ミツカリでの人事データ分析②〜社風の可視化〜

社風を可視化するメリットとは?

組織が拡大している企業や人材の流動が激しい組織で「そろそろ採用基準についての認識を統一させた方がいいのかも」と思っている経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか。

特にこれから徐々に拡大してく50〜100人規模の組織になってくると、なかなか一人一人の価値観や考えを把握して、明確に言語化する事が難しくなってきます。

早期退職の主要な理由は「社風のミスマッチ」だと言われています。転職会議の調査によると、新入社員の早期離職理由として「社風・体制に不満」が2位に挙げられています。

新入社員のスピード退職理由
出典元『転職会議 Report』スピード退職は自己防衛?!新卒入社3ヶ月未満退職者が明かす離職理由ランキング【2016年度版】

VORKERSの調査でも、入社後のギャップとして「組織の特徴や社風についてが」2位と多くの人材がギャップを感じたと回答しています。自由記述項目では「仕事内容や配属について」はポジティブな意見が多いのに対して、「組織の特徴や社風について」はネガティブな意見が多く、入社前に社風を理解してもらう課題は根深い問題であると考えられます。

良くも悪くも、入社後ギャップ
出典元『Vorkers』調査レボート Vol.31 良くも悪くも、入社後ギャップ

マイナビの調査によると、説明会で力を入れて説明した点として「具体的な仕事内容」に次いで、2位に「社風・社内の雰囲気」が挙げられており、52.1%の企業が力を入れて説明したと回答しています。企業の担当者が力を入れて説明していても、学生が理解できていない、担当者の「社風・社内の雰囲気」に対する認識が誤っているなどの問題があると考えられます。

説明会で力を入れて説明した点
出典元『マイナビ』2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査

社風のミスマッチが起こりやすいかというと、給与や雇用条件などの情報に比べて、社風は言語化が難しく、人材要件定義も曖昧になりがちだからです。しかし裏を返せば、定着率の高い採用ができている組織は、社風を言語化し、それに合わせた人材を採用する事ができているという事です。

アメリカのEコマースの大手企業、Zappos(ザッポス)は、非常にカルチャーを大事にしている企業です。いつ社員に「コアバリューは何?」と質問しても、全員が10のコアバリューを即答できるほどの徹底をしているそうです。Zapposの企業文化の徹底は、アメリカでも広く認知されており、多くの企業のロールモデルになっています。

ミツカリは、言語化とか可視化が難しい社風を客観的かつ具体化できるHRテックサービスです。

本記事では、ミツカリを使った社風の可視化の方法を紹介していきます。

ミツカリを使った他の人事データ分析事例は、下記のリンクからご覧ください。

社風とはなに?

「社風」「組織風土」「組織文化」「カルチャー」「コアバリュー」など、様々な言い回しがあります。

表現の仕方は様々ですが、全ての表現に共通する意味は「社員一人ひとりの価値観の集合体」であると、我々ミライセルフは捉えています。

組織は人と人との集合体ですので、社風を測るには、社員それぞれの価値観を聞き出さなければいけないと考えています。通常の適性検査とは異なり、ミツカリは社員の皆様にも受検してもらうことで実現しています。

人数が何人に増えようと、テクノロジーによって自動化してあるので、データ回収と整理の手間が省けます。ミツカリを使った社風の可視化を、カンタンに紹介します。

社風を可視化するための2ステップについて

社員全体に共通する特徴や価値観を測ることは、コアバリューの発見にも繋がります。全社員の分析は一番カンタンな分析方法ですので、手始めに行ってみるのをオススメします。

  1. 受検して欲しい人に一斉メールを送る
  2. 回答者の結果を分析する

1.受検して欲しい人に一斉メールを送る

最初に受検して欲しい社員にミツカリの受検依頼メールを送ります。何回もメールを送る手間を省くため、1回のメールで受検案内をする「複数人登録」を選択します。
複数人登録

複数人登録をするには、CSVファイルをアップロードする必要があります。ファイルの互換性を保つためにも「サンプルファイルをダウンロード」をクリックし、サンプルファイルを手に入れます。
サンプルファイルをダウンロード

「users_sample.csv」というファイルをダウンロードし、オープンすると次のように設定してあるファイルが開きます。
サンプルファイルの中身

「メールアドレス」と「名前」を、自社の社員に合わせて貼り付けます。(今回は、簡略化のため社員数10人のA社を仮に作成しました。)
一斉送信csv編集

複数人登録画面の「CSVファイル」をクリックし、編集したファイルをアップロードします。
csvファイル選択

複数人登録画面で、送信確認画面が表示されます。「適性検査へのリンクを含むメールを送信」ボタンをクリックすると、登録したメンバーにmitscucari受検案内のリンクが付随したメールが送信されます。
一斉送信する
「複数人登録」の左隣にある「個別登録」画面をクリックし、下の方を見ると、登録確認状況が表示されています。「未回答」の状況が長い社員には、もう一度メールを送ることも可能です。
回答者一覧

