従業員の退職にも深い関わりがある社風とは
「組織風土」や「企業文化」などと混同されることも多い「社風」ですが、社風が合わないなどが従業員の早期離職理由として挙げられることもある、企業にとって重要な要素です。
転職会議の調査によると、入社3か月以内に離職・離職を検討している新卒社員の理由の中で、1位は時間外労働で62%、2位の社風が36%となっています。新入社員が考える「時間外労働」の多さについては、週○時間、月○時間などと説明ができるはずです。(優秀な人材の囲い込みのために、不利な情報を意図的に隠している可能性がありますが、早期離職になることで採用や教育コストの回収ができない事態につながっています。)社風は時間外労働などと違い、数字で表現できない定性情報なため、入社前に伝えることが難しいといった問題があります。
出典元『転職会議 Report』スピード退職は自己防衛?!新卒入社3ヶ月未満退職者が明かす離職理由ランキング【2016年度版】
Volkersの調査でも入社後のギャップとして2位の社風が39.9%と高い数値がでており、根深い問題となっています。自由記述項目では「仕事内容や配属について」はポジティブ(良いギャップ)な意見も見られるのに対し、「組織の特徴や社風」についてはネガティブ(悪いギャップ)な意見が中心となっています。
出典元『Vorkers』調査レボート Vol.31 良くも悪くも、入社後ギャップ
社風は、良い・悪いではなく、合う・合わないで語られるべきものです。例えば「体育会系」な社風は、それだけで良い・悪いは判断できません。「体育会系」の従業員であれば合いますし、「文化系」の従業員であれば合わないことが想定されます。
早期退職とも関係が深い「社風」ですが、未だに約4割の人材がギャップを感じているということは、入社前などに「社風」を正確に把握できていない実態が浮かび上がります。
今回は「社風」の意味や定義、組織風土や企業文化との違い、活用するメリットやデメリットについて説明します。
社風の意味や定義とは
「社風」とは、従業員が感じる会社の雰囲気や特徴のことを表します。主に企業内・組織内の人間関係を基本とした労働環境のことで、空気感、感覚的な要素も大きいのが特徴です。
人間に例えると「人柄」に当てはまります。勤勉である、人見知りをしないといった「性格」と仕事よりもプライベートを重視したいなどの「価値観」などから成り立つ、その人の雰囲気のようなものです。
社風は、組織の性格である「組織風土」と組織の価値観である「企業文化」から影響を受けています。
組織風土や企業文化の定義と社風との違い
組織風土や企業文化なども抽象的な概念でありながら類似した意味を持つ言葉です。定義が曖昧なまま使われることもあるため、混同して認識されやすい概念ですが、正確には違う概念です。
「組織風土」は、従業員間で共通の認識とされる規則や価値観などのことです。人間に例えると「性格や気質、癖」などになります。外部からの影響を受けにくく、自然発生するものです。従業員の行動や感情、モチベーションに大きな影響を与えています。
組織風土に影響を与えるものとして、以下のものが挙げられます。
- 経営理念
- 就業規則
- 人事制度
- 社内のローカルルール
- 判断基準
「企業文化」は、従業員間で共有されている信念や前提条件、ルールなどのことです。外部からの影響を受けながら徐々に変化していくものです。従業員の仕事の仕方などに大きな影響を与えています。
企業文化の例としては、以下のものが挙げられます。
- 個人主義なのか、それともチームワークを重視するのか
- 成長志向なのか、それとも安定志向なのか
- 年功序列なのか、成果主義なのか
- トップダウンなのか、ボトムアップなのか
- 褒めて育てるのか、厳しく叱るのか などというのが企業文化です。
社風の例について
社風の例としては、以下のものが挙げられます。
- 穏やかでのんびりしている
- 若手社員でも上司や社長に意見できる
- 体育会系
- 社員全員が仲良し
- お客様を第一に考える
- 自由
- 過程よりも結果で評価する
若手社員でも上司や社長に意見をぶつけることができるような社風は、風通しがよく働きやすい会社だとアピールすることができます。現代社会では、市場の柔軟な変化に対応しながら、個を活かす働き方に対応するために、風通しの良い社風の会社が増えています。一方で、会議の30分前には会議室に着いていなければいけない、始業時間の20分前に出社して掃除を行うなどの古くからのルールが重んじられる(変わらない・変えようとしない)社風の会社もあります。
社風を活用するメリット・デメリットとは
社風は「従業員が感じる会社の雰囲気や特徴」です。採用活動時においては「内定者」視点で、社風をうまく伝えられることが大切です。抽象的な概念であり、自社の社風についての認識が正しいかどうかを判断せずに誤った認識のまま活用してしまうと、より重大なミスマッチを引き起こしてしまいます。
社風を活用するメリットとは
- 社風の合う・合わないを判定することで、早期離職を防ぐのに役立つ
- 自社のブランディング(このような社風がありますと社外に公表)に役立つ
- コミュニケーションロスが減少し、労働生産性向上につながる
社風を活用するデメリットとは
- 抽象的な概念であるため、言語化が難しい
- 自社の社風に対して誤った解釈のまま採用活動を行うと、入社後のミスマッチを引き起こす
- 良い社風というのは存在しないため、目指すべき社風がない
社風を活用する際の注意点について
社風は「組織風土」や「企業文化」同様に、部署やチームごとに存在します。「営業部の社風」と「開発部の社風」は、同じ場合もありますが、多くの場合は異なる性質を持っています。そのため「開発部の採用」を行うのであれば「開発部の社風」を知る必要があり、「開発1課」の採用を行うのであれば「開発1課」の社風を把握する必要があります。
社風も、組織に属する人材によって変わります。新しい人材が加わったり、離職したりした場合には、都度社風も変化していきます。
社風は「良い・悪い」という観点でなく、「合う・合わない」という観点で語る必要があります。「体育会系」の社風が合う人もいれば、「文化系」の社風が合う人もいます。「体育会系」の社風の会社に「文化系」の人材が加わった場合は、話の前提となる価値観などが異なるため、コミュニケーションロスを引き起こし、会社に馴染めない・業務のことがわからないなど、良くない結果を引き起こしてしまいます。
従業員の早期離職を防ぐために、社風を理解しよう
社風は、早期離職とも関係が深いだけでなく、多くの企業で自社の社風を正確に把握できていない(入社後にギャップを感じる)ものとなっています。社風自体には「良い・悪い」はないため、「合う・合わない」で判断することが求められます。
早期離職を防ぐためには、入社前の段階から「自社の社風を把握すること」と「応募者(内定者)と合うか合わないか」を判断する観点が重要です。仮に希望する部署(職種)と応募者が合わなかった場合は、他に社風が合う部署があればそこに配属したいか話し合う方法も考えられます。
早期離職は、採用や教育にかかった人的な時間と金銭が回収できない可能性がある問題です。優秀な人材から応募があっても、社風とのミスマッチから、業務でのコミュニケーションロスなどで能力が発揮できなければ、意味がありません。社風とのミスマッチを応募段階で見極める、応募者に自社の社風を説明してギャップをなくすことが、優秀な人材を集めて事業を成長させる秘訣となります。