マネジメントスキルを採用基準や育成計画に活用する方法とは?

マネジメントスキルを評価・育成する方法とは?

マネジメントスキルとは、何らかの対象を管理するスキルを意味する言葉です。

マネジメントスキルが指す「管理する対象」とは、モノや時間だけに限らず、教育・人材分野においては「人」も対象に含まれます。また、管理職や経営層では「事業全体」がマネジメント対象になり、いかに組織としての利益を最大化するかが課題となります。

マネジメントスキルは、通常業務の効率化だけでなくチームや事業の牽引にも必要になるため、組織の中核メンバーには必須のスキルと言えます。

近年の日本では、労働力人口の減少による人手不足が深刻化しているため、採用した人材が長く活躍できる職場作りが人事業務の重要な課題のひとつになっています。人が足りていないからこそ、重要になるのは頭数ではなく中長期的に活躍してくれる人材です。実際に昨今の採用市場では、高度なマネジメントスキルを持つ人材を求める企業が多く存在します。

日本能率協会の「組織・人事領域で重視する課題」についての調査によると、最も重視する課題として「管理職層(ミドル)のマネジメント能力向上」が挙げられており、2016年から数値を落としながらも2年連続の1位となっています。また、2位も2016年と変わらず「次世代経営層の発掘・育成」となっており、中長期的な人材育成が人事課題として広く共有されている状況が読み取れます。

組織・人事領域で重視する課題
出典元『日本能率協会』第38回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題2017

マネジメントスキルは抽象的な概念であるがゆえに、企業や人によって解釈が異なるケースがよくあります。マネジメントスキルを採用の評価項目として用いる際には、マネジメントスキルを細分化して具体的な能力へと落とし込み、社内で共有しておく必要があります。

今回の記事では、マネジメントスキルとはどのようなスキルなのか、具体的にどのような能力に細分化できるのかについてご紹介します。

マネジメントスキルとは?具体化や細分化の方法について

カッツ・モデルにおけるマネジメントスキルとは?

マネジメントスキルを細分化する際は、ハーバード大学の経営学者ロバート・カッツ氏が提唱した「カッツ・モデル」を参考にすると、スキルを細分化しやすくなります。

カッツ・モデル
出典元『日本の人事部』マネジメント・管理職に求められるスキル

ロバート・カッツ氏によると、管理職に求められるスキルは以下の3つに分類されます。

  1. テクニカルスキル(業務遂行能力)
  2. ヒューマンスキル(対人関係能力)
  3. コンセプチュアルスキル(概念化能力)

1.テクニカルスキル(業務遂行能力)

テクニカルスキルとは「与えられた職務を遂行するために欠かせない知識や技術、技術の熟練度」を意味する言葉です。テクニカルスキルは、専門業務の遂行能力に特化した、現場で働く人材が活躍するために必要なスキルです。

テクニカルスキルについては「テクニカルスキル(業務遂行能力)とは?自社での業務遂行スキルを見極める」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

2.ヒューマンスキル(対人関係能力)

ヒューマンスキルとは「他者と良好な関係を築き、維持していくために必要な能力」を意味する言葉です。ヒューマンスキルは、チームやクライアントなどの社外の人とストレスなく働くうえでとても重要なスキルで、社会人としてさまざまな場面で必要とされます。

ヒューマンスキルについては「ヒューマンスキル(対人関係能力)とは?項目や種類を知ろう!」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

3.コンセプチュアルスキル(概念化能力)

コンセプチュアルスキルとは「同類となる複数の対象物の共通項を洗い出し、概念といえる要素を見極める能力」を意味する言葉です。定義だけ聞いてもイメージがわきにくいかと思いますが、より簡潔に言えば「物事の本質を見抜く能力」で、プロジェクトの方向性を見極める上で非常に重要なスキルです。

コンセプチュアルスキルについては「コンセプチュアルスキル(概念化能力)とは?意味や定義、項目について」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

マネジメントスキルの育成や見極めを行う際には「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」という3つのスキルについて、組織内の立場や役職によって求められる程度が異なることを知っておく必要があります。

管理職・経営層のマネジメントスキルの育成や見極めを行う場合は、3つのスキルのうち「ヒューマンスキル」と「コンセプチュアルスキル」を特に重視するとよいでしょう。

マネジメントスキルを構成する4つのスキルとは?

前項でご紹介したカッツ・モデルは、マネジメントスキルだけでなく、ビジネススキル一般もカバーしたスキル分類です。マネジメントスキルは、カッツ・モデルで言及される3つのスキルを基礎としており、社会人の基礎としてどの業界でも必要になるスキルといえます。

ビジネスシーンで活用されるマネジメントスキルの具体例としては、以下の4つが挙げられます。

  1. アセスメントスキル
  2. コーチングスキル
  3. アカウンタビリティスキル
  4. セールス・ネゴシエーションスキル

1.アセスメントスキル

アセスメントスキルとは、人材の適材適所を実現するために、部下の特徴を正しく把握するスキルです。ここで言う「特徴」とは、技術的な特徴だけでなく、性格や価値観なども含めた「人材の個性」を意味します。

2.コーチングスキル

コーチングスキルとは、前項のアセスメントスキルを前提として、部下の能力を最大限に引き出すスキルです。単に指示・命令を出すのではなく、部下の自発性を尊重し、部下の性格や価値観に合わせて問いを投げかける技術がポイントとなります。

3.アカウンタビリティスキル

アカウンタビリティスキルとは、相手にわかりやすく伝える「説明力」を意味するスキルです。

相手に物事を伝えたり教えたりするためには、本人が説明したい物事についてしっかり理解しておく必要があります。アカウンタビリティスキルは、分かりやすい言葉選びやイメージしやすい比喩表現ができるかどうかだけでなく、本人の理解力も含めた能力を意味します。

4.セールス・ネゴシエーションスキル

セールス・ネゴシエーションスキルとは、自分の意図をきちんと相手に伝えて納得させる、簡単に言ってしまえば「営業力」と呼べるスキルです。

営業力といっても社外での商談だけではなく、業務上の指示に部下を納得させる際や、部署間の衝突を仲裁する際などにも重要になるスキルです。セールス・ネゴシエーションスキルは、組織全体のマネジメントを行う上で、ストレスなくプロジェクトを進めるために必須のスキルといえます。

マネジメントスキルを細分化して、採用戦略や育成計画に役立てよう!

マネジメントスキルとは、何らかの対象を管理するスキルを意味する言葉です。

マネジメントスキルは、会社や人が違えば認識が変わる抽象的な概念であるため、人事戦略で活用する際には細分化や具体化が必要になります。細分化や具体化の方法は、今回ご紹介した方法以外にも様々な方法があるため、自社の状況や目的に応じた方法を選ぶとよいでしょう。

自社に合った細分化や具体化の方法は、自社が抱える課題や将来的に発生しそうな課題から考えると、おのずと見えてきます。具体的にどんなマネジメントスキルがあれば課題を解決できるのか、問題を細分化した上で細分化した問題を解消するためのスキルを考えれば、採用すべき人材や育成すべき能力が浮かび上がってくるでしょう。

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