全員が「回答済み」になったら、分析の準備が整います。

2.回答者の結果を分析する

メールを送信した社員全員が受検し終えたら、分析に入ります。

「社員・応募者登録」画面から「分析・マッチ結果」画面へ切り替えます。
分析・マッチ画面への切り替え

「分析・マッチ」画面で、緑の枠から「分析結果を見たい人・グループ」で、「全社員」をクリックします。
全社員をクリック

デフォルト設定では「面接用シート」で結果が表示されます。「面接用シート」とは、応募者と比較したい社員のマッチ度を分かりやすく説明したり、面接での質問例などを搭載した新機能です。

通常なら、緑の枠に「応募者」、比較したい人・グループに比較対象となる人・グループを選択しますが、今回は「全社員」の分析なので、このままで大丈夫です。
人物像の説明

A社のメンバーの平均を計算した傾向を一言で表すと、「自身で考えを深めることが多いタイプで、論理的な考え方を重んじるタイプ」だと言えます。

この記述は、分析した中で強い傾向が出ている項目の上から順に選んだ記述なので、さらに詳細データをみると、より掘り下げた分析が可能になります。

「詳細データ」タブをクリックして、画面を切り替えます。
全社員の結果

「詳細データ」では、14項目全ての傾向を見ることができます。
詳細データ

詳細データを見ると、A社が「自身で考えを深めることが多いタイプで、論理的な考え方を重んじるタイプ」と面接用シートで表示されるのは、「自問型」と「論理重視」に強い傾向が出ているからだと言えます。

他の項目で強い傾向が出ているものは、「自問型」「論理重視」「冷静型」「理念重視」「組織貢献型」「着実志向」「仕事重視」「給与重視」です。

項目は全て七段階評価になっており、分析結果はチームの平均を反映しています。

解釈のポイントとしては、左か右方向に強く触れている項目ほど、強い傾向が出ていると言えます。逆に真ん中に寄っている項目は「①左右に強く触れている人の集まりで傾向が見られない ②全員が一致して真ん中より」と言えます。
解釈のポイント

部署やチームごとの特徴を可視化する4ステップについて

組織全体の分析では、全社員の平均を数値化しました。この方法は全体の大まかな傾向は分かる一方で、営業部や開発部の違いなど、部署ごとの微妙なニュアンスが数値化できなくなるという難点があります。

部署やグループごとの細かい分析は人材配置などで役立ちます。そこで、グループごとの分析について解説していきます。今回は便宜上、社員数10名のスタートアップ企業を想定します。

  1. タグを使ってグループ分けをする
  2. エンジニア部門の特徴を分析する
  3. 営業部の特徴を分析する
  4. 経営陣の特徴を分析する

1.タグを使ってグループ分けをする

タグ機能を使えば、任意のグループ毎に比較分析が可能になります。今回は「経営」「営業」「エンジニア」のグループに分けて分析します。

(より詳しいタグの作り方は「ミツカリの社内分析への応用方法①〜トップパフォーマー分析〜」の解説をご参照ください)

「社員・応募者登録」タブで、任意のタグが作られていることを確認します。
タグの作成

下の画像のように、任意のタグをそれぞれの社員に振り分けます。
各社員のタグ付け

タグが正しく振り分けられているか確認したら、「社員・応募者登録」タブから「分析・マッチ結果」タブへ切り替えます。
画面の切り替え

2.エンジニア部門の特徴を分析する

エンジニアと全社員の傾向を比較してみましょう。

「分析・マッチ結果」タブの緑の欄に、エンジニアを選択します。
エンジニアを選択

次に、右隣の青い欄に「全社員」を選択します。この場合の全社員は「比較対象となるエンジニア職を除いた全ての社員」となります。
全社員を選択

「面接用シート」に簡単な要約が表示されます。
簡単な要約

エンジニアグループに共通する要素を一言で表すと、自問型で理論重視だと言うことが分かります。会社全体とのマッチング度も高く、かなりの水準で価値観を共有していることが伺えます。

「詳細データ」をクリックします。
詳細を選択

エンジニアとそれ以外の全社員のマッチ度合いが全項目で見ることができます。緑のバーがエンジニアで、青のバーが全社員の傾向です。

かなりの項目でマッチ度が高いですが、唯一違いが出ている項目は「自己評価」です。つまり、A社のエンジニアは、自分の中に価値基準があり、自分でこだわったものについて評価されたい欲求が強いです。
全社員・エンジニア比較
組織マネジメントに活かすとすれば、人事評価の施策を「自己評価」型に変えることを検討して見ると良いでしょう。自己評価型のエンジニアたちを、他己評価を基準に評価してしまうと、モチベーションに繋がらないやり方になってしまう可能性があります。

