること。
- 離職率を目標値以上(雇用保険の被保険者に応じて変化)に低下させること。
受給できる金額について
雇用管理制度助成コースでは、目標達成した場合に支給される金額は、定額で57万円となっています。複数の雇用管理制度区分を導入・実施した場合も金額は変わりません。(例:評価処遇制度と、メンター制度の2つを導入実施した場合でも57万円)
メンター制度を導入検討している企業は検討しましょう!
平成29年度以前の人材確保等支援助成金では、導入時にも10万円が支給される仕組みでした。しかし平成30年度より一部内容が改正され、導入時には支給されず、離職率を低下させた場合などに支給される仕組みに変わりました。
離職率低下の目標を達成しなければ助成金はもらえないため、助成金目当てでの制度導入は現実的ではありませんが、メンター制度を導入することにより、離職率を低下させたいと真剣に考えている企業にとっては、人材確保等支援助成金制度を利用しない手はありません。
助成金を申請するための手間などはかかりますが、離職率の低下を達成できなかったからと言ってペナルティなどはありません。(不正受給でのペナルティはあります)離職率低下など、メンター制度導入の目的を明確にするだけでなく、具体的にどれだけ低下させるのかの目標があることによって、運用や効果を具体的にすることの方がメリットがあります。
上手く国の助成金制度を活用しながら、自社の状況に即したメンター制度の導入を進めましょう。