ホラクラシー経営のメリット・デメリット、導入の課題や問題点とは?

ホラクラシーの意味や定義、注目されるようになった背景とは?

ホラクラシーとは、階級や上司・部下の関係が一切存在しない組織の管理体制を意味する言葉です。ホラクラシー型組織とは「上司・部下といったヒエラルキーが存在しないフラットな組織」を意味します。

従来の企業はヒエラルキー型の階層組織がほとんどで、階級や上司・部下などの上下関係があり、命令系統が確立された組織が一般的でした。ホラクラシー型組織は、従来のものとはまったく異なる組織形態と言えます。

ホラクラシーという概念は、2007年に米ソフトウエア開発会社ターナリ―・ソフトウエアの創業者であるブライアン・ロバートソン氏が提唱し、アメリカやオーストラリア、スイスなどの非営利団体で採用され始めました。現在では、ホラクラシー型経営によって大きな成果を挙げる企業が少なからず誕生してきており、世界中で注目されています。

ホラクラシー経営の組織では社員各自が主体的に動くため、マネジメントの負担は軽減されますが、組織としてのルールや行動指針などの決定・共有がしにくいといった経営上の問題点もいくつか存在します。

今回の記事では、ホラクラシー経営のメリット・デメリット、導入の課題や問題点について詳しくご紹介します。

ホラクラシー経営のメリット・デメリット、導入の課題や問題点とは?

ホラクラシー経営の意味や定義、目的とは?

ホラクラシー経営とは、組織における肩書きや役職をなくして従来のマネジメント型経営から脱却し、企業経営における意思決定権を組織全体に分散させる経営手法を意味する言葉です。

ホラクラシー経営の理論は、2007年に米国の起業家であるブライアン・J・ロバートソン氏が提唱した、役職をなくして生産性を上げる新しい組織マネジメント手法である「ホラクラシー」という概念に由来します。ホラクラシーの概念は、米国の大手アパレル通販企業のザッポス社が導入・実践して効果を出した事例から、世界中で注目を集めました。

ザッポス社のホラクラシー導入を主導したブリロニ・アレックス氏は「これまでの官僚的な組織構造により、意思決定におけるキーパーソンとつながっているかどうかが重要でした。それが、より効率的でイノベーティブな組織に変革するためにホラクラシーを導入したのです」と語っています。つまり、従来の組織におけるトップダウン型の意思決定構造から、より効率的にスピードを持って施策を実行していける組織構造に変換したといえます。

ザッポス社が組織構造改革を推し進めた理由としては、IT化の進展や社会の目まぐるしい変化などによって、よりスピーディーな経営判断が企業に求められるようになったという背景があります。ザッポス社の場合は、従来の組織構造に限界を感じた結果、ホラクラシー経営に移行したのです。

ホラクラシー経営のメリットとは?

ホラクラシー経営のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 意思決定がスピーディーに行える
  2. 社員の主体性が向上する
  3. 柔軟な組織運営ができる
  4. 業務削減・業務効率化につながる

1.迅速な意思決定ができる

ホラクラシー経営の組織では、意思決定を行う際に、上司や役員への確認や承認という段階が存在しません。チーム内で意思決定して、メンバー各自が自分の役割を実行していくため、迅速な意思決定・実行が可能になります。

迅速な意思決定ができる組織では、事業を素早く展開させられるため、組織の効率や成長スピードが向上します。

2.社員の主体性が向上する

ホラクラシー経営の組織では、上司からの指示によらず、チームメンバー各自が得意分野を活かして業務を進めます。社員一人ひとりが、チームの意思決定に沿って自身のすべき業務を決めていけるので、責任感と強い主体性が身に付きます。

社員の主体性が向上すると、責任ある仕事を任されているという自負から、社員のモチベーションアップにつながります。また、上司からの指示で不本意な業務を遂行するような状況にはならないので、上下関係のストレスから解放されるのも大きなメリットです。

3.柔軟な組織運営ができる

ホラクラシー経営の組織では、ヒエラルキー経営の組織とは違い、部署ごとの人員配置は行われません。プロジェクトによってはチーム体制が構成される場合はあるものの、管理職は存在せず、チームのメンバーも流動的です。

ホラクラシー経営は「人」ではなく「役割」ごとに業務を切り分けるので、社員は組織によらずとも自分自身のやるべきことを明確に意識でき、柔軟な組織運営が可能になります。

4.業務削減・業務効率化につながる

ホラクラシー経営の組織では、日々の日報作成や稟議申請などがなくなるため、組織全体の業務削減につながります。また、社員全員がプロジェクトのための業務に集中できるため、業務効率の向上にもつながります。

業務を削減・効率化できれば、生産性の向上だけでなく人件費の削減にもつながるため、企業にとって大きなメリットがあります。

ホラクラシー経営のデメリットとは?

