ローパフォーマーへの対応や対策とは?解雇ではなく育成が大切な理由

ローパフォーマーはあなたの組織にもいませんか?

組織において業務成績の芳しくない人材や能力やスキルが不足している「ローパフォーマー」は、どういった組織においても、人事担当者や経営者の悩みの一つです。能力を最大限発揮して組織に大きく貢献する『ハイパフォーマー』と反対の存在で、業績の悪化や伸び悩み、他の社員への悪影響など、深刻な問題を引き起こす可能性すらあります。仮に、組織にすでにローパフォーマーが存在している場合は、組織として早急に対応することが求められます。

売り手市場で新規人材が厳しくなることが想定される中で、新規人材の確保だけに注力するのではなく、既存社員のパフォーマンスを上げることも重要な課題です。今回は、ローパフォーマーが生まれないために企業ができる対策や、仮に生まれてしまった場合の対応方法についてご紹介します。

ローパフォーマーへの対応を考える

ローパフォーマーがいることで引き起こる問題とは

ローパフォーマーがいることは、組織にはさまざまなデメリットをもたらします。

周囲のメンバーに負担や不満がたまり、結果的に職場のモラルダウンを招きます。長期間、ローパフォーマーを放置することは、会社に深刻なダメージを与えかねないのです。

  • 部門要員としてカウントはされるが、任せられる業務が限られるため、他のメンバーの負担が重くなる
  • 常に周囲の社員がカバーしなければならない
  • 何とかしてほしいが個人攻撃のようで上司には言いにくい。言っても何もしてくれない
  • 役割や担当業務と処遇が見合わない

ローパフォーマーが生まれる原因とは

ローパフォーマーが生まれる原因として、本人の問題だけでなく、周囲の人間による影響も多いにあります。ローパフォーマーへの対策・対応を行う前に、何故ローパフォーマーが生まれてしまうのかを確認してみましょう。

人事部門や経営層の問題

人事部や経営層に原因がありローパフォーマーが生まれるケースは珍しくありません。こういった事象の背景には、採用時の判断ミスが考えられます。

経営者の判断で事業を転換することもあります。事業転換などよって既存の職種や部署の変更や消滅が発生し、その仕事を担当していた人が慣れない部署へ異動することで、ローパフォーマー化してしまうことがあります。個人の能力に起因するというより『能力の相対的な陳腐化』が問題になります。

上司の問題

部署のマネージャーの管理スキルや態度は部下の成長に大きな影響を与えます。適切な指導を行わないことで、部下が成長せず(できず)にローパフォーマー化することがあります。

なんらかの理由で特定の部下との人間関係が悪くなると、それが原因で勤務態度が悪化することもあります。悪循環に陥ちると業績に悪影響を及ぼすこともあり、チームの環境も悪化します。

本人の問題

本人に問題があるケースももちろん多くあります。「業務態度が悪い」「成長意欲が感じられない」「採用時の話が誇張されていた」などが、よくある根本的な原因として挙げられます。

家庭などプライベートな理由でモチベーションが低下することで、能力や業績に影響することもあります。

ローパフォーマーを生まないための対策について

ローパフォーマーを生まないためには、生み出す原因に対して適切な施策を講じることが必要です。いつ誰がローパフォーマーとなってしまうかわからない以上は、全従業員に対して適切な指導や研修を行う必要があります。

目標設定を適切に行う

個人の目標設定をする際は、適切な内容になっているかをまずチェックしましょう。

目標設定が低すぎると個人のモチベーションがあがらず怠惰につながることもありますし、高すぎる場合、達成が困難になり、早い段階で諦めてしまうことにつながります。

期待している成果を挙げていない社員には、個人の課題や目標を明確にした上で、目標設定が適切であるかどうか、一度全体チェックしてみましょう。

研修や勉強会などでスキル・能力向上を図る機会を設ける

個人の問題もあるでしょうが、会社としては、個人個人の能力向上を目的とした研修やOJTの実施が有効な手段の一つです。

仮に上司のマネジメントスキルが不足している場合は、管理職研修を実施します。その際、現状の能力より少し上のレベルを設定し、適宜スキルアップできているか、チェックしながら実施していくことをオススメします。

勤務態度が悪い場合は自身に改めさせる

新入社員はもちろん、中堅以上の社員でも務態度が悪い人材はいます。普段の言動に問題がある場合は、その行動改善を促すための面談や指導を実施しましょう。対象者が理解するまで、地道に続けることが必要です。

指導や研修を行うときの注意点~複数回の実施、実施後の振り返り~

一度だけの指導や研修では、ローパフォーマーを生み出さない対策としては不十分でです。ある程度の期間や回数をあらかじめ想定し、適切な目標を設定するとともに指導・研修を実施しましょう。

