ハイパフォーマーの特性を分析して人材育成に活用する
会社の業績を伸ばすための方法は企業の方針や事業戦略によりさまざまですが、「活躍する人材を増やす」「活躍する人材のパフォーマンスを向上させる」など、人材が業績向上に大きく影響するところは間違いありません。
人材が企業の骨子のテーマである中、「ハイパフォーマー」と呼ばれる高い成績を残す優秀な人材は貴重な存在です。「売上の8割は2割のハイパフォーマーが生み出す」「人口の二割の裕福な層が社会全体の富の8割を占有する」などの「8-2の法則(パレートの法則)」も、上位成績者の優位性を顕著に表現するものです。“全体の少数の要因が全体の多数の結果に影響を与えている” ことを示した「パレートの法則」は、経済はもちろん、社会や自然現象の中でも数多く存在しています。
企業にはさまざまな価値観を持つ多様な人材で構成されており、“多様な人材がいること”が、活力のある組織を構成する上で重要なことでもあります。その意味では、ハイパフォーマー以外の、残り8割の社員のパフォーマンスも強化することが重要です。
組織全体全体の人材の活性化のためには、ハイパフォーマーの特徴や情報を収集・分析し、採用や教育研修などの人材育成の場に組み込んでいくことが有効です。
ハイパフォーマーの特徴を分析する
市場のグローバル化やロボットや人工知能の発展など、私を取り囲む市場は激動しています。自社が取り組む業界や立ち位置、今後の将来性などの様々な要因の影響でハイパフォーマーの特徴も会社ごとに変化します。まずは、自社の従業員にどのようになってほしいのか、自社のハイパフォーマーはどのような人材であるのかを分析して明確にしましょう。
ハイパフォーマーの特徴とは?
「ハイパフォーマー」は、業務に必要な高いスキルを有しており、かつ高い成果を出す人材です。「コンピテンシー」(人材の適性を見極めた配置・採用などを効率的に行うために用いられる企業人事の評価基準)から派生した概念とも言われ、自社業績への貢献度が高い人材でもあるとも言われています。
常に迅速かつ高い成果が求められるビジネスシーンにおいては、こういったハイパフォーマーの存在は、企業の業績や組織の人材育成・採用など、さまざまな要素に影響を与えます。
ハイパフォーマーは、どの段階でもハイパフォーマーであるとは限りません。たとえば、同じ営業電話も、他社でも同じだけの高いパフォーマンスを発揮できるわけではありません。商材や業務の遂行方法が異なるなどの環境要因をはじめ、さまざまな要素が関係してくるからです。
重要なのは、一般的な「ハイパフォーマー」の特徴を押さえた上で「自社なりのハイパフォーマー」がどういうものなのか、その定義を作ることです。
ハイパフォーマーを構成する要素と説明
「思考(価値観)」「スキル」「行動特性」の3つの視点からどのような特徴を持っているのかを説明します。
ハイパフォーマーの思考(価値観)
1.ネガティブ思考を生かす
ビジネスシーンには、さまざまな失敗がつきものです。
ハイパフォーマーは、失敗を失敗として受け入れたうえで、「この失敗を次にどのように生かすか」「どういったケースで活かすことができるか」を考えます。失敗は成功の種であり、成長の機会だと捉える思考があるのです。
2.目的思考
ハイパフォーマーは、どういった物事に対しても、「何のためにそれをやるのか」という目的を重視しています。目的を実現することが最終到達地点であるため、達成するための手段も、幅広い視野で考える柔軟さが生まれます。
仮に仕事がうまくいかない場合でも、「そもそも、何のためにこれをしているのか」という目的に立ち返ることで、自分が担っている役割を再確認でき、ゴールに向かう力にします。
何かの判断に迷ったときは、仕事の目的を改めて考えることで、「今やるべきこと」が明確になり、適切に判断することができるのです。
3.シンプル思考
仕事が思うように進まず、停滞してしまうようなシーンでも、ハイパフォーマーは「シンプル思考」を大切にします。「面白いか/面白くないか」「顧客の役に立つか/立たないか」など、あえてシンプルに考えることで手段や方法を整理していくのです。
ハイパフォーマーのスキル
ハイパフォーマーと呼ばれる人材には、いくつかの共通点が見られます。その共通点は、元々生まれ持った特性の人もいますが、後から鍛えることも可能なものもあります。
1.リーダーシップ
リーダーシップとは、単純に「人を引っ張ること」ではなく、チーム全体に目を配ることができ、メンバー一人ひとり寄り添うことができることです。
人を無理に動かすのではなく、上手に巻き込んで、周囲が自然と動く環境を作り出すことが得意なのが、ハイパフォーマーです。
2.達成志向
ハイパフォーマーは、部署や組織が変わっても、その都度自分で目標を設定し達成しようとする志向が備わっています。組織の上層部からの期待や設定された目標達成という外部要因はもちろん、己で己に目標を課しそれにまい進する特性があるからです。
ハイパフォーマンスを維持し続けるためには、自らの意志で走り続けるという自己管理が大切なのです。
3.先を見て行動できる「イニシアティブ」
ハイパフォーマーは、目先のことだけでなく、先を予測して今やるべきことを考える思考があります。
パフォーマンスが思うように出せない人は、目先のことだけにとらわれる傾向があります。ハイパフォーマーは、未来まで視野を広げて、その上で今目の前で起こっていることややるべきタスクを組み立てていきます。
4.自分以外の意見も聞き、最善の道を求める「柔軟性」
