面接官の対応が、求職者の「志望意欲」に影響アリ
新人や若手の面接官が特に気をつけるべきことがあります。それは面接官の対応が、求職者の「志望意欲」を左右してしまうという点です。
初めて面接をする場合や、面接官を担当するようになって間もない場合、つい「この求職者を自社に採用してよいかどうか」をジャッジしようとしてしまいます。けれども、同時に心得ておくべきは「求職者も会社を選ぶ立場にある」ということ。
面接官の対応がぎこちなかったり、態度が横柄だったりすると、せっかく面接に来てくれた求職者の志望度が急に下がったり、会社に対する印象が悪くなってしまうなど、悪影響を及ぼすことが多々あるのです。
法律で定められた「採用面接での質問禁止事項」を抑えておくことは、若手の面接官が最低限心得ておくべきマナーです。
面接官の態度を見て、求職者は入社後をイメージする
実際に、面接官の態度が横柄に感じられたことを理由に、「あんな会社こっちから願い下げだ」と話している大学生の話も聞いたことがあります。
面接官は、ただ質問したいことがたくさんあっただけかもしれませんし、求職者のストレス耐性を確認するという目的で、期待を持っていわゆる圧迫面接を行ったのかもしれません。しかし、その大学生いわく「面接官が始終、上から目線だったので、入社したあとも苦労しそうだと感じた。あんな風にはなりたくないと思った」ということです。
Re就活の調査によると、第二新卒・既卒ともに7割以上の人材が、面接時に入社したくないと感じた経験があると回答しています。多くの企業が人材不足に悩み、採用候補者を集めるのにも苦労している中で、面接でのイメージ低下は深刻な問題です。
志望度が下がる理由として、第二新卒・既卒ともに「面接官の態度・話を聞く姿勢が悪かった時」が1位として挙げられています。特に面接に不慣れな面接官だと、人材の見極めに注力してしまい、一方的なコミュニケーションになってしまったり、緊張で顔が強張ってしまったりすることが、採用候補者に伝わってしまう可能性があります。
2位の「圧迫面接を受けた時」と並び、「受付・一般社員の対応が悪かった時」や「面接官の性格が合わなかった時」も志望度が下がる理由として挙げられており、採用候補者も面接の段階で「この会社に入ってうまくやっていけるのだろうか」という相性の見極めを行っていると考えられます。逆に相性が良い会社であることが伝われば、志望度を上げることもできます。
面接官としてどのような意識や態度で面接に臨むべきなのでしょうか。面接官の心得を5つ紹介します。
面接官が注意すべき心得5つとは
新人や若手の面接官が見落としがち、忘れがちな心得を5つ紹介します。
1. 「会社の顔である」ことを意識する
求職者にとって面接官は、多くの場合が「この会社で初めてリアルに会話をする相手」です。つまり、面接官は「会社の顔である」と言えます。
面接官の印象次第で、会社に対するイメージや好感度はもちろん、「楽しく働けそうだ」あるいは「社員をあまり大事にしていなさそうだ」などの入社後のイメージまで膨らんでしまうということを心得ておきましょう。
面接官は社員全体のイメージだけでなく、会社のブランドイメージすら左右する可能性があります。実際はそうでなくても、求職者が「印象が悪い」と採用選考で辞退してしまうと、噂が独り歩きしてしまう可能性があるからです。
頭髪や服装の乱れ、表情、書類の取り扱い方、会話でのワードチョイスや声のトーンなど、会社の顔としてふさわしいかどうかを、面接の前にセルフチェックしてみてはいかがでしょうか。
2. 求職者にリラックスしてもらう
面接官は、自社に合う人材を的確に見極めなければなりません。そのためには、求職者のできるだけ素に近い姿を見せてもらうことが大切です。
まずは求職者にリラックスしてもらい、お互いに話しやすい雰囲気を作るよう心がけましょう。
コツは、「相手が話しやすい話題」から質問を投げかけることです。採用要件に照らし合わせて、あれもこれもと矢継ぎ早に質問を投げかけていては、相手は「詰問されている」と緊張してしまうということを心得ておくべきです。
あらかじめ質問事項を用意し、求職者にリラックスしてもらうことを念頭に置いて、質問の順序を組み立てましょう。面接の前にミツカリなどの適性検査を利用し、面接官が求職者への理解を深めておけば、求職者の緊張を解きほぐすことに役立つでしょう。
3. 求職者の本音を引き出す
求職者の緊張を解きほぐすことができたら、自社に合う人物かどうかを見極めるために面接官が心得るべきは、「相手の本音を引き出す」こと。あらゆるテーマで求職者の本音を引き出し、人柄や価値観を把握することは、自社の企業文化や在職中メンバーとのマッチ度を図る上で非常に重要で、早期離職防止にもつながります。
これらは応募書類からは判断できません。面接で経験や実績などを具体的にヒアリングしてスキルセットを確認することも大切ですが、それよりも重要なのは「マインドセット」を把握することなのだと心得ましょう。
4. 求職者はお客様
求職者は他の企業を選ぶ可能性もあるお客様だということを忘れてはなりません。優秀な人材、ぜひ採用したい人材であれば、他の企業からも引く手あまた。内定を出したとしても、あっさりと断られてしまう可能性も大いにあるのです。
優秀な人材をつなぎ止められるかどうかは、面接官の対応にかかっていると言っても過言ではありません。面接官は「おもてなしの精神」を忘れず、全ての求職者に真摯に対応することが大切です。
不採用の場合でも会社への好感度が高ければ、友人などに応募を進めてくれるなど”口コミ効果”にもつながります。人手不足が叫ばれるいまこそ、「面接官次第で、採用の母集団形成にもつながる」ことを心得ておきましょう。
5. 求職者のモチベーションをアップする
ぜひ採用したいと感じた求職者がいたら、面接官は社風や仕事内容など自社の情報を正確に、適切なタイミングで伝え、求職者の志望度を向上させるよう努めます。
求職者が新しい職場に求めるニーズに自社なら応えられる、ということを具体的に伝えることで、求職者にとっての入社メリットを訴求し、モチベーション向上、入社の動機付けを行うのです。
面接官との会話で入社後のモチベーションをアップすることができれば、内定辞退のリスク回避はもちろん、組織への適応力向上やパフォーマンスの最大化にもつながることを心得ましょう。
若手面接官が心得るべきは「求職者の味方になる」こと
若手面接官の場合、求職者が自分よりも年齢が高く経験も豊富である場合が多く、自信を持って「採用要件に合う」と判断することが難しいケースも多いのではないでしょうか。
そんなときは、「相手の味方になる」ことを意識して見ましょう。前段の「5つの心得」で説明したように、相手がリラックスして本音で話してくれなければ、「自社に合う、採用要件を満たしている」と判断できるだけの情報を得ることはできません。
「相手の味方になる」ことを心得ている面接官であれば、求職者の本心をつかみやすいだけではなく、面接官自身の緊張もほぐれて、求職者がどんな属性・経歴の持ち主であっても、しっかりと「対話」が成り立つようになるはずです。