労働者のキャリアに対する意識
人生100年時代が到来するといわれている昨今、1人1人が今後のキャリア設計や自分の将来に向けて考える必要性が叫ばれています。人材サービス企業であるアデコのキャリアプランについての調査で、男性の5割がキャリアプランについて考えていないと回答しています。
出典元『THE ADECCO GROUP』働く人のキャリアに関する意識調査
キャリアプランについて考える理由として男性は「スキルや資格、経験が将来通用するかわからない」という不安が元になっていることが多いのに対して、女性は「良いキャリアを実現したい」と前向きな理由でキャリアプランについて考えており、男女間で違いがあります。
出典元『THE ADECCO GROUP』働く人のキャリアに関する意識調査
男女ともに「現在の勤め先」でキャリアを築いていきたいと考えていることが多いため、自社従業員のキャリアプランを考えることは企業にとって重要な要因となるでしょう。
出典元『THE ADECCO GROUP』働く人のキャリアに関する意識調査
VUCA時代と呼ばれる、テクノロジーなどの発達による劇的な変化が起こっている中で、また少子高齢化や人口減少社会が起き人生100年時代を見据えなければいけない現代。自身のキャリア設計や人生設計が必要になるとわかってはいるけれど、どのようにキャリアビジョンを持てばいいのかわからなくなっており、より難しくなっていえるでしょう。キャリアビジョンを持つ方法としては、個人のキャリアにあったキャリア理論などを参考にする方法が有効となります。
今回はキャリア理論の一つである「ライフキャリアレインボー」について説明します。
ライフキャリアレインボーとは?
ライフキャリアレインボーとはキャリア=職業とは考えず、キャリアを人生のある年齢や場面のさまざまな役割(ライフロール)の組み合わせと定義するキャリア理論です。人は生涯にわたり、社会生活や家族の中において経験や役割を積み重ねていきます。その中で自己のキャリアを形成していくという考えです。
ライフキャリアレインボーは、5つのライフステージと8種類のライフロール、そして年齢で表されます。5つのステージとは、成長段階、探索段階、確立段階、維持段階、下降段階です。8種類のライフロールとは、子ども、学生、労働者(職業人)、配偶者、家庭人、親、余暇人、市民です。
人によって、これらの役割全部を経験する人、一部分を経験する人、これ以外の役割を経験する人など様々です。役割は重なったり、比重が増えたり、状況や環境に応じて変化していきます。
ライフキャリアレインボーが提唱された背景とは
ライフキャリアレインボーはアメリカの教育学者、ドナルド・E・スーパーが1950年代に提唱しました。
1950年代までアメリカのキャリアの考えは、個人が1つの職業を選び、職業適応していくという職業指導がメインでした。しかし1950年代以降「職業からキャリアへ」という概念の拡大が行われ、スーパーを中心として「職業指導の再定義」が行われるようになりました。キャリア=仕事であった考えが、ライフの中の1つの役割に仕事が存在するというライフキャリアの考えが形成されました。
ライフステージごとに、したいこと・できること・すべきことを実現するというキャリアの考えが誕生したのです。
ライフキャリアレインボーを企業が活用するメリットについて
社員にライフキャリアレインボー図を書かせることで、どのような人生を歩んでいきたいのかを企業側が理解できます。将来の理想の姿と今の状況のライフキャリアレインボー図を描かせ比べることで、それぞれのライフステージにおいてどのような働き方をしていくかを具体的に考えられます。
家庭人としての役割が増える時期に企業側が対応できることは何があるのか、ライフを通して何を実現したいと思っているのか等、社員の気持ちを確認することで企業も対応を考えることができるでしょう。
ライフキャリアレインボーを従業員が活用するメリットについて
ライフキャリアレインボーを社員が行うメリットとしては、現在から将来においてどんな人生を歩んでいきたいのかを可視化しイメージできる点です。現在は労働者としての割合が高くても将来どういうライフロールを担いたいのか、バランスはどうなのか、社員1人1人も考えるきっかけとなるでしょう。
男性であっても女性であっても、子どもが生まれて親になれば日々の過ごし方やキャリアに対する考え方も変わってきます。趣味や仕事以外の部分も人生の中でどうしたいか考えることで、仕事と家庭のバランスをイメージすることができるでしょう。
現状に何か不満がある場合、ライフキャリアレインボーの役割の組み合わせがよくなかったり役割の重さのバランスが悪い状況となるため、何がうまくいっていないのか客観的に判断できる点もメリットとなります。
ライフキャリアレインボーを企業が活用するデメリットについて
企業側のデメリットとしては、仕事から離れてしまう社員がでる可能性がある点です。
総合的に考えるといいことなのですが、ライフキャリアレインボーで数年後、労働者としての役割をセーブしようと考えて仕事を辞めてしまったり、労働時間を短くするケースが発生するかもしれません。
ライフキャリアレインボーを従業員が活用するデメリットについて
従業員のデメリットとしては、役割に引っ張られて考えてしまう可能性がある点です。
例えば、母、妻、娘、労働者等の多くの役割を実行するあまり、逆にうまく行動することができないケースも考えられます。役割意識をもつことは大切なのですが、役割における行動を必ずしなくてはいけないと考えることは逆効果となってしまうでしょう。
状況や環境によって役割が変化していくことは当然のこと
ライフキャリアレインボーとは、キャリアは人生の年齢や場面の様々な組み合わせであると定義した概念であることで、相互に影響を与えて役割が変化していくことをあらわした言葉です。
求められた役割をうまく果たして満足できる場合にはキャリアが成功しており、満足できない場合は役割の見直しが必要となります。