一つの考えに固執せず、自分の考えより優れているものを積極的に取り入れたり、時代にあわせて方向性を変える特性がハイパフォーマーにはあります。
柔軟性は、自分の視野を広げ成長を促すとともに、事業を改善して成長させていくためには、欠かせないポイントです。
5.アウトプットするための「思考力」
新しい視点を生み出す思考力はハイパフォーマーの大きな特徴です。
経験則や知識を組み合わせて、新たなアイデアを創造することを得意としています。新しいタスクや一筋縄ではいかない問題などに対処するときのパフォーマンスに差が出てくる点だと言われます。
さまざまな経験や知識を駆使できる柔軟性が、非常に大切になってくるのです。
6.周囲のサポートを得ることができる「影響力」
ハイパフォーマーは、相手の意見や状況を見極め、もっとも適切だと思われるアプローチで相手を説得するスキルを有しています。
プレゼン力と同じように、訓練すれば鍛えることができます。影響力は、相手に興味を持ち、相手が何を考えているのかを観察する姿勢が、何よりも重要です。
ハイパフォーマーの行動特性
1.相手の立場に立って仕事を行う
ハイパフォーマーは「利益は、商品やサービスではなく、顧客によってもたらされる」ことを理解しています。顧客の課題や問題が何かを考え、顧客の立場で仕事を行います。
結果、顧客に最適な解決策を提示することができるため、顧客の利益と業績を向上させることができます。
2.成果を重視する
ハイパフォーマーは、明確なゴールのイメージと、成果に対するコミットメントによって、仕事の成果へとつなげることができます。
現状とゴールを設定し、必要なプロセスを洗い出して行動し、結果を出していきます。
3.行動する
ハイパフォーマーは、行動こそが成果につながることを知っています。
常に動き続けることで行動の「量」を増やすと同時に、失敗した場合にはその原因を図り、次の成長に生かします。行動を続けることで、高い質のアウトプット=成果へとつなげていきます。
4.周りの人をサポートする
ハイパフォーマーは、周りの人とも積極的に知識や情報を交換し、教え、フォローします。
多くの人をサポートすることで人間関係がよくなり、信頼関係も生まれます。周りを上手に巻き込みつつ、社内外の人脈を広げることで、自身の仕事のやりやすさにもつなげます。
5.困難を乗り越える力がある
仕事でさまざまな困難に直面した時、先のことを心配しすぎるのではなく、今できることに懸命に取り組むのが、ハイパフォーマーです。
ストレス耐性を強化するために、現在経験していることに意識を集中し、精神を整える「マインドフルネス」のような瞑想法を取り入れている人も少なくありません。
6.社会に対する問題認識や貢献意欲がある
近年のハイパフォーマーは、社会に対する問題意識が高く、社会のさまざまな課題をビジネスの力で解決したいという貢献意欲が高くなっています。たとえば、クラウドファンディングなどを活用するのもその一例と言えます。
「思考」「スキル」「行動特性」から見えるハイパフォーマー
1.フットワークが軽い(とりかかりに躊躇がない)
仕事の土壇場になって問題を解決しようとする傾向がある人がいます。常に問題が発生してから対処しているため、対策が不十分となり、本来の問題解決や目的の達成にはつながりません。付け焼刃のやり方では、顧客の信用を失う可能性もあります。
ハイパフォーマーは何事も着手するのが迅速です。事前に、どのような問題が起こりうるかを想定し、対処法を用意しているため、実際に問題が発生した際、スムーズに対処でき、次の業務でも同じように早めに着手することができるのです。
2.能力を過信せず、失敗のプロセスも大切にする
ローパフォーマーは、自分の能力を過信しがちな傾向があります。人からの評価に敏感で、誰かに教えを乞うことが不得意なため、仕事も一人で抱え込んでしまいがちです。周りとのコミュニケーションも不足しているので、周囲の協力も得にくく、問題解決にも時間がかかるという悪循環に入ってしまいます。
ハイパフォーマーは、たとえスキルが十分でなかったとしても、周囲の意見を聞き、上手に巻き込みながら業務を遂行するため仕事がスムーズです。結果、周りの信頼感醸成にもつながり、さまざまな場所から情報が入ってくるという好循環が生まれます。
この行動の違いには「結果重視」と「プロセス重視」があります。ローパフォーマーは効率を求め、業績に直結しない時間を良しとしない傾向がある一方、ハイパフォーマーは失敗も成長機会と捉え、自らのモチベーションを向上させていきます。
3.とにかくやってみる行動力と前向きな姿勢
「とにかく、やってみなければ分からない」というのがハイパフォーマー共通の口癖です。
たとえリスクの可能性があったとしても、誰よりも先にアクションを起こし、その中から多くのことを学びます。自分のスキルや知識がどのくらいあるのかを常に図ることで、次のステップにつなげていく。そういった、状況に応じて軌道修正していく柔軟さと困難に打ち勝つ力が、ハイパフォーマーのハイパフォーマーたる所以です。
ハイパフォーマーの力で組織を活性化させる
業績向上やチームがレベルアップする上で、ハイパフォーマーの存在は重要です。彼らは行動や思考、価値観などの特性を分析し、人材のシステムとして構築することができれば、組織として今後の人材育成・採用などに幅広く活用することができます。
まずは、自社で「ハイパフォーマー」という人材や領域を棚卸し、パフォーマンスを発揮できる要素を特定することから始めてみてはいかがでしょうか。