エンジニア採用をする際にカルチャーフィットを意識するならば、全社員もエンジニアも共通した価値観である「論理重視」や「理念重視」の要素は外せない項目となるでしょう。

3.営業部の特徴を分析する

営業部を組織全体と比較してみましょう。

以前と同じ手順で、「分析結果を見たい人・グループ」の欄に「営業部」を選択します。(「比較したい人・グループ」は全社員が選択されているので、操作を省略します。)
営業部を選択

「詳細データ」タブをクリックし、違いを比較します。
緑のバーが営業部で、青のバーが全社員の傾向です。
全社員と営業部の比較

営業部と全社員を比較したところ、目立った項目は少ないと分かります。若干程度差のある項目は「共感型」「過程重視」「仕事内容重視」です。営業職を募集するならば、これらの項目に着目して選抜していくのが良いでしょう。

4.経営陣の特徴を分析する

経営陣は、組織でも影響力のあるポジションです。経営陣と会社全体の違いを可視化することは、組織マネジメントにおいて有益な情報になります。

以前と同じ手順で「分析結果を見たい人・グループ」の欄に「経営」を選択します。
経営の選択

次に「詳細データ」タブをクリックし、違いを比較してみます。緑のバーが経営層で、青のバーが全社員の傾向です。
全社員と経営の選択
全体的に、違いの目立つ傾向になりました。経営層は人と接するのが得意で(外向型)、感情を表しやすい(情熱型)性格です。これらの性格の違いを考慮して、コミュニケーションを図る事が有効です。

経営層は、社会理念よりも利益の拡大に興味があり(ビジネス重視)、リスクをとって挑戦することを望みます(挑戦志向)。総合的に判断すると、経営陣は強いリーダーシップを備えた集団であると言えるでしょう。しかしこれらの項目は、会社の方針に影響しうる要素なので、全社員との間に大きな差があるとすれば、現状の擦り合わせが有効です。

可視化した社風を施策へ落とし込むために

社風の可視化はあくまで手段であるため、人材要件定義や人材配置などの人事業務に活かすことが目的です。

A社の例をとると、A社には「論理重視」と「仕事重視」の項目が部署を超えて高いレベルで共有されている事が分かりました。採用選考では、これらの要素をコアバリューとして掲げると良いでしょう。

一歩進んだ施策として、競合にはない自社特有のカルチャーを表現する方法があります。他社の組織文化を分析し、自社のコアバリューとの違いを意識して人材要件定義をしていきます。そうする事で、差別化と採用ブランディングに繋がります。

またグループ別で比較をすると、部署ごとに特徴が現れる結果となりました。ミツカリでは個人とグループのマッチング比較もできるので、このシステムを人材配置や採用に活かす事もできます。

グループごとに比較していくことは、組織マネジメントに役立つ場合もあります。例えば、A社のように経営層とその他の社員の傾向がかなり異なっているケースです。この違いが致命的なミスマッチに成りうる前に、客観的な結果と現実の認識の擦り合わせをする事で、より深い議論のキッカケになるのではないでしょうか。

社風を可視化し、採用要件定義や配属に活用しよう!

早期離職の原因ともなる「社風のミスマッチ(ギャップ)」を防ぐためには、まずは自社の社風を客観的かつ具体的に理解し、言語化・可視化することが大切です。言語化・可視化された社風は、従業員だけでなく、求職者の方とも共通認識を持つ上で有効です。

社風の可視化は、属人的になりがちで、客観的に捉える事が非常に難しいです。難しい社風の可視化をお手伝いするのが、ミツカリです。ミツカリを使えば、全社員だけなく、部署ごと・チームごとなど、任意のグループでの分析が可能になります。

共通している項目と差が出ている項目に着目して比較すると、分かりやすい可視化ができます。部署別の分析は、職種ごとの採用要件を明確にするだけでなく、配属先・異動先を決める上でも有効です。

ありきたりで曖昧な社風を掲げるよりも、ユニークで明確な社風を正確に言語化できた方が採用ブランディングに繋がります。採用ブランディングをすることは、採用活動をより効果的にするための第一歩となります。

社風を言語化できていない・言語化できているが確証(根拠)がないなどの場合には、ぜひ一度社風の可視化を行い、自己認識が正しいかどうか、採用要件定義や配属・異動で考慮されているかどうかを見直してみてはいかがでしょうか?

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