生産性を向上させる要因を追求したホーソン実験
売り手市場が加速し、労働力不足が懸念されています。政府が進める働き方改革では「一億総活躍社会」実現に向け、様々な取り組みが行われています。
労働力を確保するだけでなく、労働生産性を向上させることも重要です。現在でも多くの企業が参考にしている労働生産性を向上させるヒントとして、ホーソン実験というものがあります。
ホーソン実験が行われるまで生産性を向上させる方法として「経営管理」が主流でした。合理的かつ機能的、組織構造などに着目し「仕事内容をシンプルにする」「分業する」ことで、習熟度や効率が増し、生産性向上につなげていました。
ホーソン実験は「人間関係」が生産性向上につながることを見つけた実験です。ホーソン実験から、人間関係や人間の持つ自己実現欲求などが生産性向上につながる「人間関係論」が生まれました。
約90年前の実験ながらも、今でも多くの企業が生産性を向上させる上で参考にしている「人間関係論」と「ホーソン実験」。ホーソン実験の概要や、実験結果から得られた知見について説明します。
ホーソン実験から導き出された結論とは
ホーソン実験は、アメリカの電機機器製造企業のウェスタンエリクトリック社で、ジョージ・エルトン・メイヨー教授によって行われた実験のことです。
実施目的は生産性向上の要因を見つけることでした。実験内容は次回の記事にて詳しく説明致しますが、「生産性をあげるために何が必要なのか」といった点を、照明実験や面接実験など様々な実験を通し、仮説検証を繰り返しました。
人間関係が生産性向上に影響を与える
ホーソン実験の結論は、「人間関係」が生産性向上に影響を与えることでした。
ホーソン実験が行われる前までは、「労働時間」や「休憩時間」、「賃金」や「労働環境(照明の明るさ等)」などの労働環境や労働条件の改善でしか生産性を向上できないと考えられていた当時としては衝撃な結果だったことでしょう、
「人間関係」は、例えば上司と部下の関係性や同僚との人間関係、職場で自分の居場所があると感じる帰属意識や、本来の自分でいられる心理的安全な場とその関係性などが挙げられます。
ホーソン実験から生まれた人間関係論
この結果からメイヨー教授は、人間の動機づけ要因を、賃金から人と人との関係性の充足や社会的欲求の充足へと転換することを提唱しました。
これは後のモチベーション研究(マズローの5段階欲求の自己実現欲求等)やリーダーシップ研究(タスク管理型や徹底型から個人の価値観や適材適所にフォーカスするマネジメント方法等)様々な人間関係論に影響を与え、現在も引き継がれています。
人間関係を良好にすることが生産性向上につながる!
人間関係を良好にすることで、仕事の生産性向上はもちろん、離職率改善や自社への帰属意識が高まるといわれています。人を歯車の1つとして考える組織よりも、人と人との関係性を重視し、個人をみてくれる組織の方がより魅力を感じ、頑張ろうと考えるのは当然なことで、生産性向上には作業環境よりも人間関係が重要であるということは、皆さまも直感的にもイメージしやすいのではないでしょうか。
約90年前にはすでに提唱されていた人間関係論。人手不足かつ労働生産性向上が叫ばれる今だからこそ、自社の人事制度の参考にしてみるのはいかがでしょうか。