人材採用に欠かせない母集団形成の方法を考える
多くの企業が自社の従業員が足りないと実感しているだけでなく、採用活動にも苦戦を強いられています。
帝国データバンクの調査によると、正社員が不足していると回答した企業は51.1%と過半数の企業が人手不足だと感じているという調査があります。
新卒採用において、2019年の採用を「2018年よりも増やす」という企業が33.6%、「2018年よりも減らす」と回答した企業が6.3%と、少子化に伴って学生の数が減少している現状に対して採用人数を増やす企業の方が多い割合となっています。人材獲得競争の激化は避けられません。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』2019年卒 採用活動の感触等に関する緊急企業調査
母集団形成に関しては「想定よりも少ない」という回答が過半数をしめ、今後も母集団形成がより難しくなると予想できるでしょう。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』2019年卒 採用活動の感触等に関する緊急企業調査
効率的な母集団形成を行うためには、どのような母集団形成方法があるのか、それぞれの方法におけるメリットやデメリットを理解して、自社の採用戦略に適した方法を組み合わせる必要があります。母集団形成方法について、優先順位をつけることで、注力する方法を見つけることも、予算や人手の配分の決め方など、人事担当者の業務負担を軽減することにつながります。
母集団形成の方法ごとのメリットとデメリットとは
母集団形成を行う方法は様々な種類があります。
主な母集団形成の方法とそれぞれのメリットやデメリットについてご紹介したいと思います。採用活動における手法を検討する際の参考にしてみてください。
就職・転職サイト
就職サイト・転職サイトを使った母集団形成は、最もメジャーな方法です。媒体に寄って異なりますが、掲載費用や成果報酬費用を支払って就職サイトや転職サイトに求人票を掲載する手法です。
インターネット上又は求人紙などに広告として自社情報や求人内容などの情報を掲載することで、自社認知度を得て応募を集めます。母集団の数を確保するにはもっとも有効だとされています。
就職・転職サイトのメリット
- 利用する求職者が多いため、多数の人に認知してもらうことができる
- サイト上の管理システムを利用することができるため、効率的に応募者管理を行うことが可能である
- 複数人数を採用した場合は、採用費用を抑えることができる(完全成果報酬型を除く)
就職・転職サイトのデメリット
- 求人広告の予算規模や広告の内容により集客力が大きく異なる
- 知名度の低い企業や事業内容が地味な企業は、求人票が埋もれやすく、大手企業に求職者を取られてしまう可能性がある
- 掲載社数が多いため、競合他社との差別化など工夫をしないと埋もれてしまう可能性がある
- 採用できなかった場合、広告費分が損失になってしまう(完全成果報酬型を除く)
自社採用ページの設置
自社のホームページの中で、採用に関する専門ページを作成して母集団を形成する方法です。
補助的な意味合いも強いのですが、就職サイトや説明会などで自社に関心を持った求職者が「どんな企業か」「どんな社風なのか」「どんな従業員が働いているのか」といった詳細を知るために活用されています。
自社採用ページは、企業研究などにも用いられるため「求職者が自ら企業との適正を判断できる」セルフスクリーニング効果も期待できます。
自社採用ページ設置のメリット
- 就職サイトや説明会などでは伝えることができない細部にわたって求職者に伝えることができる
- 「先輩社員の声」「入職後の1日」「キャリアプラン」「福利厚生」など、文章だけではなく画像や動画を使って伝えることもできる
自社採用ページ設置のデメリット
- 制作に時間と費用がかかる
- 人事担当者の負担がかかる
- 自社採用サイトを作っただけでは母集団形成にならない。SNSを使って人視してもらうなど、運用方法の検討が必要
SNSの活用
TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSを利用した母集団形成方法です。
SNSを活用する求職者は流行に敏感で、新しいテクノロジーを積極的に活用する傾向がありますので、このような層を獲得したいときには有効です。
SNS活用のメリット
- 無料で利用できる
- 求職者と直接つながることができる
- 定期的な情報提供を実施することで、応募意欲を高めることができる
- 自社の採用サイトなどのリンクを貼るなど、相互連携することができる
SNS活用のデメリット
- 定期配信など運用負担が大きい
- SNSからの直接応募を受けることが困難である
人材紹介会社・ヘッドハンター
人材紹介会社やヘッドハンターなどに求人内容を伝え、登録者の中から適任者を紹介してもらう母集団形成不法です。特に中途採用で有効です。
人材紹介会社・ヘッドハンターのメリット
- 成功報酬のため初期費用がかからずリスクも少ない
- スクリーニングにかかる人事業務の負担を軽減できる
- 少人数採用の場合、効率的に利用することができる
人材紹介会社・ヘッドハンターのデメリット
- 自分で探したり選んだりせず、紹介会社から紹介を受けた企業に応募しているため、モチベーションの低い人材が来る可能性がある
- 紹介されるのは登録者に絞られるため、母集団となる人数は少ない
リファラル採用
リファラル採用は、従業員やOBなどに仕事を探している知人を紹介してもらう母集団形成方法です。中途採用やアルバイト・パート採用などで有効です。
リファラル採用のメリット
- コストがかからない
- 内部事情に詳しい従業員からの紹介なので、採用に至る確率が高い
- 効率的なターゲット母集団形成ができる
リファラル採用のデメリット
- 「紹介してもいい」と思えるような魅力的な企業でない場合は紹介してもらうことができない
- 欠員補充など、任意のタイミングでの採用が難しい
合同説明会
合同説明会は、就職相談会などの多くの求職者が集まるイベントに出展する母集団形成方法です。昔からあるスタンダードな方法ですが、現在でも広く行われています。
合同説明会のメリット
- 短期間で多くの求職者に自社を知ってもらうことができる
- 求職者に対して直接的に自社の魅力を伝えることができる
- イベントに参加した求職者がターゲットとなるため、多くの人材と直接出会える
合同説明会のデメリット
- ブース作りなどの事前準備が必要である
- 合同説明会の間は拘束時間が発生し、人事担当者の負担が大きい
- 大手企業や有名企業などのブースに求職者を奪われる可能性がある
自社に最適な母集団形成を選択しよう
母集団形成の方法は様々ありますが、全てを実施する必要はありません。「求める人物像や近い人物はどのような行動を行うのか」をしっかりとシミュレーションを行い、接点をもてる方法を選択することが大切です。採用要件からペルソナを設計することは、母集団形成においても非常に有意義です。
「大規模候補者群仮説」という言葉があるように、たくさんの応募者を集めたからと言って優秀な応募者の割合が増えるわけではありません。採用したい人数から逆算して、どの程度の母集団を形成する必要があるのかを考えながら、採用予定人数や予算に合わせて複数の方法を選択する必要があります。