ホラクラシー経営のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 情報格差で部下を支配できない
  2. 社員の動きや仕事を把握しきれない
  3. 目標達成のために無理を強いれない
  4. 実力がなければ居場所がなくなる

1.情報格差で社員を支配できない

ホラクラシー経営を実現するためには、社員が各自で意思決定を行うために、社内の情報を全社員に対してオープンにする必要があります。

全社員が同じ情報にアクセスできるようになると、情報の差で社員をコントロールできなくなります。ヒエラルキー経営の組織では、組織の上層部に行くほど機密情報を得て部下との関係で優位に立てますが、ホラクラシー経営の組織を目指すならば、情報格差による権力を手放さなければならないのです。

2.社員の動きや仕事を把握しきれない

ホラクラシー経営の組織では、トップダウン形式の指揮系統がなくなります。社員が主体性を持って仕事に取り組むと言えば聞こえはいいですが、プロジェクト全体で見た時に「誰が」「何を」「どこまで」進めているかの把握が難しく、責任の所在があいまいになりがちというデメリットがあります。

ヒエラルキー経営の組織では、責任の所在をハッキリさせるための手段として、判断の重要さに応じて何階層もの決裁を行っていました。ホラクラシー経営を実現するためには、社員の判断を信頼して任せる体制を確立しつつ、責任の所在をあらかじめ明らかにしておく仕組みづくりが必要になります。

3.目標達成のために無理を強いれない

ホラクラシー経営を構築できている企業は、セルフマネジメントができる社員で構成されています。ホラクラシー経営は、メンバー全員が自ら目標を設定して成長のために努力し、自らの成果に対して責任を持てる人でなければ組織として成り立たたないためです。

ヒエラルキー経営の組織では「人は管理するもの」という前提があり、個人がどれだけ仕事をしているのかを管理するために、管理職が必要とされていました。企業の規模によっては、さらに管理できる範囲を限定するために中間管理職という役割ができ、結果として今主流となっているヒエラルキー型組織のカタチが定着しました。

ホラクラシー経営の組織では、仕事の量や時間の管理が社員各自にゆだねられるため、数字目標ありきで限界ギリギリまで社員を働かせるような労務管理ができなくなります。ホラクラシー経営を実現するためには、社員全員が仕事に対して高いモチベーションを持っていることを大前提として、単純な数字目標ではない目標設定が必要になります。

4.実力がなければ居場所がなくなる

ホラクラシー経営の組織では、上司や管理職はおらず、社員全員が役割を持って業務を遂行します。会社で自分の居場所を手に入れるためには、何かしらの得意な領域を持って、チームに対して貢献しなければなりません。

ヒエラルキー経営の組織では、立場や役職が上位になるほど、社員の管理自体が仕事になります。しかしホラクラシー経営の組織では役職がそもそも存在せず、役割や責任の度合いの変化はあっても、人員管理が主な仕事になるようなことはありません。

ホラクラシー経営の組織では、常にクリエイティブな成果を出せる人が評価されるため、秀でた実力がない人は過去の功労者であっても社内に居場所がなくなっていきます。

ホラクラシー経営を実現するための課題や問題点とは?

ホラクラシー経営は、デメリットもあるもののメリットが大きく、一見すると全ての企業がホラクラシー経営を導入した方が効率的に思えます。しかしホラクラシー経営を実現するための課題として、社員全員が信頼して意思決定を任せられるメンバーでなければならないという、困難な前提条件があります。

ホラクラシー経営を導入・定着させるためには「自社の社員に意思決定権を与えた際に、適切な意思決定が行えると信頼できるかどうか」が重要です。理想的なホラクラシー経営を実現するためには、社員全員に以下のような能力が求められます。

  • 個人に与えられた役割に対して、自発能動的に課題を見つけ解決しようとする主体性
  • 周囲からの介入がなくても、自ら動くことができるセルフマネジメント能力
  • 組織全体の利益を考え、自分の利益だけに固執しない倫理観

ホラクラシー経営を導入する場合は、基本的に指揮系統としてのヒエラルキー構造がなくなります。理想的なホラクラシー経営を実現するためには、社員全員が強い主体性や倫理観、当事者意識やセルフマネジメント能力を持っていることが、最低限の前提条件となるのです。

ホラクラシー経営が自社に向いている組織かどうかは慎重に検討しよう

ホラクラシー経営とは、企業経営における意思決定権を組織全体に分散させ、社員各自の主体性を重視する経営手法を意味する言葉です。

ホラクラシー経営の組織ではメンバー各自が主体的に動くため、社員のモチベーションアップやストレス軽減、組織全体の業務削減や生産性向上など、企業にとって大きなメリットがあります。

ホラクラシー経営を導入し、理想的なホラクラシー型組織を実現するためには、社員全員が強い主体性や倫理観、当事者意識やセルフマネジメント能力を持っていなければならないという前提条件があります。

ホラクラシー経営の組織は、組織としてのルールや行動指針などの決定・共有がしにくいといったデメリットもあるため、一概にヒエラルキー経営の組織よりも優れているとは言い切れません。ホラクラシー経営の導入を考える際には、自社の社員の質やビジネスモデルなどと照らし合わせて、自社がホラクラシー経営に向いている組織かどうかを慎重に検討しましょう。

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