改善項目を明確にして、どのような指導・研修を行い、実施後の変化などの結果も記録します。記録することで変化を確認でき、より良い改善につなげることが可能となります。

業務態度に問題がある場合、その理由がプライベートな問題であることも考えられます。具体的な指導内容を検討する前に、該当者には丁寧なヒアリングを行い、より詳細な原因特定をするようにも注意しなくてはいけません。

ローパフォーマーが生まれたときの対応について

「ローパフォーマー社員」と一言で言っても、その問題点はさまざまです。ローパフォーマー社員の特徴を見極めて適切に指導を行うことが重要です。

業務目標の再設定を実施する

ローパフォーマー社員を戦力化するにはまず、「業務に対する目標の設定を行う」ことが大切です。

ローパフォーマー社員の中には現状に満足し、次の目標を失っている可能性もあります。そのような社員については現状より少し難度が高い具体的な目標を設定し、その目標に対するヒアリングを実施することが重要です。

目標を再設定するときに注意すべきこと
1.目標は具体的にすること

具体的に目標を設定することで、何をすべきか個人がはっきりと認識できるようになります。目標には「いつまでに何をすべきか」など、日付や数値を明記することも重要です。

2.目標設定時には、必ず本人の意見を聞くこと

目標を設定する際に、じかにローパフォーマー社員と話し合い、意見を聞くことが大切です。意見を聞くことで、本人のパフォーマンスがなぜ上がらないのか、その原因が明確になる場合もあります。

設定した目標が、会社側からの一方的な押し付けではなく、本人の能力の向上や会社の利益につながるものであることも意識しておきましょう。

3.実現可能な目標であること

できない目標を立てても、何も改善されません。難度を高くする場合でも、実現可能な目標にすることが重要です。

あくまでも、本人のやる気を起こさせると同時に、ローパフォーマーの戦力化につながるものである必要があります。

注意・指導を相当期間行うこと

注意・指導はある程度長期間、実施することが大切です。一度の注意や指導で解決すればそれに越したことはありませんが、解決しない場合には複数回の指導や相当の期間を要する姿勢が求められます。

注意や指導がきちんと継続できていない場合は、ローパフォーマーがのちに解雇に至るケースでも「会社が注意・指導を行ったとはいえない」と第三者に判断され、不当な解雇として扱われる可能性があります。

そのためにも、注意・指導を行ったという証拠を残すことも大切です。どのような点について注意・指導を行ったのか、それに対するローパフォーマー社員の意見などまで詳細に記録しておきましょう。書面で残すことで、のちに解雇に至り、万一係争等になった場合の証拠になります。

注意・指導を行うこと自体はパワハラではありません。しかし、注意・指導の仕方が度を超す(他の社員のいる前で行われる。大声で怒鳴る。誹謗中傷と取れる発言がある場合など)場合は、「パワハラ」と認定される可能性があります。注意・指導を行う場合は、本人の意思も尊重するなどの配慮をすることも大切です。

配置転換や業務異動を行うこと

ローパフォーマー社員に対して具体的な目標を設定し、注意・指導を繰り返しても効果が表れない場合でも、すぐに解雇することは危険です。配置転換や業務異動を行うことも、まずは検討する必要があります。

ローパフォーマー社員の中には、本人の力不足ではなく、該当の業務に対する適性に問題があることもあります。そういったケースも念頭に、かつ、注意・指導を継続しても効果が表れない場合であっても、ローパフォーマー社員の意見を聞き、配置転換や業務異動によりパフォーマンスを発揮できる可能性を探ることが大切です。

配置転換や業務異動を行うときに注意すべきこと
1.配置転換・業務異動を行う根拠があること

配置転換や業務異動を行う場合には、労働契約上の根拠があることが必要です。就業規則で業務上の必要がある場合には配置転換を命ずることができることを明記しきましょう。

2.権利濫用に該当しないこと

就業規則で配置転換の可能性について記載があっても、その配置転換が権利の濫用に該当する場合は無効になります。

業務上の必要性があること、配置転換の基準・人選に合理性があること、手続きが妥当であることなどに留意し、配置転換や業務異動を行うことが大切です。

ローパフォーマーの存在を組織としてどう考えるか、をまず考える

ローパフォーマーは組織が大きくなればなるほど生まれる可能性があり、その意味でも、事前の対策は非常に重要です。

すでにローパフォーマーがいる場合、改善には時間がかかりますが、放置することは余計に問題を引き起こしてしまいます。必要な策を事前に構築した上で、制度の整備など、早めに改善していくことが求められます。

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